美作市の事業用発電パネル税の審議佳境へ - 12月議会が山場か
今年の5月に、岡山県美作市で「事業用発電パネル税」(通称:パネル税)の条例案がまとめられました。その内容は、市内に設置されている太陽光パネル1㎡あたり年間50円を課税するというものです。
標準的な60セルの太陽光パネルの大きさは1.65㎡程度なので、1枚あたり82.5円の課税になります。仮に低圧過積載で70kWp程度の既稼働の発電所でシミュレーションすると、
- 発電出力(DC):70kWp
- モジュール出力:250W/枚
- モジュール枚数:280枚
- 年間課税額 :23,100円
以上のように、23,100円の課税となります。
この課税により、美作市は年間9,400万円の税収を見込んでいます。
www.sanyonews.jp
6月議会と9月議会では継続審議に
5月に美作市の課税方針が明らかになると、国の方でもその内容が問題視されるようになり、自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長である秋本真利議員が、下記のような意見を表明しました。
ここでは、美作市の事業用発電パネル税の問題点が明確に指摘されています。
- 法人事業税や固定資産税と課税標準が同じであり、二重課税である
- FIT制度が再エネ普及のために対象事業の費用等を勘案して適性利潤を決めており、追加的負担は制度の趣旨に反する
また、太陽光発電事業者連盟(ASPEn)としても事業用発電パネル税に対する反対意見書・提案書を取りまとめ、美作市長及び市議会議長宛に送付しました。
太陽光発電協会(JPEA)も反対意見を表明しています。
その後、6月議会では決議が取られる継続審議となり、9月議会でも同様に継続審議となりました。なお、9月議会の際はASPEnから全ての美作市議会議員に対して、新たに反対意見書・提案書を送付しています。
この間に、自民党の再エネ議連でも何度か議題として取り上げられました。
世界の再エネ推進の潮流に逆行する美作市の思惑は?
課税の趣旨について、上記の記事では「自然環境の保全や防災対策などに充てる方針」とされており、「新たな財源の確保と、発電所で大規模災害が発生すれば市の財政負担が懸念されることから課税が必要と判断」としています。
しかし、市内の太陽光発電所によって具体的にどのようなリスクが想定され、そのためにどの程度の予算措置を見込んでいるかなどの情報は示されておらず、自然環境の保全や防災対策のための税を、太陽光発電所だけから追加的に徴収する理由も明らかにはされていません。
これまで、美作市による課税対象の発電事業者向けの説明会も行われておらず、課税を推進している市長が表立って意見を表明する機会も見られないことから、彼らが何を目的としているのか不明確な点も多くあります。
9月議会でも継続審議となりましたが、この後に控える12月議会で市側が採決のための手を打ってくる可能性があり、その前の11月にも美作市で発電事業者による会合を開くべく準備を進めているところです。
全国への波及を阻止するために
今回の事業用発電パネル税が美作市で施行されれば、他の自治体が追随してまず岡山県内で広まり、その後に全国へと同様の課税が波及していくことが懸念されます。そして太陽光発電のみならず、「事業用発電ブレード税」や「バイオマス燃料税」などが出てくる可能性も十分にあり得ます。
再生可能エネルギーの主力電源化を目指す中で、現役世代の負担によって将来世代へ豊かなエネルギー社会を残すという視点を見失うことなく、その普及拡大の足かせとなるような制度が導入されることのないように、引き続きアクションを続けていきます。