ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:固定価格買取制度の見直し議論開始(2)

前回に引き続き、新エネルギー小委員会の資料を紐解きながら固定価格買取制度(FIT)の見直し議論について考えていきます。

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太陽光発電の急激な増加に伴って、現在、再生可能エネルギー普及を阻害する大きな要因になっているのが系統制約の問題です。

通常、再生可能エネルギー発電所から電気を売電するには、電力会社の送電線に接続して電気を送り出します。ただし、電気は電圧の高い特別高圧線(上流)から高圧線、そして一般家庭に至る低圧の配電線(下流)まで、電圧を下げながら供給されていきます。

これだと、例えば出力1MWのメガソーラーの場合は高圧線で電気の届く範囲にしか供給できず、周辺に電力需要家がない場所だと売電できなかったり、送電線に送り出せる量が限られたりします。

そこで経済産業省は、「逆潮流」という下流(高圧)から上流(特別高圧)へと電気を流すことを認めるようになり、変電所などの改修工事は必要になりますが送電線に接続できる発電所は増加しました。

さて、この系統制約の問題ですが、FIT導入から1年も経たない2013年4月に北海道電力管内での系統制約を経済産業省が発表し、その後は沖縄電力管内でも同様の制約が生じています。f:id:chibaecoenergy:20150630145016j:plain

(出典)経済産業省 新エネルギー小委員会第12回会合 配付資料

そして、2014年9月に九州電力がFITに基づく接続申込みに対する全面的な回答保留措置を取り、一気に全国へと系統制約の問題が波及しました。現在は、指定電気事業者制度による無制限・無補償での出力抑制を認めることによりいわゆる回答保留問題は一応解消されています。

送電線への受け入れは再開されたものの、基幹送電網を含む上位系統の増強工事には多大な時間と費用がかかります。

上位系統の増強に必要な工事費の算定と、その負担を巡る問題はむしろ深刻化しており、電力会社から1MWの発電所に対して10億円以上の負担金が請求されたり、増強工事が終わって送電線に接続できるまで8~10年近くかかるという回答を受けたりという事例も起きています。

大規模変電所や上位系統の改修・増強工事となると、扱うことができる工事業者が限られるため、こうした費用や工事期間が妥当なのかどうかを発電事業者側が判断することは難しいです。

今年4月に発足した電力広域的運営推進機関(広域機関)が、業務として10MW以上の系統アクセスに関する接続検討への対応や、広域連系系統の整備を行うことになっています。

今回の委員会資料でも、系統連系費用への入札方式の導入と広域機関の運用による改善が示されていますが、そもそも広域機関自体に各電力会社からの出向者が多く入っていると見られ(そもそも送電網のことが分かるのは電力会社の関係者がほとんど)、その実効性は不透明です。

発電事業者に対する、送電網の空き容量や負担金の算定根拠に関する情報開示のあり方を見直し、その適正化を図っていくような制度改善がなければ、太陽光発電以外の再生可能エネルギーも普及にはハードルが高いままとなってしまいます。

 

以下、(3)に続きます。