ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:九州電力の売電契約中断検討というニュースの影響は?

先週末に新聞各紙が取り上げて以降、業界を騒がせている九州電力による固定価格買取制度に基づく売電契約の中断検討」というニュースですが、ちらほらと続報が出てきています。なお、20日の時点で九州電力は報道内容が公式発表ではない旨のリリースを出しています。

九州電力 9月20日付「九電再生エネ契約中断」等に関する報道について

 

その後、毎日・読売・日経・朝日と主要紙が次々と今回のニュースを報じており、各社の記事で微妙にニュアンスが違う(契約の中断だったり保留だったり)ところが気になります。

また、今回のニュースを早い段階で報じていた毎日新聞ですが22日になって続報が出ています。


九州電力:FIT売電契約中断検討 広がる波紋 - 毎日新聞

 

記事中では、福岡市に本社を置いて太陽光発電事業を展開している株式会社サニックスの広報担当のコメントが載っていますが、同社の株価は22日に-5.92%と大幅に下落しています。九州電力に関する報道の影響があったのだと推測されますが、今回の措置が実際に取られることになれば九州で太陽光発電事業を展開する企業は大きな影響を受けることになるでしょう。

更に、各地で現在太陽光を始めとする自然エネルギーの導入検討を行っている企業や自治体への影響も避けられません。固定価格買取制度を利用した発電事業を実施するには、小規模なものであっても半年~1年は見据えて事業を組み立てていくことになります。そうなると、事業計画を立てている最中に系統連系の申込中断となれば梯子を外される可能性もあるわけです。自治体の自然エネルギー導入計画も各地で見直しを迫られることになります。

 九州地方は固定価格買取制度が導入されてからと言うもの太陽光発電事業の激戦区になっていましたから、今回報道のような事態は遠からず想定されていたように思います。下の図は九州電力の「九州電力管内における発電機連系制約マップ(110kV以下の系統への連系)(平成26年7月25日更新)」からの引用です。 

 

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これは九州における送電線及び変電所などの「熱容量」を示したマップです。簡単に言うと新たに発電設備からの電気を受け入れることが出来る「空き容量」を図示したもので、色がついている部分はその空きが少なくなってきている地域です。

凡例に説明がありますが、ピンク・黄・オレンジになっている地域では自然エネルギー発電設備の系統連系が極めて困難か、対策のために大規模な送電網の設備改修(膨大な費用と時間を要します)が必要となります。

このように九州地方では広い範囲で連系制約が顕在化してきており、また各地の発電事業計画の進捗によって常に状況が変動するため、一度新規の売電契約を全て停止して状況を整理し対策を立てる時間を稼ぐということは十分に考えられます。

 

まだ九州電力から今回報道のような措置を取るという発表があったわけではありませんが、今後の動向には引き続き注目していく必要があります。