ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

ソーラーシェアリング:再生可能エネルギーと農山漁村活性化

11月5日に開催された第6回新エネルギー小委員会に、農林水産省から「農山漁村活性化の観点からみた固定価格買取制度への意見」という資料が提出されました。

農林水産省は昨今、ソーラーシェアリングやバイオマス利用など、再生可能エネルギーと農業・林業・漁業を絡めた地域活性化を推進しています。


総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第6回)‐配布資料(METI/経済産業省)

 

上記サイトに掲載されている資料7が該当する農水省資料ですが、その中で固定価格買取制度と地域活性化、再生可能エネルギー農山漁村の活性化について見てみましょう。

 

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 (第6回)‐配布資料より

まず大前提として、固定価格買取制度を定めている「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再生可能エネルギー特措法)では、第一条の目的のところで再生可能エネルギーの利用が「地域の活性化」に寄与することが含まれています。

そして、昨今再生可能エネルギーの増加による国民負担が叫ばれる中で、「再⽣可能エネルギーによる地域活性化を図り、国⺠がその恩恵を実感できるようにすることも重要」としています。

再生可能エネルギーが導入されることによって、社会的あるいは地域にどのようなメリットがあるのかという議論がなかなか深まっていないのは事実です。

単純に発電→電気代→消費者負担だけに着目するのではなく、周辺産業への波及効果や環境負荷といった幅広い視点からの影響分析が重要になります。

 

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(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会 (第6回)‐配布資料より

再生可能エネルギー農山漁村の活性化にどう資するのか?を見ていくと、どこの発電所でもそうですが、地元の主体が資本参加していなければ直接地域に還元される経済的な利益は少なくなります。

工場誘致であれば、地域外の資本が来ても人口・雇用・周辺産業が目に見えて影響を受けます。しかし、再生可能エネルギー発電の場合は固定価格買取制度による収益担保が大きいため、地元の人々が自ら発電所を運営しなければ多くの収益は域外に流出する結果になるのです。

上の図の中でも、発電設備の設置主体の32%は東京・大阪の主体で、12%が外資企業であり、地元の主体は22%にとどまっています。

また、地元の自然資源を活用して発電事業を行い、売電収入を元手にして産業創出や地域の魅力を向上させ、地域内経済の循環を図り、更に農林漁業の発展と農山漁村の活性化を図るというステップが示されていますが、実際にこういった地域活性化と経済循環を目指す取り組みは増えつつあります。

一方で、活性化の先には持続可能性というハードルが待ち構えています。再生可能エネルギー発電事業によって域内経済が上向き雇用が創出されても、若年層の流出防止や出生率向上、転入者の増加による人口の増加・安定化が果たされなければ、いずれ地域は衰退していきます。

ソーラーシェアリングを例に取ると、営農者の所得が売電によってまず増加し、更にその下で特徴的な農作物を生産したりブランド化を図る方向が考えられます。また、売電するのではなく農業用設備を稼働させるためにエネルギーを振り向けることも出来ますから、場合によっては農作物の生産コストを下げることが出来るかも知れません。

いずれもまだ国内で試行錯誤が続いている段階なので、このあたりの視点は引き続き各地の事例を見ながら掘り下げていきます。