ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

電力自由化:深刻化する東京電力パワーグリッドによる新電力への電気使用量・発電電力量通知遅れ問題

昨年来、今年4月の電力小売完全自由化に向けた準備の中で、東京電力による託送業務の新システム開発や新電力への設置に必要なスマートメーター交換が間に合わないという問題が、都度取り上げられてきました。

itpro.nikkeibp.co.jp

小売完全自由化から3ヵ月が経った現在も問題は継続しており、東京電力から新電力に対する顧客の電気使用量データ通知が遅れているだけでなく、その内容自体にも誤りがある(電気料金の誤請求が発生する)というような事態も生じています、 

www.itmedia.co.jp

新たに設置が進められているスマートメーターでは、各メーターから決められた計量日のデータが送られてきますが、旧式のメーターのままになっている場所では検針員が測定する日によって、計量期間にズレが生じます。

この2つの異なるデータを同一に扱ってしまったため、検針タイミングの違いによる使用量の誤りが発生しています。

東京電力パワーグリッドは、今後の改善見込を同社のWebサイトで公表していますが、スマートメーターの交換が完了するのは9月以降の見込です。

更に言えば、東京電力パワーグリッドから新電力に提供されるのは、顧客に「売電」したデータ(電気使用量)だけでなく太陽光発電設備などからの「買電」のデータ(発電電力量)も含まれます。

このため、発電事業者の中には新電力からの電気料金の支払いが滞っている事例も生じているという深刻な状態です。

最大の電力消費地を抱えている東京電力管内での、このような一連のトラブルは、まだまだ尾を引いていきそうです。

ソーラーシェアリング:大豆の播種と発芽 - 匝瑳飯塚 Sola Share 1号機でついに農業が始まりました

4月から順調に運転を続けている自社ソーラーシェアリングサイト「匝瑳飯塚 Sola Share 1号機」で、先週大豆の播種を行いました。

発電所下部の農業は、Three little birds合同会社が担います。

 

4月に緑肥(ヘアリーベッチ)を播き6月に鍬込んでおいた畑で、下の写真のようにトラクタで大豆を播いていきます。

発電設備の高さがあるので、トラクタも余裕で動き回れます。

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トラクタの後ろには播種機が付いていて、次々と土を起こしながら種を播きつつ進んで行きます。

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そして、播種から1週間が経った発電所の様子が下の写真です。

畑をよく見てみると・・・

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無事に大豆が発芽しました!

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発電所の運転開始から3ヵ月、まずは自社第1号のソーラーシェアリングで無事に農業を始めることが出来ました。

固定価格買取制度:太陽光発電に対する見なし認定制度の運用 - モジュール変更の解禁の影響

6月中旬からFIT法の改正に伴う各経済産業局などでの説明会が行われていますが、特に最近問合せが増えているのが、モジュール変更の解禁です。

経済産業省の本省で行われた説明会の資料が、以下のページで公開されています)

 

なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度(改正FIT法に関する地方説明会)

 

説明会資料にある「②新たな未稼働案件の発生防止に向けた仕組み」の中で、平成28年8月1日以降に接続契約を締結する制度の見直し内容がまとめられています。

その中の、「設備の変更に伴い新しい認定を求め、買取価格を変更させる仕組みは新制度以降は適用しない。」という文言により、設備認定後~運転開始前までのモジュール変更に対するいわゆる「モジュール縛り」がなくなることが明らかになりました。

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(出所)資源エネルギー庁再生可能エネルギーの導入促進に係る制度改革について」

これによって、今までモジュールメーカーが持っていた価格交渉力が弱まることになり、各社の営業競争が再び激しくなる可能性があります。

連系工事期間の長期化に伴い、当初予定していたモジュールメーカーの経営状況の変化や、モデルの旧式化に対応できない、あるいは価格の高止まりといった問題が見受けられていましたが、今夏以降はその状況に大きな変化が起きそうです。

固定価格買取制度:接続の同意を示す書類のリスト公表 - 平成29年度末の設備認定取消に備えて

FIT法改正が決まる中で、資源エネルギー庁及び各電力会社(旧一般電気事業者)か「接続の同意」を示す書類の一覧を公表しました。

 

接続の同意を示す書類の名称について

 

従来、いわゆる「接続契約書」にはどういった書類が該当するのかについて、各電力会社で書類の名称が異なるなどしたため、混乱が生じていました。

今回、FIT法改正に伴い下記のような設備認定失効基準が定められたことに伴い、「一般送配電事業者等の接続の同意」とは何かを明確にするため、こういった情報が公表されています。(なっとく!再生可能エネルギーから抜粋)

  1.  原則、同法の施行時点(平成29年4月1日)で
  2.  平成28年7月1日~平成29年3月31日に認定を取得した場合は認定日の翌日から9ヶ月以内に
  3.  同法の施行時点で電源接続案件募集プロセスに参加している場合は当該プロセスの終了日の翌日から6ヶ月以内に一般送配電事業者等の接続の同意を得られていない場合、現行の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく認定が失効することになります。

