ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

資源エネルギー政策:経済産業省による長期エネルギー需給見通し小委員会の設置と原発5基の廃炉決定

みなさま、新年あけましておめでとうございます。

 

昨年は秋から年末にかけて再生可能エネルギー業界を震撼させるような出来事が相次ぎ、12月には固定価格買取制度の運用見直しが発表されました。

今年は1月9日に上記運用見直し案に対するパブリックコメントが締め切られ、中旬からは一部変更が適用され始めます。

わが国の再生可能エネルギー政策、そして資源エネルギー政策全般にとって今年は大きな転機となることを感じさせる2つの大きなニュースが、この年末年始に報じられました。

 

【長期エネルギー需給見通し小委員会の設置】

昨年4月に閣議決定された「第4次エネルギー基本計画」に基づき、長期的なエネルギー需給見通しの検討を行うための委員会設置が12月26日に発表されました。

 

エネルギーミックスを検討するため「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置します(METI/経済産業省)

 

更に、小委員会の下に発電コスト検証ワーキンググループを設置して、過去の議論を含めた発電コストの検証を進めていくとしています。

この長期的なエネルギー需給見通しは概ね3年に一度見直され、直近では2009年に当時の麻生政権の気候変動対策で「2020年に2005年度比15%の温室効果ガス排出削減」という方針が示されたことを受け、再計算が行われたものが最新です。

その後、東日本大震災東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大幅な資源エネルギー政策の見直しが必要となってから、新たなものは策定されていませんでした。

今回は2030年以降のエネルギー需給見通しもターゲットになってくると考えられますが、太陽光発電を中心として急増する再生可能エネルギーの導入、原子力発電所の再稼働及び廃炉・立て替え、化石燃料の利用バランスなど様々な要素が絡んできます。

この議論の中で、わが国の長期的な資源エネルギー政策に対する方針が決まることになりますから、当然私たち自身も将来のエネルギー社会像を考えながら議論に参加していかなければなりません。

来年には電力の完全小売自由化、そして2018年度以降には発送電分離など大きなイベントも控えており、今年はその入り口に立つ重要な年となるでしょう。

 

【老朽原発5基が新たに廃炉へ】

再生可能エネルギー発電設備の接続可能量算定の際にも問題視しましたが、2016年に40年の運転期限を越える原子力発電所について、廃炉へ向けた手続が始まることになりました。


電力4社:老朽原発5基、廃炉へ 月内にも地元協議 - 毎日新聞

対象となるのは以下の5基です。

このうち、島根1号機と玄海1号機は先の接続可能量算定の際に再稼働を前提とされていたものです。この短期間に廃炉が決定するくらいに老朽化が判っていたと思われるのに、算定対象に含まれていたのは不可解と言わざるを得ません。

なお、同時期に運転期限を迎える高浜原発1・2号機(関西電力/福井県)は、運転期間の延長を目指すとされています。

これらの5基の廃炉は地元自治体との協議を開始し廃炉手続に入るということですが、一方で新たな原発立て替え案も出てきていると報じられています。

長期エネルギー需給見通し小委員会の議論でも、当然に原子力発電所の割合をどの程度見込むかが重要な事項になるでしょうから、その取扱に注目していきます。

 

この2つのニュースを取っても、これからわが国の資源エネルギー政策が大きな転換期に入ってくることは疑いありません。

今年も引き続き様々な情報・意見発信をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

2015年正月

馬上 丈司