固定価格買取制度:「電力の転売規制」 経済産業省 再生可能エネルギー発電からの電気転売を規制
その特性から常に需要と供給量を一致させなければならない電気ですが、電気事業者同士が電気を売買する「日本卸電気取引所」という市場があります。
この卸取引所ではスポットあるいは期間を定めた電気の売買が行われており、その時々で単価も変動しています。
固定価格買取制度(FIT)導入以降、この卸取引を利用して電気事業者が制度を利用して買い取った電力を卸取引市場で売って利益を得るという取引が増加していました。
それに対して、経済産業省が固定価格買取制度を利用している電気事業者の転売の規制に乗り出すとしています。
固定価格買取制度によって買い取られた電気には、省令で定められた「回避可能費用」を差し引いた差額が電気事業者対して費用負担調整機関(一般社団法人低炭素投資促進機構)から支払われます。(図)
(出所)筆者作成
これによって、電気事業者の仕入れ原価は他の電源と遜色ない範囲に抑制されており、その原価に利益を乗せて小売を行っています。
一方、卸市場で売却する場合にも回避可能費用(原価)以上で売ることができれば、利益を挙げることができます。
本来は固定客の需要家を確保して電気を小売りすべきところを、卸市場に流すだけで買取制度を利用して利益を得ることは制度の趣旨に反する、というのが経産省の見解です。
そのため、電気の販売方法に応じて電気事業者が受け取る補填金を変動させることによって、こうした行為を規制しようとしています。
大手のPPSでもこのスキームによる収益が売上の一定割合を占める所があり、また太陽光発電事業者から固定価格買取制度の買取価格にプレミアムを上乗せして買い取るPPSの中にもこのスキームで収益を得ていることがあるため、今回の措置で事業の見直しを迫られる事業者が出てくると見込まれます。