ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

ソーラーシェアリング:株式会社エコ・マイファームを設立 - 自然エネルギー×農業を推進するJV

この度、千葉エコ・エネルギー株式会社株式会社マイファームと共にJV「株式会社エコ・マイファーム」を設立いたしましたので、ご報告いたします。

JV設立のターゲット

今回のJV設立は、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電が急速な広まりを見せる中で、ソーラーシェアリングが目指す自然エネルギー×農業のコラボレーションによる農業振興という特長により焦点を当てています。

自然エネルギーによる地域振興を目指す千葉エコ・エネルギーと、耕作放棄地の解消を目指すマイファームの知見を組み合わせることで、安定した営農並びに自然エネルギー発電事業の実現をサポートしていきます。

詳細は下記のリリースをご覧ください。

www.chiba-eco.co.jp

今回のJV設立で何が変わるか?

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の目的は、農地の上に自然エネルギー発電設備を設置し、その収益で農業者の所得向上を図り安定した営農の実現を支えていくことにあります。

 

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わが国の農業が抱える問題は農家所得の低迷、後継者の不足、専業農家の減少、農地集約の地帯、新規参入者の農地確保の難しさなど多岐に亘っていますが、都市部を除く多くの市町村では基幹産業が農業であり、農業の衰退は直ちに地域の衰退に繋がります。

一方で、ソーラーシェアリングが農業者の所得向上を図ると言っても、太陽光発電事業に取り組むためには専門的な知識が求められますし、耕作放棄地などを利用して発電事業に取り組みたいとなっても、長期に亘る安定した営農体制を確立することもまた相当の知見が必要となります。

今回設立したエコ・マイファームでは、自然エネルギーと農業の両方の視点で豊富な知見と経験を有する両社がジョイントすることにより、今までわが国になかった事業化支援サービスを提供すると共に、ソーラーシェアリングの更なる普及に大きな役割を果たしていきます。

再エネ業界ニュース:再生可能エネルギー産業の雇用者が更に増加 - 全世界で1000万人に迫る

国内の太陽光発電業界では企業倒産が相次いでいることが報じられていますが、世界的には再生可能エネルギー産業の雇用者が増加傾向にあるようです。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が毎年取りまとめているレポートの中で、2016年には全世界で980万人以上が再生可能エネルギー産業で雇用されていると報告されました。

なお、この数値には大規模な水力発電事業による雇用*1が含まれており、それらを除いた場合には830万人になるとのことです。

 

Renewable Energy Employs 9.8 million People Worldwide, New IRENA Report Finds

 

世界的な雇用者数の増加傾向

IRENAが調査を開始した2012年時点では700万人以上だった雇用者数は、この4年間で40%増加したことになり、特に太陽光発電風力発電産業では倍増しているとのこと。

エネルギー種別では、これまでバイオマス産業が最も多くの雇用者を抱えていましたが、2016年には太陽光発電が抜き去って雇用者数がトップになっています。

日本では太陽光発電産業が縮小

同レポートによると日本国内の再生可能エネルギー産業の雇用者は31.3万人となっており、2015年をピークに太陽光発電のブームが過ぎ去り、2016年には65社が倒産したことにも触れられています。

この視点から見ると、2014年にわが国の太陽光発電産業の雇用者数はピークアウトしており、2016年には同年比20%の雇用減少が起きているとしていますが、その点は国内でも報じられている企業倒産のニュースとリンクしていると言えるでしょう。

今後の見通しは?

IRENAは、世界的には2030年に向けて2,400万人が再生可能エネルギー産業に従事することになるとしており、引き続き各国で再生可能エネルギーの普及が進むと同時に産業としても成長していくと見込んでいます。

一方で、わが国では太陽光バブルによる急激な雇用増加が落ち着いてくる中で、FITを前提とした国内産業としての再生可能エネルギー産業に対する従事者が急増していくのかどうかは未知数です。

どうしても建設業や電気工事業など従来の産業に付随する形での成長になってきたため、それを専業とするような産業になり得るかどうかが、FIT5年目を迎え今後の再生可能エネルギーの定着を考えていく中で重要なトピックになってくるでしょう。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)のように農業と密接な関係を有する設備の増加なども、鍵となってくるかも知れません。

*1:大型のダム開発を伴う小水力発電は厳密には再生可能エネルギーと定義されない

ソーラーシェアリング:南相馬市で11.3MWの大規模ソーラーシェアリング計画 - 作物はミョウガ

福島県南相馬市小高区で、11.3MWの大規模ソーラーシェアリング事業が進められていると報じられているのを目にしました。

まだ建設途中のようですが、完成すれば営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備としては国内トップ10に入る規模になります。

www.minyu-net.com

18.5haの敷地に出力11.3MWということですが、それだと72セルモジュールで計算しても遮光率は30%台にとどまるため、写真の設備と合致しない&ミョウガを選ぶ必要がないことから、おそらくDC容量はさらに大きいのではと推測されます。

