太陽光発電事業:茨城県が「太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドライン」を策定
事業用太陽光発電設備の導入量が全国トップ水準となり、また昨年は常総市で鬼怒川氾濫と太陽光発電所の関連性が取り沙汰された茨城県が、「太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドライン」を策定し10月1日から施行すると発表しました。
太陽光発電施設を適正に設置・管理するためのガイドラインの策定について/茨城県
対象となる発電設備は出力50kW以上で、分割案件も合計50kWを上回る場合には本ガイドラインの適用対象となります。
ガイドライン中では、この策定の背景を下記のように述べています。
太陽光発電施設については,施設の設置・運営そのものに関する法令,基準等がなく,また,自治体や住民に知らされないまま工事が進められるなどにより,景観や生活環境の問題,土砂流出などの安全に対する不安等から,県内各地域で住民と事業者との間でトラブルとなる事案が発生しています。
このような背景を踏まえ、また平成29年4月からの改正FIT法における太陽光発電所の維持管理の義務化も見据えた対応となるようです。
本ガイドラインでは、大きく下記の4項目が規定されています。
- 設置するのに適当でないエリア
- 施設の適正な設置
- 施設設置後の適正な維持管理等
- 市町村及び県の役割
ガイドラインの末尾には『太陽光発電施設設置に係る関連法令(土地利用・環境等)』もまとめられており、どの市町村で適用されるか、相談先はどこになるか等も整理されています。
太陽光発電設備が次々と建設されていく中で、長期安定したエネルギー供給源として運用するためにも、導入段階からの適切な地元協議、法令遵守、維持管理などが必要となります。
これまでは各市町村が個別に条例などで対応していた側面がありましたが、今後はこのように都道府県単位でのガイドライン制定が増えていくことが期待されます。
電力自由化・発送電分離:FIT送配電買取制度への移行と計画値同時同量制度の特例維持
今年5月に成立した改正FIT法の中で、再生可能エネルギー発電事業者からの電気の買取義務者が小売電事業者から送配電事業者に変更されました。
これによって、FITを利用する発電事業者から供給される電気は、下記のような流れで市場に流通することになります。
(出所) 経済産業省 電力基本政策小委員会(第8回)配付資料
送配電事業者が卸電力取引市場を通じて小売電気事業者に電気を引き渡すことを原則とし、発電事業者と小」売事業者の双方に個別の契約がある場合には送配電事業者から直接電気が引き渡されます。
この仕組みの中で、電気事業においては「計画値同時同量制度」との整合性を図る必要があります。
「計画値同時同量制度」とは、電気が作られると瞬時に消費されていくという性質から、常に供給量と需要量がバランスするように調整する仕組みです。
通常は、発電事業者がこの計画値以上に発電した電気については、送配電事業者が「インバランス価格」で買い取ることとなっており、逆に計画値を下回る場合には発電事業者が「インバランス費用」を支払って不足分の電気を補います。
FITの対象となっている再生可能エネルギー発電事業については、制度上発電した電気の全量の買取が補償されてるため、特例措置によってこの「インバランス」についての負担の例外となっていました。
従来の小売電気事業者による買取の際は、実際に需要との間で生じる電気の過不足は小売電気事業者が調整してきましたが、改正FIT法で送配電事業者が買い取って卸電力取引市場に流通させた場合、この特例措置を維持するためにインバランス調整の負担を誰が担うかが議論となっています。
再エネ業界ニュース:高知県四万十市 メガソーラーの建設計画を条例に基づき不許可
高知県四万十市が、四万十川に面した土地に計画されていたメガソーラーに対して、四万十川条例に基づく建設計画の不許可を通知したと報じられています。
発電事業を計画していた事業者は、市に対する建設計画を取り下げたとのことです。
高知県四万十市のメガソーラー建設計画を市不許可 一度白紙に|高知新聞
四万十川の環境・景観の保全については、県や市が様々な条例を定めています。
なお、事業者側は計画を見直して建設計画の再提出を検討するとのことです。
高知県内では他に、土佐清水市におけるメガソーラー計画が地元住民の反対運動を受けて計画中止になっています。
再生可能エネルギーの普及が自然環境や景観の保全に影響を与えないようにする取り組みが、地域レベルで進んでいるとも言えそうです。
ソーラーシェアリング:台風9号直撃時の匝瑳1号機の様子 - スマートターンの効果検証
先週22日に千葉県へ台風9号が上陸し、各地で大きな被害が発生しました。
