ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

再エネ業界ニュース:九州電力が太陽光発電の出力制御を実施 - 優先給電ルールとは?

この週末、10月13日~14日にかけての九州電力による国内初の太陽光発電所に対する出力制御の実施が、各所で話題になっています。

その実施規模は以下の通りです。

  • 10月13日:430,000kW
  • 10月14日:620,000kW

出力制御は予想外なのか?

再生可能エネルギー発電所の出力制御(当初は出力抑制と呼称)そのものは、FIT開始当初から制度設計の中に盛り込まれていました。いわゆる旧ルール、年間30日以内の出力制御実施条項です。

この出力制御ですが、「域内の電力の需給バランスを保つため」というのが実施理由ですが、需給バランスが取れなくなりそうだからすぐに太陽光発電所の停止を求められるというわけではありません。主要メディアでは報じられないその内容を、少し解説していきます。

優先給電ルールとは?

出力制御に際しては「優先給電ルール」というものがあり、電力供給が需要を上回りそうになると下記の手順で対応が始まります。

  1. 貯水池式水力の出力制御
  2. 揚水運転による再エネの余剰電力の吸収
  3. 火力発電所の出力制御(混焼バイオマス含む)
  4. 長周期広域周波数調整(連系線を活用した広域的な系統運用)
  5. バイオマス(専焼、地域資源型)の出力制御
  6. 太陽光・風力の出力制御
  7. 長期固定電源の出力制御(原子力、揚水を除く水力、地熱)

このように、揚水発電所を使った余剰電力の吸収、火力発電所の出力制御、地域間の連系線を用いた域外への送電、バイオマス発電所の出力制御が行われて、始めて太陽光発電風力発電に対する出力制御が行われます。

その中で「揚水運転による再エネの余剰電力の吸収」は日常的に行われており、火力発電所の出力制御も同様です。この辺りは、時々ニュースになっていましたね。

このルール上、太陽光発電風力発電よりも優先されるのは原子力発電・水力発電地熱発電です。九州電力管内では4基の原子力発電所が再稼働しており、この調整順位が最後となる電源が増えたことで、太陽光発電の出力制御が行われることになったのは一面の事実でしょう。

この辺りの数字的な積み上げは、下記の記事に詳しい解説があるので参考までに。

tech.nikkeibp.co.jp

今後の出力制御の動向は?

今回の出力制御は、

  • 冷涼な気候で空調などのエネルギー需要が少なく
  • 更に週末ということで産業部門などのエネルギー需要も減り
  • 一方で10月の晴天により太陽光発電の出力は大きくなる

という状況が重なったこと、そして太陽光発電の導入量全体が増加したことにより生じたと考えられます。

今後、季節が変わって日射量が低下し、また気温の低下による暖房需要が増加してくれば今回のような出力制御を要する事態はしばらくなくなると予想されます。おそらく、次に出力制御の実施が取り沙汰されるのは春頃になるのではないでしょうか。

出力制御の実施そのものは、太陽光発電設備が九州電力管内で電力供給の一定の割合を占めるまでに拡大した結果とも言えますし、また今回の実施内容が適切であったかどうかの評価が今後行われていくので、その内容は注視していきたいと思います。