ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

講演・メディア:『国民生活』ウェブ版の6月号に記事掲載 - 再生可能エネルギーを広めていくために

国民生活センターの発行する月刊誌『国民生活』ウェブ版の2017年6月号に、連載記事「エネルギーと消費生活」の最終回として記事を書かせていただきました。

 

国民生活_国民生活センター

  
再生可能エネルギーを広めていくために』と題して、FITスタートからの5年間を振り返る内容となっています。

FITが国民負担によって支えられる制度である一方で、海外資本の参入や輸入資源による再生可能エネルギー発電事業が増えてきており、その中で消費者がどのような意識を持ってエネルギーの選択をすべきかについてまとめさせていただきました。

上記サイトにて記事を閲覧出来ますので、是非ご覧ください。

再エネ業界ニュース:伊東市の市長がメガソーラー計画の白紙撤回を事業者に要請 - 地元の反対署名を事業者に提示

先日取り上げた、静岡県伊東市の大規模メガソーラー事業計画に対する地元の反対運動に新たな展開です。

伊東市の小野市長が、同メガソーラー事業の事業者である伊豆メガソーラーパーク合同会社を市役所に呼び、地元住民による建設計画への反対署名を示して計画の白紙撤回を求めたとのことです。

 

メガソーラー:計画の白紙撤回を 伊東市長、事業者に要請/静岡(毎日新聞)

 

6月の記者会見では、発電事業者側は地元住民による計画の白紙撤回要請に対して事業計画を継続する姿勢を示していました。

地元住民による反対運動を受けた首長によるメガソーラー事業計画の撤回要請というのは珍しく、今回の要請を受けた事業者側の対応が注目されます。

 

お知らせ:千葉エコ・エネルギー株式会社 本社移転のお知らせ

本日付で、千葉エコ・エネルギー株式会社の本社移転を行いましたので、お知らせします。新住所は下記になります。

 

【新住所】

 〒263-0022

 千葉県千葉市稲毛区弥生町2-15 西千葉浪花ビル3階

 

西千葉駅北口側のオフィスビルへの移転となり、駅から徒歩3分ほどのアクセスになりました。オフィスの窓からは千葉大学西千葉キャンパスが臨める立地です。

創業以来オフィスの移転は2回目となりますが、ついに本格的なオフィススペースへの移転!ということで、この週末も引っ越し作業が続きます...。

再エネ業界ニュース:静岡県伊東市のメガソーラー計画に反対署名運動 - 市長も白紙撤回を求める

全国各地で大規模なメガソーラーに対する自然環境や景観保護の観点からの反対運動が広がっていますが、現在進行形で進むプロジェクトに静岡県伊東市の40MW規模のメガソーラーに対する地元反対運動があります。

事業計画面積が約105ha、造成面積48.7haとされる大規模な山林開発計画となっており、計画地には伊豆高原の別荘地などが隣接していて、山を下って400mも離れたところは漁港となっています。

この開発による自然景観の破壊や、周辺別荘地への影響、海洋環境への影響など様々な問題が懸念されています。

市民による反対運動と署名活動

今回の事業計画に対しては、複数の団体が反対署名活動を行い静岡県伊東市に対して提出しています。

6月22日に市民団体から市長宛に反対署名が提出されており、同市内ではこれで3件目の署名提出ということです。

izu-np.co.jp

今年5月の選挙で就任した小野市長は、選挙戦に際して今回のメガソーラー事業に「住民同意が得られないのであれば反対」との立場を取っており、上の記事でも同様の発言をしています。

事業者側の対応

一方で、発電事業者側は6月13日に市役所で記者会見を開いており、白紙撤回の要請に対しては事業を継続する意向を示しています。

izu-np.co.jp

報道記事などから本件はFIT32円案件と見られ、40MWという規模を踏まえると発電事業者側が容易に手を引くことはなさそうに思います。

今後の展開は?

事業開発に絡み、静岡県に対する林地開発許可申請伊東市に対する宅地造成等規制法許可申請があり、その許可が下りなければ事業者は工事に着手することができません。

現在開催されている伊東市の6月議会では、太陽光発電事業による開発に対する反対決議も予定されていると言うことで、市民による反対運動を受けた行政がどのように対応していくかを含めて、今後の動向を注視していきたいと思います。

講演・メディア:信州大学松本キャンパスにて講演してきました - 現代の若者のキャリア形成

昨日、信州大学松本キャンパスにて開講されている講義「大学生から始めるキャリアデザイン」にて、講師を務めさせていただきました。

主に学部1年生を対象とした一般教養科目で、対話型の演習形式のため受講者は17名と少数でしたが、大学生向けに講義をするのはかなり久しぶりなので楽しみにして行きました。

f:id:chibaecoenergy:20170622154542j:plain

今回は、「自然エネルギーベンチャーの社長として話して欲しい」というオーダーだったので、冒頭部分では自然エネルギー業界の概要の話を入れつつ、演習形式でのワークを2つ挟んでの講義です。