その日は匝瑳市に居たため、自社ソーラーシェアリングである匝瑳sola share 1号機の様子を度々確認していました。
同機は、いわゆる一軸追尾型システムとなる太陽同期可変式システム「スマートターン®」を採用しており、これによって台風襲来時は太陽光パネルの角度をフラットにして風の影響を軽減します。
実際に当日撮影した写真が下記です。
動画も複数撮影していますが、気象庁のアメダスでは近隣の観測地点で最大瞬間風速30m以上を観測し、人が立っていることも困難な風の中で、同機の太陽光パネルはほとんど風に動じてはいませんでした。
台風通過後のシステム再稼働でも異常は見受けられず、初の台風直撃を無事にやり過ごすことが出来て安堵しています。
更に明日には台風10号の接近が控えており、再び気の抜けない状況となりそうです。
太陽光発電事業:JETによる太陽光発電システムのO&M認証事業がスタート
以前、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)が「太陽光発電システムの定期点検及び不具合調査に関するガイドラインについての報告書」を取りまとめたことを本ブログでも取り上げましたが、8月1日より同ガイドラインを活用した『JET太陽光発電システム保守点検認証事業(JET PV O&M認証)』がスタートしました。
What's New JET PV O&M認証を開始いたしました(2016.08.04) | 一般財団法人 電気安全環境研究所
この認証事業では、保守点検(O&M)において作成された報告書が同ガイドラインに適合することについて認証を行うとしています。
更に、保守点検業者及び保守点検技術者に対しては、この認証を受けられるかどうかの事前確認を行い登録するものとしています。
なお、上記登録並びに認証を受けた事業者・技術者・報告書にはJETの認証マークの使用が認められると言うことです。
FITによって国内に太陽光発電所が急増する中で、長期的な電源としての性能を確保する目的の制度と理解されますが、ガイドライン中では使用する機器等についても詳細な定めがあり、認証を受けるためには相応の準備が必要になりそうです。
今後、この認証がどの程度普及していくのか、普及によって太陽光発電所の適正な維持管理が図られていくのかが重要と考えます。。
再エネ業界ニュース:エナリスが東証マザーズ監理銘柄入りからのKDDIとの資本・業務提携発表へ
一昨年から不適切な会計処理問題などが取り沙汰されてきたエナリスですが、7/29付で株式上場している東証マザーズから監理銘柄(審査中)に指定されていました。
同日に提出される内部管理体制確認書の内容次第では、上場廃止のおそれありと各所で報じられていたところです。
その危機的状況が一転したのが、8/10にKDDIが出したエナリスとの資本・業務提携のリリースでした。
同日付でKDDIとエナリスが資本・業務提携契約したとの内容であり、KDDIがエナリスの株式の30.08%を取得すると言う内容です。
KDDIは電力小売自由化に伴って「auでんき」を展開していますが、エナリスとの提携によってエネルギーサービスの拡大を図るという意図でしょうか。
公表されたリリースでは、「通信サービスと電気サービスを融合した新たな価値提供等に取り組んでいきます」としています。
各所が意表を突かれた今回の業務提携、今後どのような流れを辿っていくのでしょうか。
電力小売自由化:4月の小売全面自由化以降のシステム不具合等の状況
電力の小売全面自由化後、東京電力管内におけるスマートメーター設置遅延や、新電力の発電・需要計画の不備、広域機関のシステムトラブルによる地域間連系線の利用制約など様々な問題が発生してきました。
改めて、経済産業省の電力基本政策小委員会に下記のような情報が提示されていたので、どんなことが起きていた(いる)のか見ていきます。
(出所)経済産業省 電力基本政策小委員会 第7回配付資料
一番上に挙げられているスマートメーターの設置遅延は一般にも報道されていましたが、それ以外にもこの報告資料だけで6つのトラブルが生じています。
東京電力の送配電(パワーグリッド社)及び小売(エナジーパートナー社)のトラブルが目立つほか、全国の電力需給計画や送電網利用等を管理する広域機関のシステムトラブルも多くなっています。
④の卸電力取引所におけるシステムトラブルでは、地域を越えた送電ができなくなることで、小売事業者が発電事業者から電気を調達できなくなるという事態を招きました。
各々のトラブルは段階的に解消されつつありますが、電力取引の活発化や新電力に切り替える消費者が増加していくことなどにより、新たなトラブルが発生する懸念もあります。
新制度への移行期とは言え、社会の根幹を担う電力インフラシステムでこういった混乱が頻発した理由は、今後詳細に検証されるべきです。
固定価格買取制度:改正FIT法省令及び改正価格告示が公布 - 新認定制度で何が変わる?
