太陽光発電事業:なぜ太陽光発電所は倒壊したのか? - 電力安全小委員会の検証から
1月25日に、経済産業省の電力安全小委員会下にある「新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ」で、太陽光発電設備の安全確保のための取組強化に関する議論が行われました。
ここで、昨年の台風15号による九州地方での太陽光発電設備の被害調査結果が報告されています。
被害状況の集計や個別事例の情報が出ているので、一つ一つ見ていきます。
まず、設備規模別の損壊状況が下記です。
(出所)新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ資料9
発電設備の被害のうち約7割で構造面の問題が生じ、全体の4割でパネルの脱落や飛散が起きています。特に、500kW~2,000kWクラスで被害が顕著としていますが、このクラスの発電所は設置段階で工事計画の届出や使用前安全管理検査が不要となっています。
そして、実際の被害状況の報告がまとめられたものが下記です。
(出所)新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ資料9
ここでは2つの事例が挙げられていますが、どちらも架台を支える杭が抜けて架台が倒壊、パネルの損壊や飛散が発生しています。
いずれも、地盤調査の未実施・施工方法の逸脱・そもそもの強度計算不足により、太陽光発電設備の技術基準に適合しない耐風速強度となっていたと報告されています。
そして、各事業者への調査の結果、被害のあった設備のうち約2割にあたる16件で設計基準風速の不足や強度計算の未実施があったとしています。(更に12件は確認中)
(出所)新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ資料9
今回の調査報告についてのまとめとして、「2,000kW未満の発電設備において、構造強度に関連する重大な損壊事案が発生している」とし、現状では
- 設計基準風速を把握していない等、必ずしも適切に技術基準を理解していない
- 安全尤度がほとんどない
- 不適切な施工方法により施工強度を達成していない
といった事例が散見されるとしています。
今後、他の発電所に対する実態調査の結果も踏まえて、安全規制の見直しを図る方向で検討が進むようです。