ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:固定価格買取制度に関する施行規則の改正省令と関連告示が公布

昨年12月18日に固定価格買取制度の運用見直し案が公表され、今月9日のパブリックコメント締切を経ていつ公布されるのか注目されていた「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」ですが、22日付で公布され週明け26日から施行されることになりました。


再生可能エネルギー特別措置法施行規則の一部を改正する省令と関連告示を公布しました (METI/経済産業省)

大枠に変更はありませんが、パブリックコメントを踏まえた対応が公表されているのでそちらの内容を見てみましょう。

 

①接続可能量の定期的な検証

昨年12月16日に系統ワーキンググループに報告された電力各社の接続可能量について、廃炉予定の原子力発電所まで含めた全基の再稼働且つ高い設備利用率が試算条件となっていた点などについて、各所から批判が出ていました。

この部分は「あれはその時のルールで試算したものなので、引き続き検証していきます」というだけの内容です。

②出力制御に関するルールやその遵守状況をチェックする仕組み等の整備

実際に出力制御が始まると、事業者にとっては何故自分が出力制御の対象となったのか?を知る必要がありますし、その運用状況が適切かどうかを評価する仕組みが必要です。

今年4月から発足する系統の広域的運営推進機関がルールを策定し、遵守状況のチェックを行っていくと言うことですが、広域機関には当然のように各電力会社が関わっているので、どこまで公平性や透明性が担保されるかは分かりません。

③出力制御期間の見込みの公表等

今年は出力抑制が何月にどの程度必要になるのか?も、事業者にとって非常に重要な情報であり、この基礎データを持っているのは各地域電力会社だけです。

遅くとも年度内には指定電気事業者となった地域電力会社各社がシミュレーション結果をまとめ、速やかに公表することとしています。

④連系線利用ルール等の見直し

現在は各電力会社管内で再生可能エネルギー発電設備からの供給電力を消費しなければならないわけですが、地域間連系線を活用して他の地域を含めた需給調整が出来ればより融通が利くようになります。

年度ごとに固定されている地域間連系線の運用容量を、30分毎に細かく算定し発電事業者もその利用予約が出来るようにするなどの措置を、今年4月から運用開始するとしています。こちらも広域機関が運営ルールを定めます。

電力会社間の積算ルール新設や、系統増強費用の負担をどう分担するかなども並行して検討するとしています。

前向きなようには見えますが、実際の中身はこれから考えますという形なので、新ルールが運用され効果が見えてくるのはまだまだ先になりそうです。

⑤住宅用太陽光発電等の小規模太陽光発電(500kW未満)や小規模風力発電(20kW未満)に関する出力制御の適用時期の後ろ倒し

これは、電力会社管内の状況によって小規模発電設備が出力制御の対象となる時期を後ろ倒しにするものです。

接続可能量に余裕のある東京電力中部電力関西電力管内では、

  • 50kW未満の太陽光発電設備を当分の間、出力制御の対象外とする。
  • 50kW~500kW未満の太陽光発電設備は制度の施行を4月1日からとする。

接続可能量は超過していないと考えられる中国電力北陸電力管内では、

  • 50kW未満の太陽光発電設備は制度の施行を4月1日からとする。

既に接続可能量を超過しているか超過しようとしている北海道電力東北電力四国電力九州電力沖縄電力管内では、

  • 10kW未満の太陽光発電設備は制度の施行を4月1日からとする。
  • 10kW未満の太陽光発電設備は、将来的に必要が生じた場合に出力制御のための機器の設置等を行う契約とすれば、接続を可能とする。
  • 出力制御の実施にあたっては10kW以上の設備を優先的に対象とする。

最後に、20kW未満の風力発電については当分の間、出力制御の対象外とし、接続しようとする事業者が風力発電の指定電気事業者になった場合には出力制御の対象とする。

このように、小規模な太陽光発電設備については出力制御に関する一定程度の猶予が設けられることになりました。実際の運用上、今回対象範囲が拡大された500kW未満の発電設備について、どの程度出力抑制が実行されるようになるのかは不透明ですが、しばらくは小規模発電事業事業性見通しが多少やりやすくなりました。

太陽光発電設備の仕様変更時の調達価格変更等の施行日の延期

運転開始前の太陽光発電設備について、出力増加や太陽光パネルの基本仕様を行う場合には買取単価を変更時点のものにするという運用変更が実施されますが、その基準日が2月1日から2月15日に後ろ倒しされます。省令改正の遅れを受けた措置とも言えますが、若干ながら事業者にとっては余裕が出来ることになりそうです。

 

以上がパブリックコメントを受けた対応ということになりますが、当初案の大きな見直しというのはありません。出力抑制対象を多少緩和したり、太陽光パネルの変更に関する措置を延期したりという本当に小手先の内容か、「何にせよこれから色々と検討します」といったものにとどまりました。

もし当初予定通り今月13日に公布されていたら、というケースとの比較を想定してみても、せいぜい⑤と⑥があるかないか程度の違いだったのではないでしょうか。

何にせよ改正省令と関連告示が公布され施行日も決まったことで、接続申込みの回答保留措置解除も本格的に始まることになりますから、ここから年度末にかけては大きな嵐が吹き荒れることになりそうです。