これらは、調達価格等の決定に際して重要な書類となるため、各電力会社が示す書類について今一度の確認が必要です。

再エネ業界ニュース:サニックス 3度目の希望退職の結果を公表 連結社員数は半減へ

九州を中心に太陽光発電事業を急拡大し、九電ショック以降は大規模なリストラのニュースが続くサニックスですが、5月に実施した3度目の希望退職の結果が公表されました。

pps-net.org

当ブログでも都度取り上げてきましたが、サニックスが注目されるのは東証一部上場企業であり2001年には特定規模電気事業者(PPS)の登録をしている中で、FITの波に乗った太陽光発電事業の拡大、一転して九電ショック後は大きなリストラを伴う事業縮小と、その振れ幅が大きいことにあるでしょう。

2014年3月期には3,625人を数えた連結社員数は、今回を含む3度に亘る希望退職で1,800人程度まで半減すると見込まれています。

5月に発表した2016年3月期の連結決算では、当期純利益が46億円の赤字(前年同期は49億円の赤字)となっています。

techon.nikkeibp.co.jp

太陽光発電事業部門の売上高は対前年比55%にとどまり、2016年の第4四半期は営業利益がプラス圏に回復したものの、厳しい経営状態が続いています。

同社は自社ブランドでのモジュール製造や、施工した発電所の長期保証及びOMも請け負っており、続く人員削減でアフターサポートにどのような影響が出るのかも懸念材料です。

決算説明会資料では2017年3月期には経常利益の黒字化、2018年3月期には当期純利益の黒字化を目指すとしており、今後の経営立て直しがどのように進むのかが注目されます。

固定価格買取制度:再エネ系統連系に関する電力会社の電気事業法上の禁止行為 - 電力・ガス取引監視等委員会が平成27年度の電気事業監査の概要を公表

電気事業やガス事業の自由化に伴って、各社の業務チェックを担う電力・ガス取引監視等委員会が、平成27年度の電気事業監査の概要を公表しました。

www.emsc.meti.go.jp

 

 一般電気事業者及び卸電気事業者への監査の結果、合計10件の行政指導が行われ、そのうち4件が再生可能エネルギー発電設備等の接続契約や、新電力に関する事項となっています。

この4件の行政指導は、以下のような内容になっています。(指導先は非開示)

 

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(出所)電力・ガス取引監視等委員会 公表資料より

 

内訳は、接続検討の回答期間に関する事項が1件、工事負担金に関する事項が3件という結果になっています。

工事負担金については、FIT開始当初から算定内容の不透明性が事業者にとって不利なものとなってきましたが、昨年11月に工事負担金のガイドラインが見直され、基幹系統部分は電力会社による「一般負担」となり、それ以外の部分が発電事業者による「特定負担」となりました。

今回の指導がガイドライン以前の事案を扱ったものかどうかは明らかではありませんが、工事負担金の算定や精算について電力会社の対応が是正されているかどうか、ガイドラインの見直しによる再算定が適切に行われているかどうかは、引き続きチェックが必要です。

世界情勢:イギリスのEU離脱問題の影響 - 連合王国は崩壊するか?

昨日は一日、イギリスのEU離脱賛否を問う国民投票のニュースから目が離せませんでした。

EU離脱という結果が出たことでマーケットも大荒れとなり、週明け以降も世界的な影響が広がっていきそうです。

そんな中で気になることは色々とありますが、BBCがまとめた国民投票の地域別結果分布を見ると離脱・残留に割れたイギリスの内情が見えてきます。

 

www.bbc.com

 

イギリス(United Kingdom)は、連合王国との名の通り複数の国が集まって構成されています。今回の国民投票では、そのうちイングランドウェールズ離脱派多数、スコットランド北アイルランド残留は多数という結果となりました。

スコットランドは2014年に独立を問う住民投票を実施しており、北アイルランドは1919年のアイルランド独立戦争1920年のイギリス政府による南北アイルランド分割、そして北アイルランド紛争などを経て現在も独立の火種を抱えています。

スコットランド北アイルランドも、今回の国民投票の結果を受けて連合王国からの離脱とEU残留を求める動きが見られ始めました。

 

news.yahoo.co.jp

 

今回のEU離脱という判断は、間違いなく世界史に残る大きな事件ですし、ここから生じてくる政治・経済的な影響は全世界に波及していくでしょう。

イギリスはコモンウェルスの盟主でもあり、その中でニュージーランドの国旗変更国民投票といった動きも直近ではありました。

かつて世界を統べた帝国の変容は、新しい世界秩序へと移行していく一つの時代の流れであるのか、この影響の波及先を見極めていきたいと思います。

熊本地震:熊本地震への支援活動 「Green Power for くまもと」 現地支援レポート

4月14日及び16日に発生した「熊本地震」への支援プロジェクトとして、エコロジーオンラインを中心とした「Green Power for くまもと」がスタートしました。

