ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

太陽光発電事業:太陽光発電競争力強化研究会のレポート② - わが国の太陽光発電のコスト構造

前回に引き続き、太陽光発電競争力強化研究会のレポートから、わが国の太陽光発電の抱える課題についてまとめていきます。

前回の記事は下記からどうぞ。

cee.hatenablog.jp

 

コスト構造の課題

固定価格買取制度(FIT)による導入促進の目的というのは、高コストであるからこそ他の電源よりも買取価格を優遇することで設備設置を促し、普及を図ることでコストを引き下げていくことにあります。

2016年段階では、わが国の太陽光発電は導入費用も運転管理費も概ねドイツ・フランス・英国の2倍程度の水準となっています。

これを如何にして引き下げていくのかについての議論では、まず現状は下記の表のように「あらゆるコストが全部高い」という状態です。

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(出所)経済産業省 太陽光発電競争力強化研究会レポート

この表では、国ごとの特殊事情が絡む土地造成や系統接続費用を除いているので、発電所の本体工事に関する費用部分の比較となっています。

レポートの中では、

  • モジュールの内外価格差は縮小傾向
  • PCSは海外勢の参入圧力が弱い
  • EPC事業者経由の調達による追加マージンの発生
  • BOSや設置工事は設計・施工の効率化が進んでいない
  • 専門のEPCが少なく、建築業等をベースにした多層の下請構造
  • そもそも高いFIT価格による価格競争圧力が弱い
  • 耐震・耐風基準の高さ

などを高コストの理由として挙げています。

特に設計・施工部分の専門化が進んでいない事による無駄の多さは、BOS価格及び設置工事費の高止まり要因となっており、この構造が発電所の点検・保守(O&M)にも及ぶことで運転管理費も高い水準にあります。

この課題に対しては、買取価格の引き下げや入札制度の導入によって競争を促進するほか、NEDO太陽光発電開発戦略(PV Challenges)に基づく付加価値の向上と低コスト化を目指した技術開発支援を進めるとしており、発電コストを

  • 2020年に14円/kWh
  • 2030年に7円/kWh

まで、段階的に引き下げていくとしています。

また、国内メーカーの競争力をどう高めていくかも議論されていますが、国内に大量流入している中国メーカーとの競争の中で、コスト削減を目指すか付加価値の向上を図るかという視点は、他の工業製品と同様の課題です。

 

次は、長期安定発電の実現に向けた現状と課題をまとめていきます。