ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

発電側基本料金の議論が進む - 自民党の再エネ議連を傍聴してきました

先週、自民党本部で開催された再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の会合に参加しました。今回のテーマは「発電側基本料金」です。

発電側基本料金?

「発電側基本料金」とは、送電網の設備投資に必要な費用の一部を、発電事業者に負担させるための仕組みです。現在、再生可能エネルギーなど新たな電源の新設が進むことで、各地で送電網の増強が必要になっています。これまでは、送配電網の設備投資費用は託送料金で回収されてきましたが、これは電気料金に上乗せされているので需要家が最終的に負担しています。
発電側基本料金は、経済産業省案によれば「発電所の定格出力(kW)あたり○円」という課金になりますが、従来は託送料金で回収していたものを発電事業者に転嫁するだけとも言えるので、
  • 託送料金が減額され
  • 発電事業者は発電側基本料金分を卸価格に転嫁する

という流れになり、転嫁がスムーズに進むと供給側・需要側全体としての負担総額は払う主体が変わるだけで、大きくは変化しないと見込まれます。

この発電側基本料金は2023年度の導入を目指して準備が進められています。

何が議論の主題なのか?

では、何故この発電側基本料金が自民党の議連で取り上げられるくらい問題になっているのかというと、FIT制度を利用している発電所への遡及適用です。FIT制度では、発電所の設備費から維持管理費から廃棄費用まで含めて、電気の調達価格が決定されています。そして、原則として社会情勢の急変がなければ、一度決定された調達価格は変更されません。そんな発電所に、この発電側基本料金が徴収されるようになると、何が起きるでしょうか?
新たに、kWあたりの発電側基本料金をFIT制度を利用する発電事業者は支払うことになりますが、固定価格での買い取りなのでその負担増加分を売電価格に転嫁できません。従って、発電事業者の経済的負担だけが増えてしまうことになります。この状況に対して、調整措置(発電側基本料金分の補填)を行うか否かが議論になっているのです。

制度設計は見直されるか?

今回の自民党再エネ議連では、この問題について専門家からの意見聴取が行われ、京都大学の安田先生や、上場再エネファンドを運用するカナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村代表が意見を述べました。
安田先生からは欧州での発電側基本料金に相当する負担システムについての事例報告が、中村代表からは太陽光発電への投資事業の観点から見た発電側基本料金による負担についての意見があり、その後に出席議員による質疑応答がありました。
経済産業省・資源エネルギー庁からは、基本的にこれまでの各委員会での議論内容についての説明が繰り返されましたが、発電側基本料金のFIT案件に対する扱いがどのように決まっていくかについて、引き続き注視していきます。