ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

電力小売自由化:電力広域的運営推進機関(OCCTO)が年次報告書を公開 - 電力需給実績や系統情報など

電力広域的運営推進機関(広域機関/OCCTO)が、平成28年度版の年次報告書を公開しました。

年次報告書(平成28年度版)の公表について|広域機関とは|電力広域的運営推進機関ホームページ

広域機関の役割と年次報告

広域機関は「電気事業の広域的運営の推進」を目的とした組織ですが、24時間体制で全国の電力需給や電力系統の運用状況を監視し、リアルタイムで需給調整の対応を行って電力の安定供給を確保するといった役割を担っています。

その他にも、中長期の各電気事業者による供給計画の取りまとめ、広域連系系統の整備計画策定、電力系統運用ルールの策定なども行っており、この各業務について個別に公表されてきた報告書等を取りまとめたものが今回の年次報告書となっています。

年次報告書の内容

年次報告書の内容は下記の5つの項目にまとめられています。

  1. 電力需給に関する実績
  2. 電力系統に関する状況
  3. 系統アクセス業務に関する実績
  4. 供給計画の取りまとめ結果等に基づく電力需給・電力系統に関する見通し及び課題
  5. 各供給区域の予備力及び調整力の適切な水準等に関する検討状況

この個別の報告内容から、特徴的なデータなどをかいつまんで見ていきます。

1.夏季・冬期最大需要電力の傾向

夏季の電力需要のピークタイムでは、地域毎の特性としては北海道から沖縄まで12時~15時がピークとなる地域が広がる中、四国と九州は17時という傾向があります。

一方で冬期の場合のピークタイムは、北海道・東北・北陸・四国・沖縄が18時~20時で、それ以外の地域は10時~12時となっています。

最大需要電力の全国合計は、夏季が1億6,454万kWで冬期は1億5,185万kWと、夏季の方が多いという傾向が見られます。

2.連系線の利用状況

地域間連系線の利用状況では、下記のような向きで連系線を利用した送電が多い傾向があります。

  • 東北-東京間の東京向き
  • 東京-中部間の東京向き
  • 中部-関西間の中部向き
  • 関西-中国間の関西向き
  • 関西-四国間の関西向き
  • 中国-四国間の中国向き
  • 中国-九週間の中国向き

この電気の流れを見ていくと、九州からどんどん東へ向かって電気が流れていき、東北からも南へ向かって電気が流れて最終的には関東地方に行き着いています。

3.供給計画取りまとめに基づく電力需給の課題

平成28年度の電力供給計画を取りまとめた際に、広域機関として2つの意見を付しています。

1つ目は小売電気事業者が中長期の電気供給力確保を「未定」としており、発電事業者との直接契約ではなく電力市場での取引によってこれを確保するとした場合、安定した電力供給への疑念が生じることになります。

2つ目は石油火力発電所等の経年設備が徐々に廃止される中で、東日本大震災のような事象が再度発生した場合に予備電源の確保が厳しくなることや、東京電力をはじめとする旧一般電気事業者が電力自由化に伴う競争に伴って、現在は維持している非常時の供給力を将来的に維持し続けられなくなるのではないかとしています。

今回の年次報告書から見えてくるもの

つらつらと今回の年次報告書の内容を見てきましたが、従来は知ることが難しかった情報が含まれており、またこれらの数値をより詳細に検証していくことで今後の電力事業を考えていくための一つの基礎資料にはなるのではと思います。

需給調整や地域間連系線の活用拡大は、自然エネルギーの最大限の導入にも繋がる手段となってくるため、個別のデータを分析しつつ講じるべき手段を見出すこともできるでしょう。

一方で、エリアインバランスの問題を始めとして電力小売自由化に伴う混乱として、各電力会社等が取りまとめているデータの不備もあり、今後いかに正しいデータを集めていけるかどうかも重要になっていきます。