ワークの1つ目は「自然エネルギーのイメージ」で、2つ目は「どうしたら自然エネルギーを地域の『しごと』にできるか」としました。

自然エネルギーのイメージはポジティブ・ネガティブを挙げて貰ったところ、1:2くらいの割合でネガティブなイメージが大きく、その内容は一般的にメディアで報じられているような、

  • 出力が不安定
  • 初期投資が高額
  • 発電効率が悪い
  • 環境を破壊することがある

といった点でした。

一番最後の「環境を破壊することがある」というのは、特に昨今大規模な太陽光発電で注目されている部分で、長野でも諏訪地方でのメガソーラー事業等が話題になっています。

これを受けて、実際にGoogle Earthのデータで山林が太陽光発電へと開発されていく画像を時系列で見せた時には、学生達が見入っていました。

FIT以前の自然エネルギーは、『環境負荷が少ないクリーンなエネルギー』という点を推して経済性が高くなくとも導入する理由があるという動機付けでしたが、現在は『環境負荷が高い自然エネルギーも増えています。

「どうしたら自然エネルギーを地域の『しごと』にできるか」では、成功事例を広めていくようなコンサルティング、市民発電事業、小さくて高効率だったりオシャレな発電機の開発など幅広い意見が出ました。

今回の講義は限られた時間だったので掘り下げきれませんでしたが、最後に今の時代の「しごと」観について少しばかり話をして講義終了です。

普段依頼のある市民向けのワークショップと違い、大学1年生を対象としたことでそのアウトプットの違い(特に2つ目のワーク)には驚かされました。

また次の機会があれば、今度は地域での自然エネルギーによる仕事作りに焦点を当てた講義をしてみたいと思います。

再エネ業界ニュース:「海上の森」のメガソーラーが是正工事完了 - 法令違反の是正等を実施

愛知県瀬戸市にある「海上の森」に隣接して建設され、複数の法令に対する無許可・無届けでの事業がメディアで取り上げられたメガソーラーの是正工事が完了したと、日経テクノロジーonlineでレポートされていました。

techon.nikkeibp.co.jp

海上の森」は、愛知万博の会場候補地になったものの市民運動によって候補地撤回が決まり、現在は「愛知万博記念の森」として保全が図られています。

そこに隣接する形で建設されたこのメガソーラーは、2016年2月に「市の土地利用調整条例による中止勧告を無視した建設工事」などと報じられました。

techon.nikkeibp.co.jp

折しもFITによる太陽光発電所の急増によって自然環境や景観破壊への社会的関心が集まりつつあった時期に、万博記念の森に隣接しているという立地や、遺跡の破壊など4つの法令違反(無許可・無届け)が重なっていたことで、全国的に大きく取り上げられ注目していた案件です。

最終的には、発電事業者側が行政指導を受け入れてパネルの撤去を含む是正工事に応じた形に落ち着いたようですが、同じような事例は全国各地で生じているのではと考えています。

今回は立地によって社会的な関心を集めたこともあり、事業者側も対応に動いたことが推測されますが、住民による反対運動や行政による懸念を受けても工事を強行する事例が引き続き起きていることから、国内の太陽光発電事業を巡るトラブルはまだまだ終息しそうにはありません。

ソーラーシェアリング:株式会社エコ・マイファームを設立 - 自然エネルギー×農業を推進するJV

この度、千葉エコ・エネルギー株式会社株式会社マイファームと共にJV「株式会社エコ・マイファーム」を設立いたしましたので、ご報告いたします。

JV設立のターゲット

今回のJV設立は、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電が急速な広まりを見せる中で、ソーラーシェアリングが目指す自然エネルギー×農業のコラボレーションによる農業振興という特長により焦点を当てています。

自然エネルギーによる地域振興を目指す千葉エコ・エネルギーと、耕作放棄地の解消を目指すマイファームの知見を組み合わせることで、安定した営農並びに自然エネルギー発電事業の実現をサポートしていきます。

詳細は下記のリリースをご覧ください。

www.chiba-eco.co.jp

今回のJV設立で何が変わるか?

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の目的は、農地の上に自然エネルギー発電設備を設置し、その収益で農業者の所得向上を図り安定した営農の実現を支えていくことにあります。

 

f:id:chibaecoenergy:20170524093019j:plain

 

わが国の農業が抱える問題は農家所得の低迷、後継者の不足、専業農家の減少、農地集約の地帯、新規参入者の農地確保の難しさなど多岐に亘っていますが、都市部を除く多くの市町村では基幹産業が農業であり、農業の衰退は直ちに地域の衰退に繋がります。

一方で、ソーラーシェアリングが農業者の所得向上を図ると言っても、太陽光発電事業に取り組むためには専門的な知識が求められますし、耕作放棄地などを利用して発電事業に取り組みたいとなっても、長期に亘る安定した営農体制を確立することもまた相当の知見が必要となります。

