講演・メディア:講演ラッシュの1週間を終えて - 全国で高まるソーラーシェアリング熱とFIT制度改正の波紋
10/21からの1週間、怒濤の講演ラッシュをこなしてきました。
という4連続セミナーで、合計300人以上の方にソーラーシェアリングやSDGs、そして昨今のFIT制度改正を巡る動きなどのお話をさせていただいた1週間です。
ソーラーシェアリングへの注目は更に高まる
今年に入ってソーラーシェアリングへの注目が日々高まるのを感じており、各地の施工会社や市民団体、業界団体主催の個別勉強会にお声がけいただくほか、10/25には神奈川県庁主催のスマートエネルギーセミナーで講演の機会をいただきました。
このセミナーは、昨年に引き続き神奈川県庁がソーラーシェアリング普及のために開催しているものですが、今回は私の方から農林水産省再生可能エネルギー室の鎌田室長にもお声がけして登壇いただき、トークセッションを展開しました。
その企画の効果があってか定員80名の会場は満席となり、質疑応答も当初の予定を大幅に超過しての進行となるなど、関東ではソーラーシェアリングの導入が遅れつつある神奈川県でもこれほどの関心があるのかと驚いた次第です。
FIT制度改正の波紋
一方で、この時期になると毎年のように騒がれるFITの制度改正ですが、今年はまた大きな爆弾がいくつも経産省から投下されています。
- 太陽光発電の入札制度を50kW以上に拡大
- FIT40円~32円の滞留案件の一掃
この二つが特に大型の爆弾となっていますが、目先の「国民負担の抑制」という一点張りで制度の変更を進めようとしており、長期的な国内における再生可能エネルギー普及のロードマップや、産業育成といった視点はかなぐり捨ててしまっています。
既に調達価格等算定委員会は2回開催(8月の入札関係は除く)され、滞留案件対策はパブリックコメントにかかっていますが、既に描かれたシナリオ通りの進行を見せているという感触です。
今後、低圧案件への立ち入り調査を含めた太陽光発電の実態把握が進む中で、経産省が調達価格等算定委員会に提示してきたデータとの齟齬が明らかになってくるでしょう。
- 設備の価格低下→技術基準に適合しない架台や施工の蔓延
- 設備利用率の上昇→他国がDCでパフォーマンスを評価する中、日本だけはACで評価
- 工事負担金は0.5万円/kW→工事負担金の高騰で断念した案件の多さ
など、実態が見えてきたときに経産省がどのように反応するのかは、一つ注目すべき点だと考えています。
「再エネの主力電源化」や「国民負担の抑制」が言われる中、常につきまとうシングルイシューで政策を考えてしまう構造から個々の担当セクションの行動すら矛盾をはらむという風景の下で、今年も制度改正の冬を迎えます。
講演・メディア:環境ビジネスオンライン 第3回連載記事が公開 - ソーラーシェアリングのコスト構造
8月からスタートした環境ビジネスオンラインでのソーラーシェアリング連載記事ですが、今月は第3回となる「ソーラーシェアリングの形式によるコストの違いと留意点」が公開されました!
意外と誰も知らない、地上設置型の太陽光発電とソーラーシェアリングのコスト比較などをまとめてみました。
農業の発展に資する太陽光発電事業がソーラーシェアリングですが、発電事業としての視点から切り出して捉えてみると、今後の地上設置型を取り巻く環境を考慮した際には、設置コストからランニングコストまで含むキャッシュフローを弾くとソーラーシェアリングの方が優位になるケースも出てきます。
太陽光発電全体の普及という観点からも、ソーラーシェアリングのポテンシャルが高いという点をまとめた記事になりますので、是非ご覧ください。
再エネ業界ニュース:九州電力が太陽光発電の出力制御を実施 - 優先給電ルールとは?
この週末、10月13日~14日にかけての九州電力による国内初の太陽光発電所に対する出力制御の実施が、各所で話題になっています。
その実施規模は以下の通りです。
- 10月13日:430,000kW
- 10月14日:620,000kW
出力制御は予想外なのか?
再生可能エネルギー発電所の出力制御(当初は出力抑制と呼称)そのものは、FIT開始当初から制度設計の中に盛り込まれていました。いわゆる旧ルール、年間30日以内の出力制御実施条項です。
この出力制御ですが、「域内の電力の需給バランスを保つため」というのが実施理由ですが、需給バランスが取れなくなりそうだからすぐに太陽光発電所の停止を求められるというわけではありません。主要メディアでは報じられないその内容を、少し解説していきます。
優先給電ルールとは?
出力制御に際しては「優先給電ルール」というものがあり、電力供給が需要を上回りそうになると下記の手順で対応が始まります。
- 貯水池式水力の出力制御
- 揚水運転による再エネの余剰電力の吸収
- 火力発電所の出力制御(混焼バイオマス含む)
- 長周期広域周波数調整(連系線を活用した広域的な系統運用)
- バイオマス(専焼、地域資源型)の出力制御
- 太陽光・風力の出力制御
- 長期固定電源の出力制御(原子力、揚水を除く水力、地熱)
このように、揚水発電所を使った余剰電力の吸収、火力発電所の出力制御、地域間の連系線を用いた域外への送電、バイオマス発電所の出力制御が行われて、始めて太陽光発電と風力発電に対する出力制御が行われます。
その中で「揚水運転による再エネの余剰電力の吸収」は日常的に行われており、火力発電所の出力制御も同様です。この辺りは、時々ニュースになっていましたね。
このルール上、太陽光発電・風力発電よりも優先されるのは原子力発電・水力発電・地熱発電です。九州電力管内では4基の原子力発電所が再稼働しており、この調整順位が最後となる電源が増えたことで、太陽光発電の出力制御が行われることになったのは一面の事実でしょう。
この辺りの数字的な積み上げは、下記の記事に詳しい解説があるので参考までに。
今後の出力制御の動向は?
