ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:新エネルギー小委員会資料から、接続保留問題における九州電力管内の状況を分析

先週15日に、固定価格買取制度について議論する、経済産業省/資源エネルギー庁の第5回新エネルギー小委員会が開催されました。

前回の第4回小委員会では、九州電力を始めとする電力会社が接続保留に対する資料等を提出していましたが、今回はそれを受けた資源エネルギー庁や九州経済産業局の見解が資料提出されています。

その中でも、九州経済産業局「固定価格買取制度における運用と課題」から、九州電力管内の現状を分析していきます。

 

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(出典)経済産業省資源エネルギー庁 新エネルギー小委員会 第5回配付資料より

まず、九州電力管内の再生可能エネルギーの現状を改めて見ていくと、今年6月末時点で設備認定を受けた発電設備が1,840万kWに達しています。特に、3月の1ヵ月間で719万kWの認定が行われており、太陽光発電の36円/kWの売電権利獲得に対する駆け込み申請の多さが現れています。

なお、実際に運転を開始した発電設備は242万kWで、運転開始割合は13%です。

 

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(出典)経済産業省資源エネルギー庁 新エネルギー小委員会 第5回配付資料より

次に、買取制度を巡る意見や課題ですが、九州経済産業局に寄せられている自治体の意見からは許認可を巡る問題が見えてきます。

私も発電事業開発のコンサルティングをしていますが、法令許認可というのは特に気をつけなければいけない事項がたくさんあります。特に太陽光発電事業では、山林を開発する際の林地開発や、農地を利用する際の農地転用許可の取得、また最近では景観を巡る規制も増えてきています。これは九州に限った問題ではありません。

しかし、経済産業省の設備認定の際は、こういった許認可をクリアしているかどうかは確認しないため、上記の資料にもあるように行政機関と必要な協議を行わなかったり、農地の転用許可を得ないまま発電事業を開始する事例が後を絶ちません。

設備認定の際に許認可を確認しないのは、各省庁の管轄を越えないためという説明を経産省はしていますが、この問題は抜本的な対応が必要です。

 

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(出典)経済産業省資源エネルギー庁 新エネルギー小委員会 第5回配付資料より

九州経済産業局の設備認定や報告徴収の状況ですが、認定手続の担当者は5名しかいないと記載されています。特別チームを編成することで対処したとしていますが、電子申請となっている50kW未満の太陽光発電所を除いても、2,500件近い認定手続が今年2月に発生しています。

また、平成25年度の設備認定に対する報告徴収(一定規模の発電設備に対する空申請ではないかどうかの確認)が、2,815件に上っています。

更に今後、設備認定内容の変更に対する軽微変更申請や変更認定申請への対応も含めると、前述した法規制などに対する確認や各自治体へのデータ提供といった課題の解決には、要員の問題もあってまだまだ時間がかかりそうです。

 

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(出典)経済産業省資源エネルギー庁 新エネルギー小委員会 第5回配付資料より

最後に、九州の再生可能エネルギー発電設備の運転開始状況と設備認定状況がまとめられています。

太陽光発電の設備認定状況や運転開始状況が取り沙汰されますが、他にも地熱発電バイオマス発電の認定状況も際立っていますし、中小水力も全国の2割が集まっています。設備容量では太陽光と雲泥の差ですが、こういった多様な電源を導入する可能性も、今回の一律の接続保留措置でストップさせられてしまっています。

地熱と水力の受け入れ再開の報道に対して、九州電力が即座に法律を盾にして「差別的に取り扱うことはできない」としていますが、そもそも保留措置自体が法律の想定していない事態(法律が定める接続拒否ではない)になっているわけですから、この事態を早急に解消するべきと思います。

 

今回取り上げた資料からは、送電網に関するデータがないために九州電力の主張する「管内の電力の安定供給に対する影響」の実態は分かりません。系統運用は経産局が把握していないということかも知れませんが、そちらの方も速やかな調査を進めて欲しいと思います。