また、ミョウガの収量は10aあたり500kgが一つの目安になりますが、18.5haだと年間90t程度の生産量になります。

農水省の統計によると、都道府県別のミョウガ生産量は高知県を筆頭にした上位4県のみが年間100t以上の収穫量なので、今回の事業が軌道に乗ると一気に福島県ミョウガ収穫量全国5位に躍り出る規模です。

果たしてこれだけの規模のミョウガを露地物として安定的に生産・販売出来るのかどうかが、非常に気になるところではあります。

補足情報

農林水産省の『地域特産野菜生産状況調査』によると、平成26年度の調査で福島県の花みょうが作付面積は4haにとどまり、今回の18.5haという面積は群馬県での全作付面積に相当します。なお、同年度の群馬県の花みょうが収穫量は92tで出荷量は89tです。

風力発電:JR東日本の風力発電事業計画に対する環境大臣意見 - 山間の集落への影響懸念

JR東日本の子会社が福島県いわき市で計画している風力発電事業に対して、計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見書が経済産業大臣宛に提出されました。

www.env.go.jp

今回の事業計画地はいわき市三和町とのことですが、計画地の周辺は山間部に棚田や集落が広がり、「新田の大山桜」と呼ばれる樹齢400年以上のヤマザクラを中心に桜が群生しているエリアもあります。

中山間地の風力発電事業の場合、生態系への影響だけでなく近隣住民の住環境に与える影響(騒音、影、工事中の車両通行など)があり、今回の場合には自然景観に対する影響も大きくなることが懸念されます。

そういった環境への事業が与える影響に対する懸念を含めた形で、環境大臣意見が提出されており、中山間地の景観保全も含めて今後JR東日本がどのような環境配慮対応を図るのか注目していきます。

農業:千葉県香取市にある和郷園を視察 - 『農業生産者の自律』

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を起点として農業への取り組みを深めていく中で、ご縁があって千葉県最大の農事組合法人である和郷園を訪問しました。

千葉県香取市に所在し、農作物の生産・加工・出荷に加えてバイオマス資源リサイクルなどにも取り組まれており、今回は視察という形で受け入れていただきました。

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最初に和郷園の木内代表と面会し、和郷園の始まりから今に至るまでの事業における理念や、現在のわが国の農業に対する考え方などを伺いました。

今回は、ソーラーシェアリング上総鶴舞の高澤さんとご一緒に伺いましたが、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の話よりも先の、地域における農業・千葉における農業を今後どのように進めるべきかについてのご意見もいただきました。

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会談後は、加工・出荷場の視察のほか、食品加工時の残渣を利用したバイオマスリサイクルセンターや、農園リゾートTHE FARMなど各施設を視察し、農業を中心とした一体的な取り組みの一部を知ることができました。(下記写真はバイオマス発電プラント)

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下記は農園リゾートTHE FARMのグランピングエリアの写真ですが、雑木林だった谷間の地形を上手く活かし、素晴らしいリゾートエリアとして開発がされています。

写真中央右手には棚田があるほか、その下部の調整地になっている場所ではカヌー教室も開かれるということです。

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この他にもTHE FARM CAFEや体験農園施設、温泉施設等が一体的に整備されており、『農業リゾート』としてのコンセプトを持ったエリアとして目覚ましいものがあるように感じました。

現在、全国で自然エネルギーを活用した農業振興策を展開していますが、その中で単なる六次産業化にとどまらない取り組みを図ろうとする中で、今回の視察は非常に学ぶところの多いものだったと思います。

ソーラーシェアリング:秋田県南秋田郡井川町で水田ソーラーシェアリングが完成 - 北東北初の事例

一昨年から秋田県にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の新たな展開を探るべく動いていましたが、去る5月8日ついに第1号の水田ソーラーシェアリング設備が完成しました!

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今回設置したのは秋田県南秋田郡井川町で、地場の太陽光パネルメーカーであるアイセスとの共同開発事業となります。

ソーラーシェアリング専用スリムタイプモジュールアルミ製架台を開発し、現地での水稲耕作に使用される農業用機械の規格にあわせた支柱間隔や梁の設計となっています。

秋田県内では水田でのソーラーシェアリングとして第1号の事例となり、先週19日には『あきたこまち』の田植えを報道陣にも公開する形で行いました。

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この田植えには秋田県内の全てのテレビ局のほか、新聞各社も取材に来たことで様々なメディアで取り上げられています。

私もNHK秋田放送局ほか各局のインタビューを受け、同日夕方には各所で放送されたようです。

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下記が、現在Web掲載されている記事の一部になります。

www.kahoku.co.jp

www.sakigake.jp

this.kiji.is

井川町の設備が完成したことで、これまで進めてきたソーラーシェアリング用の資材並びに事業スキームが一つのモデルとして固まったため、これから秋田のみならず全国的な事業展開を図ることができるようになりました。

