ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

新年のご挨拶 -ソーラーシェアリング本格普及の1年に向けて-

新年あけましておめでとうございます

 昨年はソーラーシェアリングと小水力発電に明け暮れた年のように思い返していますが、私が身を置いている自然エネルギー界隈では改正FIT法成立を始めとして固定価格買取制度に纏わる大きな動きもありました。

年が明けて、今年は4月から改正FIT法が施行され設備認定も新制度へと本格的に移行していきます。

また、気候変動に対応する国際的な枠組みとしてパリ協定が発効し、その中に自然エネルギー省エネルギーへの取り組みが国内的にも大きく取り入れられていくことでしょう。

目下、私自身としては自社で進めている様々なソーラーシェアリング事業を実現させ、更に数十MW以上の事業化に向けたコンサルティングや相談を引き受ける中で、今後更に自然エネルギーと農業振興という新たな一次産業の軸を生み出していく1年にしたいと考えています。

 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

平成29年 正月

千葉エコ・エネルギー株式会社

代表取締役 馬上 丈司

再エネ業界ニュース:四国電力管内 来年GWにも再エネ発電設備の出力制御(出力抑制)の可能性 - 優先給電ルールに基づく出力制御

今年8月に伊方原発3号機が再稼働した四国電力で、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー発電設備が急増していることを受け、来年5月のゴールデンウィーク頃にも出力制御(出力抑制)を行う可能性が示唆されました。

四国エリアにおける再生可能エネルギーの導入量増加に伴う発電事業者への優先給電ルールのお知らせについて(四国電力株式会社)

四国電力管内における太陽光発電及び風力発電の導入量は、平成28年10月末時点で215万kWに達したとしています。

更に、接続契約済みの太陽光発電設備が73万kW、風力発電設備が19万kW控えていると公表しています。

GWに出力制御が必要になる理由

四国電力のリリース資料によると、平成29年度のGWには1日のうち太陽光発電の出力が最大で需要の85%に達する見通しとしています。

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(出所)四国電力プレスリリース資料

GWには、長期の連休ということで事業所や産業部門の電力需要が少なくなる一方、夏至に向かって日照時間が長くなり晴れの日も増えることで、太陽光発電設備の発電量は1年の間でも最大になる地域が多くなります。

結果として上記の表のような発電量カーブを描くことになり、電力供給量の調整が必要となってくることから、再生可能エネルギー発電設備の出力制御が一番行われやすい時期となっています。

今後の見通し

電力広域的運営推進機関の「送配電等業務指針」で優先給電ルールが定められており、8段階の出力抑制ステップのうちバイオマス発電が4番目と5番目(地域資源バイオマス電源は抑制順位が低い)で、自然変動電源と定義される太陽光発電バイオマス発電は6番目の抑制順位となっています。

今回のプレスリリースでは、火力電源の抑制、揚水発電所の揚水運転、地域間連系線の活用等により需給バランスの維持に努めるとしていますが、その中で再生可能エネルギー発電設備の出力制御がどうなるかは具体的に触れられてはいません。

九州電力種子島で全国初の再生可能エネルギー発電設備に対する出力制御を行ってから、各地でも同様の措置が行われる可能性が言われてきましたが、太陽光発電を中心に設備の導入が進む中でその現実味が増してきたと言えます。

今後、各電力会社管内で同様の予告が行われていくことになるのではと考えています。

再エネ業界ニュース:東京都の官民連携再生可能エネルギーファンドが新規投融資 - 千葉・茨城の3案件

東京都の官民連携再生可能エネルギーファンドが、千葉県と茨城県において新たに3つのメガソーラー案件に対する投融資を行うと発表しました。

対象設備の規模は、合計で約34MWになります。

www.metro.tokyo.jp

千葉県の案件は、県の公募案件であった成田スカイアクセス線沿いの空き地を利用した全長10kmに亘るメガソーラーで、発電規模も12.8MWという大規模なものになっています。

官民連携ファンドの目指すもの

東京都のファンドは東京電力東北電力管内を対象として、これまで太陽光発電風力発電バイオマス発電と多様な再生可能エネルギーに対して投資を行ってきています。

東京都自身の出資額は合計12億円という規模ですが、それを呼び水として100億円規模のファンドが組成されています。

都内で消費される電力の80%以上を都外からの供給に頼る東京都にとって、都外の再生可能エネルギー発電設備に対する投資を進めることにより、トータルでの再生可能エネルギー供給量を高めるという施策です。

再生可能エネルギーは地域の自然資源からエネルギーを生み出す「地域エネルギー」としての性質を持ちますが、一方で地理的条件から都道府県・市町村毎の有利不利があることも事実であり、各自治体が域内だけでなく域外との連携による再生可能エネルギー普及を図るためのモデルとして、東京都の官民連携ファンドは意義のあるものと言えます。