資源エネルギー庁より、 改正FIT法の施行に伴う改正FIT法省令及び改正価格告示の2つが公表されました。
改正FIT法省令及び改正価格告示が公布されました (なっとく!再生可能エネルギー)
今回の改正では太陽光発電設備を対象とした設備認定制度が大きく変更になるため、個別に「よくある質問」も公開されています。
改正FIT法に関するよくある質問 (なっとく!再生可能エネルギー)
今回の改正では様々な変更が行われますが、まずは新認定制度における認定基準のうち「再生可能エネルギー発電事業の内容についての基準」から整理します。
- 再生可能エネルギー発電事業計画が明確に定められていること
- 特段の理由がないのに一の場所において複数の再生可能エネルギー発電設備を設置しようとするものでないこと
- 発電設備を適切に保守点検及び維持管理するための体制を整備し、実施するものであること
- 送配電事業者から出力制御その他の協力を求められたときには、協力すること
- 外部から見やすいように、事業者情報について記載した標識を掲示すること(20kW未満の太陽光発電を除く)
- 再生可能エネルギー発電事業の開始に係る情報を経済産業大臣に提供すること
- 再生可能エネルギー発電事業の実施に係る情報を経済産業大臣に提供すること
- 再生可能エネルギー発電事業を廃止する際の発電設備の取扱いに関する計画が適切であること
- 10kW以上の太陽光発電(第7条の規定により実施する入札の対象となる場合は除く。)については、認定取得から3年以内に運転開始を行うことができる計画であること。ただし、調達価格等算定委員会の意見を聴いて経済産業大臣が定める方法で変更される調達価格又は調達期間により再生可能エネルギー発電事業を行う場合はこの限りでない
- 10kW未満の太陽光発電については、認定取得後速やかに運転開始を行う計画
であること - バイオマス発電については、
①バイオマス比率を毎月1回以上定期的に算定し、記録すること、
②燃料の調達により、当該燃料を用いる他産業に著しい影響を与えないこと、
③安定的な燃料調達が可能であると見込まれること - 地熱発電については、発電開始前から継続的に地熱資源の性状及び量の把握(モ
ニタリング)を実施するなど、継続的かつ安定的な発電を行うために必要な措置を講ずるものであること - (11) (12)のほか発電設備の種類に応じて適切に事業を実施すること
- 再生可能エネルギー発電事業を営むに当たって、関係法令(条例を含む。)の規定を遵守するものであること
以上14項目、多いです。
特に赤字の部分が今回の改正で新しく追加・強化された内容です。
FIT法に基づく設備認定が、「再生可能エネルギー発電設備に対する認定」から、「再生可能エネルギー発電事業に対する認定」へと変わるため、 事業の中身に関する事項が増えています。
発電設備の維持管理や廃棄まで含めた計画の作成や発電事業者の情報の標示など、特に太陽光発電事業で長期安定稼働や地域のトラブルの原因となっていた事項を減らす対応のほか、バイオマス発電における他産業への影響の回避や安定的な燃料調達も、ここしばらく起きている問題へ対処するものとなっています。
関係法令の遵守も、必要な許認可を得ていない違法開発が問題視されていることへの対応として、既に設備認定申請時にチェックリストの提出が義務付けられていますが、それを更に強化していく方向になりそうです。
既に設備認定を取得しており、発電所の運転を開始している、あるいは電力会社と接続契約を締結している事業者も「みなし認定事業者」という扱いになり、平成29年4月1日の新認定制度開始から6ヵ月以内に、上記に挙げた項目に対応する必要な書類を提出することになります。
今回はここで一旦区切り、次回は発電設備に関する基準などを整理していきます。
固定価格買取制度:九州電力が優先給電のルールを公表 - 再エネ発電設備の出力抑制順が明らかに
九州電力管内の種子島などを中心に、再生可能エネルギー発電設備に対する出力抑制(出力制御)が実施されてきましたが、今年4月の電力自由化による一般送配電事業者の出力抑制対応のための優先給電ルールが公表されました。
九州電力 九州本土における再生可能エネルギーの導入状況と優先給電ルールについて
種子島の出力抑制では、太陽光発電及び風力発電の抑制手法が注目されました。
また、水力発電や地熱発電、原子力発電への抑制がどのようになるのかも曖昧な部分がありましたが、今後の出力抑制の実施に際しては、以下の順番で行うとのことです。
(出所)九州電力 優先給電ルールの考え方について
簡単に整理していくと、出力抑制が必要になった場合の対応手順は
- 揚水発電所を揚水運転(電力を消費して水をくみ上げ)させる。
- 火力発電所の出力を抑制する。
- 九州地域の外に送電する。
- バイオマス発電所の出力を抑制する。(地域資源バイオマスには例外あり)
- 太陽光発電所及び風力発電所の出力を抑制する。
- それでも足りない場合は、他地域の一般送配電事業者などと協力した調整。
- 最後に、原子力発電所・水力発電所・地熱発電所の出力を抑制する。
という形になります。
九州電力管内では原子力発電所の再稼働が進む中で、出力抑制が必要な際に真っ先に稼働する合計230万kWの揚水発電所が、これからどう活用されるかは気になる所です。
こうして順番に並べると、太陽光発電や風力発電は後ろの方の抑制順になってはいますが、実際に各段階で何万kWhの調整力があるのかは不明のため、今後情報開示が進むかどうかも注意が必要になります。
なお、九州電力以外の発電事業者に対しては、8月以降に九州電力が今回のルールを説明するために個別訪問を実施するとのことです。
(※太陽光発電の指定ルール事業者への個別訪問は希望制)