再エネ業界ニュース:東証のインフラファンド市場に第2号のファンドが上場 - いちごグループ
東京証券取引所が開設しているインフラファンド市場に、10月24日付で「いちごグリーンインフラ投資法人」の上場が承認されました。
国内第2号となるメガソーラーの上場インフラファンド
タカラレーベン・インフラ投資法人に次ぐ第2号の上場となり、投資口数は5万180口(出資総額:50億1,800万円)になるということです。
同ファンドはメガソーラーへの投資を対象としており、上場時点では13案件・25.8MWの太陽光発電所を投資資産として保有、ファンドへの資産譲渡総額は100.1億円と公表されています。
FIT価格は40円案件が9件を占めており、また全案件のうち7件が北海道の発電所であるほか、最も大きい発電所として沖縄県名護市に所在する8.44MWの設備が唯一の特高案件となっています。
今後も続くインフラファンドの上場
同様のメガソーラーを対象としたファンドは、他にネクストエナジー・アンド・リソース社が年明けの上場申請を準備していると報じられており、また既存の各ファンドも資産規模を増やしていくことが示唆されています。
一方で、メガソーラーはこれまで国内での長期運用実績がほとんどなく、FITがあるとは言えこれらのファンドがどれだけの運用成績を上げていけるのかは予想できません。
各投資会社などが個別にメガソーラーへの投資ファンドを組成している事例は複数ありますが、今後このようなインフラファンドの上場が増えてくるのかどうか、それが再生可能エネルギーの普及と社会への定着にどういった意味を持つのかは、引き続き考えていく必要があります。
固定価格買取制度:平成28年6月末時点の設備認定情報が公表 - FITスタートから丸4年
資源エネルギー庁が継続的に公開している固定価格買取制度(FIT)の設備認定量や導入量データについて、平成28年6月末時点の情報が公表されました。
固定価格買取制度のスタートから丸4年目の成果ということになります。
固定価格買取制度の導入から4年 その成果
固定価格買取制度の開始から4年で、新たに導入された再生可能エネルギー発電設備は合計3,047万kW、認定設備容量は8,739万kWとなりました。
資源エネルギー庁の電力調査統計では、平成28年6月末時点で国内に2億7,000万kWの発電設備があることから、現在の国内にある発電設備の11.28%は固定価格買取制度で導入された再生可能エネルギー発電設備ということになります。
電源の比率としては引き続き太陽光発電が圧倒的多数であり、導入容量の95.57%が住宅用及び非住宅用の太陽光発電設備です。
一方で、風力発電やバイオマス発電の認定容量も増え続けており、設備利用率の差から買取電力量ベースでは33%が太陽光発電以外の電源となっています。
再生可能エネルギーの今後
この4年間で再生可能エネルギーのマーケットは大きく様変わりしましたが、着実に再生可能エネルギーが国内で普及してきているのは事実です。
既に太陽光発電事業で顕在化していますが、急速に増加した発電設備を適切な維持管理によって長期に亘る社会インフラとして維持していくことも、今後重要となっていきます。
固定価格買取制度が5年目に突入し、太陽光発電以外の電源をどう増やしていくか、また地域に定着した再生可能エネルギーとは、新たなエネルギー事業を軸にしたまちづくりとは、といったテーマも議論されるようになってきました。
ソーラーシェアリングを始めとした、同じ自然の恵みを活かすものである農業と再生可能エネルギーの連携もあります。
今後は、社会への再生可能エネルギーの定着をより一層進めていくという、新たなフェーズへと入っていくことになるでしょう。
電力小売自由化:再生可能エネルギーの融通で広がる地方自治体の連携 - 福岡県みやま市と大分県豊後大野市
FITの導入以降、 地方自治体による再生可能エネルギー発電事業が拡大してきました。
その発電設備を利用した新電力の設立も少しずつ増えてきた中で、その先駆者である福岡県みやま市(みやまスマートエネルギー)が大分県豊後大野市と再生可能エネルギーの普及などを目指した連携協定を結んだことが報じられています。
再生可能エネルギー利用では、様々な地域に賦存する自然資源からエネルギーを生産していくことになりますが、市町村という人工的な線引きの中では資源量や種類に偏りが出てきます。
