ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:九州電力が回答保留期間中の個別協議要件を公開

九州電力が、再生可能エネルギー発電設備からの接続申込みに対する回答保留措置を開始してから、1ヵ月以上が経過しました。

そんな中、昨日、回答保留措置の実施期間中でも系統連系の個別協議に応じる条件が公開されました。

 

九州電力 回答保留期間中の個別協議について

 

基本的な要件は以下に九電資料から抜粋したものを引用しますが、発電事業者の負担で蓄電池の設置または出力抑制に応じられる設備の設置による、年間を通じた9時~15時の間の出力変動対応が必要になります。

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(出典)九州電力株式会社 「回答保留期間における個別協議」の受付要領

このように、蓄電池の設置による対応と出力抑制の2つのケースが示されていますが、例えば出力1MWのメガソーラーで上記要件を満たす蓄電池を設置する場合、

 1,000kW×0.83×6=4,980kWh

の規模が必要です。

これは、北海道電力住友電気工業が実証実験を進めている、レドックスフロー電池の実験設備(1MW×5時間)に等しい規模です。


住友電気工業株式会社|メガワット級大規模蓄発電システム

 

言い換えれば、まだ実証実験段階のシステムと同じ規模が求められるため、現時点では実質的に達成不可能な条件と言えるでしょう。

では、出力抑制の場合はどうでしょうか。

発電所遠隔操作で稼働停止や出力抑制を行うための装置を設置し、九州電力からの求めに応じて9時~15時の間は売電停止又は出力の抑制を行う必要があります。また、これによる売電損失は一切補償されません

この手法では、年間を通じていつ出力抑制の要請が来るかわからないため、事業計画を立てることが出来ません。

更に、

「個別協議適用要件を満たす場合であっても、別途系統上の対策が必要な場合や接続契約検討中の他の事業者の工事費負担金に影響が発生する場合については、個別協議をお断り」

するとしているほか、

『「個別協議継続意思確認書」を提出した後に個別協議に基づく接続検討を辞退される場合、接続検討(接続契約)の申込みも同時に辞退するものとみなします』

といった点にも注意が必要です。

 

なお、本件個別協議における九州電力からの回答は1ヵ月程度としており、一方で年内には回答保留措置解除後の対応について一定の方針が示される予定であることから、個別協議を進める間に新規の対応が公表される可能性があります。

また、個別協議を進めた場合は保留措置解除後に新たな対応が示されてもそちらにシフトできないともしています

このような厳しい条件から、今回の個別協議に臨む事業者はほとんどなく、保留措置解除後の方針が打ち出されるまで様子見の状態が続くことになると思います。