ソーラーシェアリング:匝瑳2号機の建設が進んでいます - 匝瑳市飯塚開畑地区ソーラシェアリング

今年3月末に千葉県匝瑳市飯塚開畑地区で自社1号機のソーラーシェアリングが運転を開始しましたが、11月から同地区で2号機の建設が始まっています。

下記が14日時点の現地写真になりますが、現在は架台の組立が終わりモジュールの取り付け作業が進んでいます。

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ソーラーシェアリングとしての遮光率は33%を下回る設計となっており、1号機と違って今回は固定式のモジュール設置です。

計画通りに工事が進めば年内に完工となり、来年から作付開始の予定です。

再エネ業界ニュース:伊那市が再生可能エネルギー発電設備の設置に関するガイドライン見直し

固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電を中心に再生可能エネルギー発電設備が増える中、各地で生じる発電事業者・開発事業者と地元住民などとのトラブルを受けて、再生可能エネルギー発電設備の設置に際して独自のガイドラインを設ける自治体が増えています。

しかし、ガイドラインでは罰則等を伴わないことなどから、トラブルの抑止が十分ではないことがあるのも現実です。

長野県伊那市は昨年4月に「伊那市再生可能エネルギー発電設備の設置などに関するガイドライン」を公表しましたが、今月になってその見直しに着手したと報じられています。

 

伊那市 再生可能エネ発電ガイドライン見直しへ:長野日報のニュースサイト

 

ガイドラインの見直しは何故必要となったのか?

この報道では、伊那市ガイドラインの見直しに着手した理由として

今回の見直しは、地元住民に十分な説明が行われない状況での設備設置によるトラブルが発生したことや、事業内容や地元説明会の実施状況について市が確認する仕組みが不明確といった指摘を受けて検討することになった。

としています。

現行のガイドラインでは、市が指定した様式に従って計画書等を市長宛に提出すること並びに地元住民に対する説明会を開くこととしています。

見直し案では、事業計画段階で市との協議を事業者に求め、市側では許認可等の確認を行うほか、提出された計画書に対して市長による意見書の発出も含まれているようです。

法令許認可については経済産業省への設備認定申請時にチェックリストの提出が必要とされるようになりましたが、地元調整については対象範囲を含めて事業者の裁量によるところが大きいのが実態で

再生可能エネルギー発電事業と地元合意形成

長野県内では下記のように、メガソーラー事業計画において市町村の環境保全条例に基づく地元同意が得られなかったケースも生じています。

2区が不同意 富士見町のメガソーラー計画:長野日報のニュースサイト

特に特別高圧案件のメガソーラーの場合、開発範囲が数十haに及び自然環境や景観への影響が大きいことから、開発自体の是非を問われることも多いのが実態です。

固定価格買取制度によって、再生可能エネルギー発電が投資収益事業として取り組まれることが多くなり、結果として地域の自然資源を活用したエネルギー事業という視点が欠けてしまっていることも問題の根底にあるように思います。

長野県では、大規模なメガソーラーの増加によって環境アセスメント条例の見直しも行われており、伊那市に限らず今後のわが国における再生可能エネルギー発電事業と地域の問題を考える上で重要な先行事例となっていくでしょう。

再エネ業界ニュース:太陽光パネルの出荷量は回復している? - 太陽電池の出荷統計の変化

太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)バブルは弾けた!という話も増えてきた今日この頃ですが、6月頃には2015年度の太陽光パネル総出荷量が前年比19%減と、市場の縮小傾向が報じられていました。

国内メーカー各社も、住宅用の強化や海外進出など新たな活路を!と国内産業用からの方針転換をどう図るかが話題だったと記憶していますが、そこは今も変わらない状況でしょう。

www.itmedia.co.jp

増加に転じた出荷量

一方で、今月に入って2016年度第2四半期までの太陽光パネル出荷量の数値が出てくると、発電事業用の大幅な伸びが見えてきました。

対前年同期比で110%という増加量を見せています。

www.itmedia.co.jp

未稼働案件はどこまで運転開始に辿り着くか?

資源エネルギー庁が公表しているFITの設備認定情報では、今年7月末時点で非住宅用太陽光発電だけで5,000万kWの未稼働認定分があります。

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【出所】資源エネルギー庁 再エネ設備認定状況

来年3月末の新認定制度への移行を控え、3,000万kW程度の設備認定が取り消されることになるのではと噂されていますが、それでも2,000万kWが未稼働分として残るほか、滞留案件が一掃されることによって系統状況が改善し新規案件の開拓が再び始まることも期待されます。

国内でコンスタントに導入できる太陽光発電設備の容量は、年間700~800万kWと言われていますので、今後3~4年程度は現在のペースに近い新規導入が進むと予想されます。

ソーラーシェアリングのような新たな発電事業が普及しているほか、モジュール1枚あたりの発電量向上も目覚ましいものがあります。

メーカーの新規参入と淘汰を繰り返しながら、まだしばらくは太陽光パネル市場の活況が続くのではないでしょうか。

太陽光発電事業:太陽光発電設備に対する使用前自己確認制度の導入 - 500kW以上の発電設備が対象に

11月30日付で、経済産業省から『「電気事業法施行規則」、「使用前自主検査及び使用前自己確認の方法の解釈」及び「発電用火力設備の技術基準の解釈」の一部改正について』とする通知が出されました。