それを、地域間連携によって相互補完できるようになれば、単独の自治体だけでは取り組めない、あるいは取り組む動機付けが低い状況を打開することができます。
今後、再生可能エネルギー事業に意欲的な自治体を中心に、さらに近隣の自治体を巻き込むような形で同様の連携が広まっていくべきと考えます。
電力自由化:経済産業省が廃炉費用の新電力負担に関する議論に着手
電力自由化が進む中で、経済産業省が原子力発電所の廃炉費用の負担を巡り、新電力への負担を含めた検討を始めました。
廃炉費 経産省が議論着手 新電力、反発 電力大手「相応の負担を」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160928/ddm/002/010/125000c
この議論は、新たに設置された「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」で議論されることとなっており、「廃炉会計制度の在り方」として第1回会合で検討事項として提示されています。
下記が、同小委員会の配付資料からの抜粋となります。
2015年3月の「電気料金審査専門小委員会廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ」で提示された案が出されており、ここでは廃炉費用の費用負担について「広く薄く全需要家が負担することが適切」という意見と、「制度を適用した事業者から電力の供給を受けない需要家に負担を求めるべきではない」という意見があったとしています。
(出所)経済産業省 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 第1回配付資料より
今回の小委員会では、前者の「広く薄く全需要家が負担する」ことを前提として、新電力が送電網を利用する際の託送料金に上乗せして徴収することが提案されています。
その中で、上記資料の最下段にも記載されていますが、原子力発電による電気を市場に拠出することがセットとなるため、既に各所で議論になっている「非化石価値取引市場」の設置が併せて検討事項④としてあげられています。
この小委員会での議論は年内にも中間取り纏めが行われることとなっていますが、電力自由化によって消費者の選択肢が増えていく中で、原子力をどのように扱っていくのかについての方向性が決まっていく重要な時期に差し掛かったと言えるでしょう。
ソーラーシェアリング:ドイツでソーラーシェアリングの実証試験開始 - Agrophotovoltaik
再エネ業界ニュース:2020年にかけての再生可能エネルギー市場規模の動向 - 富士経済が調査レポートを公表
わが国における再生可能エネルギー市場の2020年にかけての動向・推移について、(株)富士経済が「FIT・再生可能エネルギー発電関連システム・サービス市場/参入企業実態調査 2016」とするレポートを取りまとめ、そのサマリーが公開されています。
新サービスの開発や海外事例の取り入れなど「ポストFIT」市場への対応が進む再生可能エネルギー発電システムの国内市場を調査(富士経済)
市場規模全体としては、下記のように今後5年間で50%程度まで縮小するとしていますが、その大きな要因は太陽光発電システムのマーケット縮小(2020年度は2015年度比で1/3程度)によるものと分析されています。
- 2016年度:3兆3,065億円
- 2020年度:1兆7,124億円
また、2016年度から2017年度にかけてはバイオマス発電システムが大きな伸びを見せますが、こちらも2018年度以降は急速に縮小していくという推計です。
これは、バイオマス発電システムの場合は燃料として確保できる資源量にキャップがあるため、今後数年間の計画で経済的に確保できる資源がほぼ囲い込まれてしまう可能性があると推定されます。
大幅な拡大が見込まれるのは洋上を含めた風力発電システムのみで、中小水力発電も2017年度がピークになると推計しています。
本調査には熱利用が含まれていませんが、やはりFIT導入による再生可能エネルギー市場拡大のインパクトは大きく、現在の普及期を経て徐々に定常化していくという流れが最も確実な見通しなのではないかと考えられます。
太陽光発電事業:茨城県が「太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドライン」を策定
