ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:パブリックコメント中の固定価格買取制度の運用見直し案について

既に何度か取り上げていますが、18日に経済産業省が公表した固定価格買取制度の運用見直し案について、19日から来月9日までパブリックコメントが募集されています。

 

今回のパブリックコメントには、調達価格の決定時期に関する事項(平成27年4月以降実施予定)は盛り込まれていません。こちらは3月の調達価格等算定委員会における次年度の調達価格案と併せてパブリックコメントにかけられる予定です。

それ以外の、年明け1月中旬及び2月以降に施行予定の運用見直し案が、パブリックコメントの対象になっています。

発電事業者にとって影響が大きいのは出力抑制(出力制御)の運用ルール変更です。今後、太陽光発電風力発電では出力抑制対象が500kW未満に拡大されるほか、年間30日以内とされていた無補償日数が時間単位(太陽光360時間・風力720時間)になります。

更に、指定電気事業者となる電力会社管内で接続申込みを行う場合には、年間30日を超える出力抑制の受け入れが系統接続の条件となります。

出力抑制の拡大によって、発電事業者にとって売電収入がどこまで減少するのかを見極めることが必要になり、融資などで資金を調達する場合のハードルも高くなってきます。

少なくとも指定電気事業者となった九州電力を始めとする電力会社管内では、回答保留措置対象となっている案件について、最も保守的なケースの出力抑制も見込んだ上で事業性が成り立つかどうかを検証していかなければなりません。

ちなみに、回答保留措置を実施している電力会社について16日の系統ワーキンググループに接続可能量や出力抑制想定日数の算定結果が報告されています。

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(出所)新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ 第3回配付資料

これは2011~2013年度の毎年の電力需要をベースに、接続可能量の限界まで再生可能エネルギー発電設備が導入された場合どれだけの出力抑制が必要になるかを試算したものです。

直近の2013年度の需要データで見ると沖縄電力のみが0日となっており、それ以外の6社では16~26日の出力抑制が必要とされています。

各社とも既稼働の発電所はまだ接続可能量に達していないため、来年直ちにこれだけの出力抑制が行われるというわけではありませんが、明確に定量的なデータが示された事例として今後事業者が考慮しなければならない値です。

一方で、今回の接続可能量の試算に当たって設定された前提条件の中でも特異なのは、原子力発電所による電力供給量の想定値です。

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(出所)新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ 第3回配付資料

これらの原子力発電所のうち再稼働の時期がほぼ確定しているのは川内原発のみで、島根原発1号機や玄海原発1号機では老朽化に伴う廃炉が検討されています。

それにも関わらず全原発の稼働を前提とした数値を出してきたことは、政府の方針として最大限の原発再稼働を目指していることが想定されます。

加えて16日に上記の試算結果一式が報告された後、その内容の正確性について全く検討がされないままに固定価格買取制度の運用見直しに対する前提条件として採用されていますが、この試算結果を採用することの妥当性自体も議論の対象とすべきです。

 

今回の運用見直し案は、全般的に発電事業者へ対応を迫る内容が多く、電力会社がどこまで接続受け入れのための努力をするのかは不透明になっています。

運用見直し案の実施予定時期とパブリックコメントの〆切り日が近接しており、実際にどこまで意見が反映されるのかは判りませんが、最大限の意見表明をしていこうと思います。