また、水稲への遮光による影響や、積雪地における発電量の野立て設備との比較などを行い、農業並びに発電事業としての実証も重ねていく計画です。

講演情報:太陽光発電検査協会の技術部会にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の技術講演

先週は長野・名古屋・京都にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の講演をさせていただき、大忙しの1週間でした。

その中で、5月18日には京都にあるけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)にて開催された、太陽光発電検査協会の技術部会にお招きいただき、営農型太陽光発電の技術講演をさせていただきました。

講演の題目は『長期安定稼働を目指した営農型太陽光発電設備の導入』です。

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普段の講演では、営農型太陽光発電の制度や事例紹介を中心にお話することが多いのですが、今回は技術部会での講演ということで営農型太陽光発電の技術的な部分にもフォーカスしながらのお話です。

特に、匝瑳の事例や先日完成した井川町の水田ソーラーシェアリングを例に挙げ、スリムタイプモジュールという点は踏襲しながらも、改正FIT法対応・改正JIS対応を目指した経済性を備えたアルミ・鋼管架台による設計や基礎構造、新型モジュールの特長などの説明に力を入れました。

また、野立てとのO&Mの違いについても言及し、営農型太陽光発電の持つポテンシャルと社会的な意義から今後のポストFIT下においても、大きな普及が図れる点なども強調させていただきました、

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同協会とは3年以上の付き合いですが、太陽光発電のO&Mに関わる組織としては全国最大規模にまで成長しているということで、今後も協力してPVマーケットの成熟に向けた取組を進めて行ければと思います。

ソーラーシェアリング:文部科学省の『産学連携活動の取組事例』に掲載されました - 匝瑳ソーラーシェアリングプロジェクト

匝瑳市飯塚地区で進めているソーラーシェアリングプロジェクトが、文部科学省の『産学連携活動の取組事例』として掲載されました!

千葉大学発のベンチャーである千葉エコ・エネルギーと、千葉大学との産学連携プロジェクトという位置づけになります。

 

平成27年度 大学等における産学連携等実施状況について:文部科学省

 

上記ページに掲載されている『平成27年度における産学官連携活動の主な取組事例(1/5)』のp.24に紹介されており、『永続地帯指標による地域資源評価とコミュニティ研究の成果を生かした自然エネルギーによる地域農業再生モデルの実践』として取り上げられています。

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元々、エネルギー政策の研究を長年進めてきた私自身の興味関心から出発し、エネルギーと食料という社会基盤となる2つの資源をどのように安定確保していくかが一つのテーマとなっていましたが、ソーラーシェアリングという形でそれが実現しつつあります。

この視点ではソーラーシェアリングに限らず、地域の農業者と連携した小水力発電バイオマス利用も進めてきており、今年以降はそちらの成果も出せるのではと思います。

また、自然エネルギーと農業という視点からは千葉大学以外からも共同研究の打診を受けており、アカデミックな活動もより一層広げていきたいと考えていますので、今後の展開にご期待ください!

再エネ業界ニュース:岩手県軽米町で進む80MWのメガソーラー建設 - 農山漁村再生可能エネルギー法の活用事例

岩手県軽米町で、農山漁村再生可能エネルギー法を活用した大規模な再生可能エネルギー発電開発が進められていますが、その中でも最大となるレノバのメガソーラー建設が今年3月から着工しています。

techon.nikkeibp.co.jp

軽米町全体では200MWを超える発電所の建設が進んでおり、メガソーラーと鶏糞バイオマス発電所が計画されています。

総事業費はおそらく600~700億円に達すると見込まれ、町予算の10年分程度に相当する大規模事業であることから、上記の記事中でも町長が地元経済への波及効果を期待しています。

本事業は農山漁村再生可能エネルギー法を活用していることから、地域の農林漁業等に対する再生可能エネルギー事業からの収益還元が求められますが、これだけの事業規模に対してどれだけの経済的な恩恵が地域にもたらされ、その振興に寄与するかというのは社会的にも大きな関心事です。

地域に根差した自然エネルギー事業が、地方の抱える様々な問題を解消することが出来るのかどうか、この取組には引き続き注目していきます。

再エネ業界ニュース:ソーラーワールド社が破産手続きへ - ドイツの老舗太陽光パネルメーカー破綻の衝撃

ドイツの老舗太陽光パネルメーカーであるソーラーワールド(Solar World)社破産手続きに入ったと各所で報じられています。

ドイツといえば、太陽光パネルメーカーとして世界トップを誇ったQセルズが、破綻して韓国のハンファに買収されていますが、再び著名メーカーの破綻という自体が生じました。

www.nikkei.com

www.foxnews.com

ソーラーワールドもいずれかの企業に買収される方向になるのではと推測されますが、かつて欧州トップメーカーであったノルウェーのRECソーラーも中国資本に買収されており、太陽光パネルメーカーがアジアへとシフトしていく動きが見られます。

ドイツ国内生産にこだわったソーラーワールドの破綻は、業界に大きな衝撃を与えると共に、太陽光発電市場が新たなフェーズに入ったことを示すものなのでは、と考えています。