このプロジェクトでは、ソーラーパワートラックの派遣や、ナノ発電所やミニソーラー、ソーラーランタンといった防災に役立つ自然エネルギーアイテムの寄付を行うほか、今回は八代亜紀さんのご協力を得たミニライブも現地で開催しました。

 

ソーラーパワートラックについて

SolarPowerTruck - エコロジーオンライン : Ecology Online

 

千葉エコ・エネルギーとしても今回のプロジェクトに賛同し、40Wのソーラーパネルと75,000mAhの容量を持つ携帯型蓄電池をあわせた「ナノ発電所」3セットを寄贈して、ソーラーパワートラックに積載し熊本へ運んでいただきました。

 

現地レポート

【Green Power for くまもと】フォトレポート 2016/6/14~2016/6/24 - エコロジーオンライン : Ecology Online

 

今回のプロジェクトは6月14日にソーラーパワートラックが秋田を出発し、全国各地でプロジェクトに賛同した仲間達からの支援物資を積載するという行程からスタート。

16日から九州に入って大分県内を経由し、18日・19日には熊本県内各所で支援物資の寄贈とソーラーパワートラックによるミニライブを行い、帰りは現地の野菜や加工品などを積載して戻るというルートを取りました。

ライブの様子は下記のように報じられています。

mainichi.jp

kumanichi.com

地震の発生から2ヵ月が経過しましたが、既に関東では報道を目にする機会が少なくなる一方、現地はまだまだ倒壊家屋の撤去も終わっておらず、みなし仮設を含む仮設住宅への入居も遅れており、6,000人近くが現在も避難所生活を送っています。

kumanichi.com

これからも引き続き、出来る限りの支援を行っていきたいと思います。

再エネ業界ニュース:つくば市が「再生可能エネルギー発電設備 設置に関する要望書」を経産省に提出 再エネ発電設備の設置基準を定めるように要望

以前、筑波山の山腹における太陽光発電所の建設問題と、それに対するつくば市再生可能エネルギー発電設備に対する規制条例案を取り上げました。

そのつくば市が、経済産業省に対して再生可能エネルギー発電設備 設置に関する要望書」を市長名で提出したと発表しました。

www.city.tsukuba.ibaraki.jp

つくば市の要望書に掲げられているのは、下記の2点です。

  1. 再生可能エネルギー発電設備 の適正な設置に関する基準等を定めた法令を制定すること
  2. 再生可能エネルギー認可事業にかかる情報を地方公共団体 と共有し,国民の安全・安心に資すること

要望書の中でつくば市は、全国各地で再生可能エネルギー発電を巡る問題が起きている現状に対して、

「再生可能エネル ギーの発電事業を推進する趣旨の法律はあるものの,その発電設備の適正な設置を監視する法令の規定がないこと,さらに,再生可能エネルギー認可事業にかかる情報が地元自治体に提供されないことが,根底にある」

としています。

各地で地方自治体による再生可能エネルギーの設置規制条例が設けられてはいますが、強制力のあるもの、開発を直接差し止めるものは制定できないのが現状です。

山梨県や長野県で大規模なメガソーラーに対する環境アセスメントが実施されてはいるものの、対象となるものは一部に限られます。

今回のFIT法改正に伴う計画認定制度への移行とあわせて、より幅広い発電設備を対象とした規制を考えるべきでしょう。

 

 【過去の関連記事】

cee.hatenablog.jp

 

再エネ業界ニュース:太陽光発電の関連事業者の倒産が増加 2016年上半期は前年を上回るペースか

帝国データバンクの太陽光関連業者の倒産動向調査から、2016年1月~5月期は前年同期を上回るペースで業者の倒産が相次いでいるとのこと。

思い返せば、全ての始まりは2014年秋の「九電ショック」 で、下記の記事中のグラフでも2015年に倒産業者数が急増しています。

www.itmedia.co.jp

あの時は、権利売買だけでなく工事を準備していた発電事業者、施工業者も各地で大きな痛手を被っていました。突然の接続協議停滞、連系承諾以前の案件は全てストップし指定ルールへ移行するなど劇的な市場環境の変化が起きました。

2015年以降は、指定ルールの導入以外にも調達価格のプレミアム期間終了、報告徴収による未稼働案件の取消、180日/270日ルールの導入、接続検討の長期化や工事負担金の高騰など太陽光発電マーケットでは様々な出来事が起きています。

今後、先月成立したFIT法の一部改正案を受けて、未稼働案件のうち滞留しているものが一掃されることになり、業界としては来年にかけて更に事業者の淘汰が進むことになるでしょう。

特に、これまでのような発電事業者やデベロッパー、施工業者の倒産に加えて、モジュールメーカーなどサプライヤーサイドも生き残る事業者の選別が進むと思われます。