ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

固定価格買取制度:出力抑制(出力制御)拡大は「全量買取」の方針転換なのか(1)

固定価格買取制度(FIT)の運用見直しに関する経済産業省令が公布され、明日26日から施行されることとなりました。

私の所にも、省令改正に伴う設備認定の運用見直しや出力抑制措置についての相談が増えてきましたので、改めて今後の制度の見通しや政府の方針についてまとめてみます。

 

今後、再生可能エネルギー発電事業者にとって特に影響が大きいのは、太陽光発電及び風力発電を対象とした出力抑制(出力制御)の拡大です。これまでは出力500kW以上の太陽光発電風力発電設備に対して、年間30日以内の無補償の出力抑制を実施することができると経済産業省令で定められていましたが、今回の省令改正により対象となる設備の規模拡大と出力抑制時間の拡大が図られることになります。

10kW未満の住宅用太陽光発電設備以外は、再生可能エネルギー発電設備によって供給される電気を電力会社が「全量」買取ることが固定価格買取制度の大きな特徴ですが、この出力抑制が行われれば年間売電量の減少を見込まなければなりません。

制度導入からしばらくは、出力抑制が実施されるというような状況が想定されていなかったからか、上記の規定はあるものの各事業者がそこまで深刻に抑制措置の実施を受け止め、事業計画には反映していなかったように思います。また、政府側も電力会社に対して具体的に出力抑制が必要となる条件の検討及び公表を求めていませんでした。

しかし、北海道電力沖縄電力管内で太陽光発電設備の系統連系制約が明らかになり、昨年のいわゆる「九電ショック」を経て出力抑制の実施が現実的なものとなってきています。新エネルギー小委員会の系統ワーキンググループに、各電力会社から需要条件に基づく年間の出力抑制の想定日数が提示されたことで、実感を伴う数字が現れることになりました。

出力抑制の実施に必要な要件は、経済産業省令(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則)で以下のように規定されています。(今回の省令改正前)

  1. 当該接続請求電気事業者が所有する発電設備(太陽光発電設備、風力発電設備、原子力発電設備、水力発電設備(揚水式発電設備を除く。)及び地熱発電設備を除く。以下この(1)において同じ)及び接続請求電気事業者が調達している電気の発電設備の出力の抑制(安定供給上支障がのあると判断される限度まで行われる出力の抑制をいう。)、並びに水力発電設備(揚水式発電設備に限る。)の揚水運転
  2. 当該接続請求電気事業者の電気の供給量がその需要量を上回ることが見込まれる場合における当該上回ることが見込まれる量の電気の取引の申込み

1は電力会社自身が保有している発電設備(火力発電所)の出力抑制と揚水発電所の運転、2は需要を上回ると見込まれる電気の売電先確保です。この2つの措置を講じても電力供給が需要を上回る場合には、再生可能エネルギー発電事業者に対する出力抑制を行うことになります。

 

(2)へ続きます。