今回の出力制御は、
- 冷涼な気候で空調などのエネルギー需要が少なく
- 更に週末ということで産業部門などのエネルギー需要も減り
- 一方で10月の晴天により太陽光発電の出力は大きくなる
という状況が重なったこと、そして太陽光発電の導入量全体が増加したことにより生じたと考えられます。
今後、季節が変わって日射量が低下し、また気温の低下による暖房需要が増加してくれば今回のような出力制御を要する事態はしばらくなくなると予想されます。おそらく、次に出力制御の実施が取り沙汰されるのは春頃になるのではないでしょうか。
出力制御の実施そのものは、太陽光発電設備が九州電力管内で電力供給の一定の割合を占めるまでに拡大した結果とも言えますし、また今回の実施内容が適切であったかどうかの評価が今後行われていくので、その内容は注視していきたいと思います。
講演・メディア:10/22のPVビジネスセミナーに登壇します - SDGsとソーラーシェアリング
講演・メディア:ITmedia スマートジャパンの連載第2回 - ソーラーシェアリング導入の実態に迫る
今月から始まったITmedia スマートジャパンでのソーラーシェアリング連載記事、第2回が公開されています。気がつけば公開から5日目ですが、現在も人気記事トップ10の第1位を維持していて、本当にソーラーシェアリングへの関心の高まりを感じます!
今回の記事は、「ソーラーシェアリングはどこまで広がったか、導入件数とその実態」と題して、農水省が公表している統計情報などからソーラーシェアリングが現在どのような広まりを見せているのかについて書かせていただきました。
内容的には農水省のデータを読み解いていく形ですが、こういった情報もまだまだ業界的には浸透していないのが現状なので、この連載「ソーラーシェアリング入門」では引き続き分かりやすく基礎的なテーマを取り上げていきます。
お知らせ:クラウドファンディング始めました - ソーラーシェアリングの実証研究に向けて
ソーラーシェアリングの更なる普及拡大を目指すにあたり、千葉エコとして初となるクラウドファンディングへのチャレンジが"マイナビ農業クラマル"でスタートしました!
ここで集まった資金は、ソーラーシェアリング設備下での高品質・高収量作物に関する大学との共同研究に活用します。
千葉エコとして、これまでソーラーシェアリング設備下での作物生育に関する研究を三重大学・千葉大学と実施してきており、今年に入って千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機が竣工したことを受けて更に作物の対象範囲を拡大していっています。
ただ、作物の研究は単年度で完結するものではなく、ソーラーシェアリングによる日射量の変化以外の気象条件も作物生育に影響するため、経年での変化を追っていく必要があります。
そういった中長期での研究を進めていく費用を集める手段として、今回クラウドファンディングにチャレンジすることとなりました。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
固定価格買取制度:事業用太陽光発電の全てを入札対象に - 経済産業省が専門委員会に提示
- 7円/kWhのコスト目標に対するFIT価格は8円50銭/kWhとなる
- そのため2022~2024年度には8円50銭/kWhのFIT価格を目指す
- 事業用太陽光発電のコスト削減を促すために全てを入札対象とする
などがあります。
価格目標自体には妥当性を感じる部分もありますが、来年度から事業用太陽光発電の全てを入札対象にするというのは拙速すぎる印象です。
これまでのFIT制度の逐次改正による混乱や、現在の2,000kW以上を対象にした入札の問題点についての反省は見られず、「国民負担の抑制」だけを旗印に突っ走ろうとしているように見えます。
少なくとも、事業用太陽光発電を全て入札対象とするのであれば、再エネの優先接続などを前提とすべきですがその視点も抜け落ちており、再エネに対して「コスト」しか見ていない経済産業省の姿勢を露見する形となってしまっています。
講演・メディア:ITmedia スマートジャパンでソーラーシェアリングの連載開始 - 第1回はその意義から
昨日9月10日より、ITmedia スマートジャパンで私が執筆するソーラーシェアリングの連載記事がスタートしました!第1回となる今回は、そもそもソーラーシェアリングとはどのような期待がされている取り組みなのか?を取り上げました。
公開日である昨日は、早々に記事ランキングトップに躍り出るなど、ソーラーシェアリングへの衰えることのない関心の高さを感じました。
これから概ね隔週ペースの更新で、テーマを区切ってソーラーシェアリングに関する様々な内容を取り上げていく予定ですので、お楽しみに!
再エネ業界ニュース:茨城県のほぼ全域で再エネの新規接続が不能に - 東京電力が募集プロセス開始
東京電力パワーグリッドより、茨城県のほぼ全域と栃木県・群馬県の一部を対象とした募集プロセスの開始申込みについてのニュースリリースが出されました。
これにより、対象地域では再生可能エネルギー発電設備の新規接続が当面の間停止することになります。
「電源接続案件募集プロセス」は、特別高圧の送電系統の増強工事が必要となり一定以上の工事負担金が見込まれる場合に、電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ電気供給事業者が募集プロセスの開始申込みができます。
北東北の募集プロセスが特に有名ですが、これが開始されると高圧以上の接続検討などが全て止まることになり、プロセス完了まで新規の接続申込みが原則できなくなります。
今回どの程度の期間を要するかは不明ですが、対象地域の広さから数年~10年単位になることが予想されます。