事業用太陽光発電設備の導入量が全国トップ水準となり、また昨年は常総市で鬼怒川氾濫と太陽光発電所の関連性が取り沙汰された茨城県が、「太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドライン」を策定し10月1日から施行すると発表しました。
太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドラインの策定について/茨城県
対象となる発電設備は出力50kW以上で、分割案件も合計50kWを上回る場合には本ガイドラインの適用対象となります。
ガイドライン中では、この策定の背景を下記のように述べています。
太陽光発電施設については,施設の設置・運営そのものに関する法令,基準等がなく,また,自治体や住民に知らされないまま工事が進められるなどにより,景観や生活環境の問題,土砂流出などの安全に対する不安等から,県内各地域で住民と事業者との間でトラブルとなる事案が発生しています。
このような背景を踏まえ、また平成29年4月からの改正FIT法における太陽光発電所の維持管理の義務化も見据えた対応となるようです。
本ガイドラインでは、大きく下記の4項目が規定されています。
- 設置するのに適当でないエリア
- 施設の適正な設置
- 施設設置後の適正な維持管理等
- 市町村及び県の役割
ガイドラインの末尾には『太陽光発電施設設置に係る関連法令(土地利用・環境等)』もまとめられており、どの市町村で適用されるか、相談先はどこになるか等も整理されています。
太陽光発電設備が次々と建設されていく中で、長期安定したエネルギー供給源として運用するためにも、導入段階からの適切な地元協議、法令遵守、維持管理などが必要となります。
これまでは各市町村が個別に条例などで対応していた側面がありましたが、今後はこのように都道府県単位でのガイドライン制定が増えていくことが期待されます。
電力自由化・発送電分離:FIT送配電買取制度への移行と計画値同時同量制度の特例維持
今年5月に成立した改正FIT法の中で、再生可能エネルギー発電事業者からの電気の買取義務者が小売電事業者から送配電事業者に変更されました。
これによって、FITを利用する発電事業者から供給される電気は、下記のような流れで市場に流通することになります。
(出所) 経済産業省 電力基本政策小委員会(第8回)配付資料
送配電事業者が卸電力取引市場を通じて小売電気事業者に電気を引き渡すことを原則とし、発電事業者と小」売事業者の双方に個別の契約がある場合には送配電事業者から直接電気が引き渡されます。
この仕組みの中で、電気事業においては「計画値同時同量制度」との整合性を図る必要があります。
「計画値同時同量制度」とは、電気が作られると瞬時に消費されていくという性質から、常に供給量と需要量がバランスするように調整する仕組みです。
通常は、発電事業者がこの計画値以上に発電した電気については、送配電事業者が「インバランス価格」で買い取ることとなっており、逆に計画値を下回る場合には発電事業者が「インバランス費用」を支払って不足分の電気を補います。
FITの対象となっている再生可能エネルギー発電事業については、制度上発電した電気の全量の買取が補償されてるため、特例措置によってこの「インバランス」についての負担の例外となっていました。
従来の小売電気事業者による買取の際は、実際に需要との間で生じる電気の過不足は小売電気事業者が調整してきましたが、改正FIT法で送配電事業者が買い取って卸電力取引市場に流通させた場合、この特例措置を維持するためにインバランス調整の負担を誰が担うかが議論となっています。
再エネ業界ニュース:高知県四万十市 メガソーラーの建設計画を条例に基づき不許可
高知県四万十市が、四万十川に面した土地に計画されていたメガソーラーに対して、四万十川条例に基づく建設計画の不許可を通知したと報じられています。
発電事業を計画していた事業者は、市に対する建設計画を取り下げたとのことです。
高知県四万十市のメガソーラー建設計画を市不許可 一度白紙に|高知新聞
四万十川の環境・景観の保全については、県や市が様々な条例を定めています。
なお、事業者側は計画を見直して建設計画の再提出を検討するとのことです。
高知県内では他に、土佐清水市におけるメガソーラー計画が地元住民の反対運動を受けて計画中止になっています。
再生可能エネルギーの普及が自然環境や景観の保全に影響を与えないようにする取り組みが、地域レベルで進んでいるとも言えそうです。