今回設立したエコ・マイファームでは、自然エネルギーと農業の両方の視点で豊富な知見と経験を有する両社がジョイントすることにより、今までわが国になかった事業化支援サービスを提供すると共に、ソーラーシェアリングの更なる普及に大きな役割を果たしていきます。

再エネ業界ニュース:再生可能エネルギー産業の雇用者が更に増加 - 全世界で1000万人に迫る

国内の太陽光発電業界では企業倒産が相次いでいることが報じられていますが、世界的には再生可能エネルギー産業の雇用者が増加傾向にあるようです。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が毎年取りまとめているレポートの中で、2016年には全世界で980万人以上が再生可能エネルギー産業で雇用されていると報告されました。

なお、この数値には大規模な水力発電事業による雇用*1が含まれており、それらを除いた場合には830万人になるとのことです。

 

Renewable Energy Employs 9.8 million People Worldwide, New IRENA Report Finds

 

世界的な雇用者数の増加傾向

IRENAが調査を開始した2012年時点では700万人以上だった雇用者数は、この4年間で40%増加したことになり、特に太陽光発電風力発電産業では倍増しているとのこと。

エネルギー種別では、これまでバイオマス産業が最も多くの雇用者を抱えていましたが、2016年には太陽光発電が抜き去って雇用者数がトップになっています。

日本では太陽光発電産業が縮小

同レポートによると日本国内の再生可能エネルギー産業の雇用者は31.3万人となっており、2015年をピークに太陽光発電のブームが過ぎ去り、2016年には65社が倒産したことにも触れられています。

この視点から見ると、2014年にわが国の太陽光発電産業の雇用者数はピークアウトしており、2016年には同年比20%の雇用減少が起きているとしていますが、その点は国内でも報じられている企業倒産のニュースとリンクしていると言えるでしょう。

今後の見通しは?

IRENAは、世界的には2030年に向けて2,400万人が再生可能エネルギー産業に従事することになるとしており、引き続き各国で再生可能エネルギーの普及が進むと同時に産業としても成長していくと見込んでいます。

一方で、わが国では太陽光バブルによる急激な雇用増加が落ち着いてくる中で、FITを前提とした国内産業としての再生可能エネルギー産業に対する従事者が急増していくのかどうかは未知数です。

どうしても建設業や電気工事業など従来の産業に付随する形での成長になってきたため、それを専業とするような産業になり得るかどうかが、FIT5年目を迎え今後の再生可能エネルギーの定着を考えていく中で重要なトピックになってくるでしょう。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)のように農業と密接な関係を有する設備の増加なども、鍵となってくるかも知れません。

*1:大型のダム開発を伴う小水力発電は厳密には再生可能エネルギーと定義されない

ソーラーシェアリング:南相馬市で11.3MWの大規模ソーラーシェアリング計画 - 作物はミョウガ

福島県南相馬市小高区で、11.3MWの大規模ソーラーシェアリング事業が進められていると報じられているのを目にしました。

まだ建設途中のようですが、完成すれば営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備としては国内トップ10に入る規模になります。

www.minyu-net.com

18.5haの敷地に出力11.3MWということですが、それだと72セルモジュールで計算しても遮光率は30%台にとどまるため、写真の設備と合致しない&ミョウガを選ぶ必要がないことから、おそらくDC容量はさらに大きいのではと推測されます。

また、ミョウガの収量は10aあたり500kgが一つの目安になりますが、18.5haだと年間90t程度の生産量になります。

農水省の統計によると、都道府県別のミョウガ生産量は高知県を筆頭にした上位4県のみが年間100t以上の収穫量なので、今回の事業が軌道に乗ると一気に福島県ミョウガ収穫量全国5位に躍り出る規模です。

果たしてこれだけの規模のミョウガを露地物として安定的に生産・販売出来るのかどうかが、非常に気になるところではあります。

補足情報

農林水産省の『地域特産野菜生産状況調査』によると、平成26年度の調査で福島県の花みょうが作付面積は4haにとどまり、今回の18.5haという面積は群馬県での全作付面積に相当します。なお、同年度の群馬県の花みょうが収穫量は92tで出荷量は89tです。

風力発電:JR東日本の風力発電事業計画に対する環境大臣意見 - 山間の集落への影響懸念

JR東日本の子会社が福島県いわき市で計画している風力発電事業に対して、計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見書が経済産業大臣宛に提出されました。

www.env.go.jp

今回の事業計画地はいわき市三和町とのことですが、計画地の周辺は山間部に棚田や集落が広がり、「新田の大山桜」と呼ばれる樹齢400年以上のヤマザクラを中心に桜が群生しているエリアもあります。

中山間地の風力発電事業の場合、生態系への影響だけでなく近隣住民の住環境に与える影響(騒音、影、工事中の車両通行など)があり、今回の場合には自然景観に対する影響も大きくなることが懸念されます。

そういった環境への事業が与える影響に対する懸念を含めた形で、環境大臣意見が提出されており、中山間地の景観保全も含めて今後JR東日本がどのような環境配慮対応を図るのか注目していきます。