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ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:再生可能エネルギー発電設備の送電網への接続可能量拡大に関する経産省案

固定価格買取制度(FIT)

去る10月30日に開催された新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループにて、経済産業省/資源エネルギー庁による再生可能エネルギー発電設備の送電網への接続可能量拡大方策が提示されました。

 

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第2回)‐配布資料より

今回のWG資料では拡大方策として4+3項目が提示されており、既に各方面から主張されているような運用の見直し策なども含まれています。各項目について、逐次見ていきましょう。

 

①出力抑制ルールの見直し(時間単位の出力抑制)

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第2回)‐配布資料より

現在の出力抑制ルールでは、電力会社が発電事業者に前日までに出力抑制の実施を通知し、一日単位での出力抑制が行われます。この出力抑制が発電事業者に対する損失を無補償で実施可能な期間は、年間30日以内です。(北海道電力は既に例外規定が適用されているため、30日以上の出力抑制が行われる場合あり)

実際には、出力抑制が必要な時間が例えば正午前後の1~2時間であったとしても、現在のルールでは丸一日の出力抑制になり、実際には抑制が必要のない時間帯でも電力供給が低下します。

時間単位の出力抑制によって、より効率的に電力の供給をコントロールすることが出来ますが、これを実現するためには発電所を遠隔操作して、細かい出力抑制の指令を出すことが必要です。

電力会社と発電所を繋ぐ双方向の通信システムを整備し、それを適切に運用していくためのルール作りを含めた検討をしていかなければなりません。

 

②出力抑制ルールの見直し(出力抑制日数の拡大、対象範囲の拡大等)

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第2回)‐配布資料より

現在は年間30日以内とされている出力抑制日数の上限拡大や、対象となる発電設備を拡大することで接続可能量を増やそうという手法です。

上の図にもあるように、年間を通じて最も需要が低い日から段階的に需要の増加を日ごとに並べていくと、出力抑制が必要になる閾値と接続可能量のバランスする条件が緩和されていき、全体の出力抑制の日数が拡大することで接続可能な発電設備の量が増加します。

既に北海道電力では、再生可能エネルギー発電設備の導入量に応じた段階的な出力抑制日数が適用されており、この措置によって接続可能量を拡大しています。

容易に接続可能量を増加させる手法として、検討される可能性が高い案です。

 

③蓄電池の設置・運用システムの開発

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第2回)‐配布資料より

九州電力の個別協議要件でも示されていた、蓄電池の設置による接続可能量の拡大です。

出力抑制は発電所を停止することで電力の需給バランスを取りますが、蓄電池の場合は発電した電気を一時的に送電網に流さず貯めておき、時間をずらして供給します。先の九州電力の個別協議では、太陽光発電所の電気を9時~15時の間は蓄電池に貯め、17時以降に放電して供給するという形になっていました。

発電設備を停止させる必要がなく、一日の中でエネルギーの供給を分散させるという合理的な方法ですが、課題は蓄電池の設置コストの高さです。

仮に九州電力の条件(定格出力×0.83×6時間)を満たす設備を仮定した場合、大容量蓄電池として各所で導入されているNAS電池でも、定格出力1MWのメガソーラーで約2.5億円の設備投資になります。ほぼ事業費が2倍になる計算です。

蓄電池の充放電の際に発生するエネルギーロスがあり、自動制御技術の開発も必要となることから、直ぐには実施することが難しい手法です。

 

④地域間連系線の活用・増設

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ(第2回)‐配布資料より

現在は、再生可能エネルギー発電設備から供給される電力の需給調整は、各電力会社の管内のみで行われます。一方で、電力会社間の送電網を繋ぐ地域間連系線を活用し、例えば九州電力から中国電力へ、東北電力から東京電力へ送電することでより広域の需給調整を行うことが出来ます。

東日本大震災後には、各地域の電力需給バランスを取るために活用された状況がよく報じられていましたので、ご存じの方も多いかと思います。

これは現在の運用方法を見直すことで接続可能量を増やすことが出来る一方で、連系線自体の拡大を行うためには多額の設備投資と時間を要します。北海道と本州を繋ぐ北本連系線では、送電容量を現在の60万kWから90万kWに拡大する工事が始まっていますが、今年着工して運用が開始されるのは5年後の2019年です。

また、東京電力中部電力の間を結ぶ東京中部間連系設備も増強される予定ですが、こちらも90万kWの増強が完了するのは2020年度の見込みです。

確実性の高い方法ですが、電力融通のための地域毎の需給調整や、中長期的な送電設備整備などを段階的に行っていく必要があります。

 

⑤売電価格の変動

これは出力抑制を行うのではなく、例えば太陽光発電所からの電気の買取価格をピーク時は引き下げるなどして、発電事業者に卸電力市場などで直接電力の販売先を見つけさせるといった手法です。

現在の卸電力市場におけるスポットの取引価格は15円/kWh程度なので、例えば買取制度に基づいて電力会社に売る場合の価格を需給逼迫時には10円/kWhに引き下げ、卸電力市場での取引を促すという形などが考えられます。

 

⑥新規需要の創出や需要コントロール

従来、短時間の出力調整が難しい原子力発電の電気を効率的に売るために、需要が少なく余剰となる夜間電力の活用が推進されていました。給湯器などで夜間に電気でお湯を作り、日中利用するといった方法です。

これが太陽光発電となると、逆に日中にエネルギー供給が過剰となるため、ピーク時に電気を使うような設備を稼働させて需給バランスを取ることになります。

他にも、電気自動車などを普及させて、エネルギー需要自体を拡大させるといった方策もあります。

 

⑦火力発電所の運転能力の向上

これは、調整電源である火力発電所の運転能力を向上させて、再生可能エネルギーによる供給量の変化に対応させようという試みです。

太陽光発電風力発電といった出力変動が大きい発電設備からの電力供給の増減に合わせて、火力発電所の出力を操作し、需要とのバランスを短時間で調整していくという運用が常時行われています。

この変動に対する調整機能を、短時間での出力調整、起動時間の短縮、最低出力の拡大といった方法でより強化していく手法です。

 

以上、全7項目を個別に見てきました。

制度の運用ルール変更から大規模な設備投資を要するものまで、様々な提案がなされています。設備投資などの費用が発生するものについては政府・電力会社・発電事業者・消費者の誰が負担するかなど、議論を重ねる必要があり、運用ルールの変更もどの段階の発電設備・事業者に適用されるかなどを検討しなければなりません。

いずれにせよ、今回経産省案として提示されたことで、これらの手法が今後ワーキンググループ内で検討されていくことになるのでしょう。