ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

再エネ業界ニュース:伊那市が再生可能エネルギー発電設備の設置に関するガイドライン見直し

固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電を中心に再生可能エネルギー発電設備が増える中、各地で生じる発電事業者・開発事業者と地元住民などとのトラブルを受けて、再生可能エネルギー発電設備の設置に際して独自のガイドラインを設ける自治体が増えています。

しかし、ガイドラインでは罰則等を伴わないことなどから、トラブルの抑止が十分ではないことがあるのも現実です。

長野県伊那市は昨年4月に「伊那市再生可能エネルギー発電設備の設置などに関するガイドライン」を公表しましたが、今月になってその見直しに着手したと報じられています。

 

伊那市 再生可能エネ発電ガイドライン見直しへ:長野日報のニュースサイト

 

ガイドラインの見直しは何故必要となったのか?

この報道では、伊那市ガイドラインの見直しに着手した理由として

今回の見直しは、地元住民に十分な説明が行われない状況での設備設置によるトラブルが発生したことや、事業内容や地元説明会の実施状況について市が確認する仕組みが不明確といった指摘を受けて検討することになった。

としています。

現行のガイドラインでは、市が指定した様式に従って計画書等を市長宛に提出すること並びに地元住民に対する説明会を開くこととしています。

見直し案では、事業計画段階で市との協議を事業者に求め、市側では許認可等の確認を行うほか、提出された計画書に対して市長による意見書の発出も含まれているようです。

法令許認可については経済産業省への設備認定申請時にチェックリストの提出が必要とされるようになりましたが、地元調整については対象範囲を含めて事業者の裁量によるところが大きいのが実態で

再生可能エネルギー発電事業と地元合意形成

長野県内では下記のように、メガソーラー事業計画において市町村の環境保全条例に基づく地元同意が得られなかったケースも生じています。

2区が不同意 富士見町のメガソーラー計画:長野日報のニュースサイト

特に特別高圧案件のメガソーラーの場合、開発範囲が数十haに及び自然環境や景観への影響が大きいことから、開発自体の是非を問われることも多いのが実態です。

固定価格買取制度によって、再生可能エネルギー発電が投資収益事業として取り組まれることが多くなり、結果として地域の自然資源を活用したエネルギー事業という視点が欠けてしまっていることも問題の根底にあるように思います。

長野県では、大規模なメガソーラーの増加によって環境アセスメント条例の見直しも行われており、伊那市に限らず今後のわが国における再生可能エネルギー発電事業と地域の問題を考える上で重要な先行事例となっていくでしょう。