これは、「電気保安規制のスマート化」の中の一つの取組として進められてきたもので、各電気工作物についてリスクの見直しを行った結果、新たに使用前自己確認制度などが導入されることになりました。

www.meti.go.jp

500kW以上の太陽光発電設備に使用前自己確認制度が導入

今回の措置により、太陽電池発電設備に対する使用前自己確認制度』が導入されることになり、これまで2,000kW以上の太陽光発電設備に対して適用されていた『使用前自主検査』に準じる確認手続きが、500kW以上の発電設備に設けられることになっています。

この規則等は平成28年11月30日に公布され、即日施行とされているため、同日以降に使用が開始される500kW以上2,000kW未満の太陽光発電設備は、新たに使用前自己確認制度に基づいた対応が求められることになります。

年度末にかけて太陽光発電所の竣工が続く中で、現場では多少の混乱が起きるかも知れません。

ソーラーシェアリング:千葉エコの設備で大豆が(少しだけ)採れました - 千葉の在来種「コイトザイライ」

今年は、9月・10月の短日照や度重なる台風などに悩まされる一年でしたが、千葉エコのソーラーシェアリング匝瑳飯塚 Sola Share 1号機では鳥獣被害により大豆の新芽が大規模な食害に見舞われました。

そんな自然災害や食害を乗り越えて、無事に実った大豆がこれです!

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この青大豆は、千葉県の在来種「コイトザイライ」になります。

鳩による新芽の食害をくぐり抜け、ソーラーシェアリングの片隅で一部の株が無事に育ちました。

来年こそは、食害にも負けずに一面の大豆畑を育て上げたいと思います。

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同じくソーラーシェアリング設備下で実った稲穂と共に

ソーラーシェアリング:農林水産省の営農継続型発電特設ページ - ソーラーシェアリングの制度情報まとめ

農林水産省のWebサイトリニューアルに合わせて、ソーラーシェアリングを含む営農継続型発電設備の特設ページが開設されました。

農林水産省のサイト内で「営農型発電設備」と「営農継続型発電設備」の表記揺れが見られます)

 

営農型発電設備の設置:農林水産省

 

これまでは、ソーラーシェアリングが認められることとなった通知「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(24農振第2657号)に関するページはありましたが、今回のリニューアルでQ&Aや統計情報なども併せて公表されるようになっています。

特に、ソーラーシェアリングの許可件数をまとめた統計情報では年度毎の数値が公表されています。

  • 平成25年度:97件
  • 平成26年度:304件(累計401件)
  • 平成27年度:374件(累計775件)

こういった統計情報について、今後は都道府県別や出力別・規模別の件数など、より細かい情報の公開がされるように働きかけていきたいと思います。

再エネ業界ニュース:増加するフロート式メガソーラーとその弊害 - 大阪狭山市の騒動

再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)導入後、市街地から人里離れた山奥まで全国のありとあらゆる場所に太陽光発電所が建設されてきましたが、特に西日本を中心に増えているのが水上に設置するフロート式の太陽光発電設備です。

地上設置型とは異なり、水上であれば場所の利用という点で他の用途と競合しないことから、ここ2年ほどでダム湖やため池・調整地にメガソーラー規模での導入が少しずつ進んできました。

そんなフロート式メガソーラーですが、ここ1週間ほどメディアで取り上げられているのが大阪狭山市の狭山池に設置された発電所です。

www.mbs.jp

大阪狭山市が進める水素エネルギー事業

報道を遡ってみると、この発電所大阪狭山市が100%を出資する「メルシー for SAYAMA株式会社」が進める、ため池の水を電気分解して水素を製造しエネルギー事業を展開するというプロジェクトと関連していることが分かります。

www.sankei.com

このメルシー for SAYAMA株式会社」によるプレスリリースが、下記です。

再生可能エネルギー等から製造した水素を「グリーン水素」として、「世界初のグリーン水素シティ」を実現することを目的とするとしています。

prtimes.jp

フロート式メガソーラーの弊害?

ため池で太陽光発電を行い、そのエネルギーで水を電気分解し、水素を製造して地域のエネルギー供給を図るというこのプロジェクトですが、上の報道ではフロート式メガソーラーからの「熱」と「反射光」が問題視されています。

太陽パネルによる反射光は、住宅地に隣接するメガソーラーで訴訟問題に発展している例もあるように、強力な光の反射によって眩しさや建物の室温上昇などを招くことが懸念されています。

特に、フロート式メガソーラーの場合は水上に設置されるという特性から、太陽光パネルが周辺の土地よりも低い場所に位置することになり、近隣にある建物へ反射光が差し込みやすくなると考えられます。

太陽光パネルには、住宅用などで近隣への太陽光反射を考慮した防眩仕様の製品があり、そういったものを使用すれば反射光の影響を抑えることが可能ですが、今回のフロート式メガソーラーではそういった製品が採用されていない可能性があります。

反射光の問題は特に夏場になると顕在化するため、今後この問題がどのように推移していくのか注目していきたいと思います。