電力小売自由化:新電力の発電・需要計画に誤りが多発? - 計画値同時同量制度との不整合
4月からの電力小売自由化で多数の新電力事業者が電力小売事業に参入しましたが、各事業者には「計画値同時同量制度」への適合が求められます。
電気は瞬時に消費される性質があるため、事前に顧客の需要量と事業者の発電量がバランスするように需給計画を立てて、一般送配電事業者に提出します。
この「計画値同時同量」が達成されなかった(過不足が生じた)場合には、送配電事業者が精算します。その過不足を「インバランス」と呼びます。
今回、経済産業省が提出を求めたこの需給計画の様式が複雑だったことで、新電力各社による計画値の誤りが多数発覚し、例外措置として計画の訂正を求めることが出来る特別措置を発表しています。
あわせて、電力・ガス取引等監視委員会も以下のような措置をとっています。
あまり一般には報じられないものですが、先日の東京電力における小売部門への需給情報提供の遅れや誤り以外にこういった問題も抱えつつ、わが国の自由化は進んでいます。
太陽光発電事業:経済産業省が太陽光発電所への立ち入り検査を実施 - 今夏からの規制強化に先立つ
昨年8月の台風15号による、九州地方での太陽光発電所被害を受けて各種規制強化が進んでいる中で、経済産業省が太陽光発電所に対する初の立ち入り検査を実施しました。
7月13日に開かれた、第13回電力安全小委員会で概要が報告されています。
検査は山梨県にある40kWの発電所を対象として、4月に実施されています。
実施主体は産業保安監督部となっているので、関東東北産業保安監督部によるもののようです。
今回の検査では発電所架台の支柱と杭の接合部で、技術基準への不適合が疑われたと報告されています。
(出所)産業構造審議会 保安分科会 電力安全小委員会(第13回)配布資料 より
ここまでズレるのはどんな杭打ち精度なのかと思ってしまいますが、確認の結果「強度は確保されることが確認された」とのこと。
8月に予定されている「使用前自己確認制度」の導入や「報告規則の強化」に先んじた動きでもあり、今回の検査は試験的な意味合いが大きいように思いますが、最初の事例に低圧案件を選んだというのは「どんな発電設備でも検査の対象になり得る」ことを示したとも言えます。
発電設備としての安全確保と電力の安定供給を図るためにも、今後は各地で同様の立ち入り検査が行われていくのでしょう。
ソーラーシェアリング:八千代市のソーラーシェアリングサイトを見学してきました
八千代市再生可能エネルギー協議会の主催で、千葉県八千代市にあるソーラーシェアリングサイトを見学してきました。
5月に読売新聞でも取り上げられた発電所です。
【発電所全景】
6反歩ほどの畑に50kWの発電設備3基が設置されており、手動式のモジュール回転機構が導入されています。
ハンドウインチで500枚のモジュールを一気に動かすことができる構造になっていて、1日の中でも頻繁に角度を変えていくそうです。
【発電所内の様子】
発電設備の下部では主に落花生が栽培されており、ちょうど花芽がつく時期を迎えていました。
訪問の前日には大雨に見舞われていましたが、畝を避けるような形の雨だれとなっていて、直接作物に対してあたるというようなことはないようです。
【落花生の花】
ソーラーシェアリングのオーナーは地元で代々続く農家さんですが、将来に亘って農地を守るためにはどうすればいいか思案する中でソーラーシェアリングに出会い、今回の設備導入によりご両親の跡を継いで専業農家となったそうです。
耕作放棄地の解消や予防がソーラーシェアリングの大きな目的の一つと考えていますが、八千代市内ではこの発電所以外に事例がないということで、今後どのように広めていけるかを考えていきたいと思います。
ソーラーシェアリング:匝瑳市飯塚でのソーラーシェアリング事業 - 新エネルギー新聞掲載
電力自由化:深刻化する東京電力パワーグリッドによる新電力への電気使用量・発電電力量通知遅れ問題
昨年来、今年4月の電力小売完全自由化に向けた準備の中で、東京電力による託送業務の新システム開発や新電力への設置に必要なスマートメーター交換が間に合わないという問題が、都度取り上げられてきました。
小売完全自由化から3ヵ月が経った現在も問題は継続しており、東京電力から新電力に対する顧客の電気使用量データ通知が遅れているだけでなく、その内容自体にも誤りがある(電気料金の誤請求が発生する)というような事態も生じています、
新たに設置が進められているスマートメーターでは、各メーターから決められた計量日のデータが送られてきますが、旧式のメーターのままになっている場所では検針員が測定する日によって、計量期間にズレが生じます。
この2つの異なるデータを同一に扱ってしまったため、検針タイミングの違いによる使用量の誤りが発生しています。
東京電力パワーグリッドは、今後の改善見込を同社のWebサイトで公表していますが、スマートメーターの交換が完了するのは9月以降の見込です。
更に言えば、東京電力パワーグリッドから新電力に提供されるのは、顧客に「売電」したデータ(電気使用量)だけでなく太陽光発電設備などからの「買電」のデータ(発電電力量)も含まれます。
このため、発電事業者の中には新電力からの電気料金の支払いが滞っている事例も生じているという深刻な状態です。
ソーラーシェアリング:大豆の播種と発芽 - 匝瑳飯塚 Sola Share 1号機でついに農業が始まりました
4月から順調に運転を続けている自社ソーラーシェアリングサイト「匝瑳飯塚 Sola Share 1号機」で、先週大豆の播種を行いました。
発電所下部の農業は、Three little birds合同会社が担います。
4月に緑肥(ヘアリーベッチ)を播き6月に鍬込んでおいた畑で、下の写真のようにトラクタで大豆を播いていきます。
発電設備の高さがあるので、トラクタも余裕で動き回れます。
トラクタの後ろには播種機が付いていて、次々と土を起こしながら種を播きつつ進んで行きます。
そして、播種から1週間が経った発電所の様子が下の写真です。
畑をよく見てみると・・・
無事に大豆が発芽しました!
発電所の運転開始から3ヵ月、まずは自社第1号のソーラーシェアリングで無事に農業を始めることが出来ました。
固定価格買取制度:太陽光発電に対する見なし認定制度の運用 - モジュール変更の解禁の影響
6月中旬からFIT法の改正に伴う各経済産業局などでの説明会が行われていますが、特に最近問合せが増えているのが、モジュール変更の解禁です。
(経済産業省の本省で行われた説明会の資料が、以下のページで公開されています)
なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度(改正FIT法に関する地方説明会)
説明会資料にある「②新たな未稼働案件の発生防止に向けた仕組み」の中で、平成28年8月1日以降に接続契約を締結する制度の見直し内容がまとめられています。
その中の、「設備の変更に伴い新しい認定を求め、買取価格を変更させる仕組みは新制度以降は適用しない。」という文言により、設備認定後~運転開始前までのモジュール変更に対するいわゆる「モジュール縛り」がなくなることが明らかになりました。
(出所)資源エネルギー庁 「再生可能エネルギーの導入促進に係る制度改革について」
これによって、今までモジュールメーカーが持っていた価格交渉力が弱まることになり、各社の営業競争が再び激しくなる可能性があります。
連系工事期間の長期化に伴い、当初予定していたモジュールメーカーの経営状況の変化や、モデルの旧式化に対応できない、あるいは価格の高止まりといった問題が見受けられていましたが、今夏以降はその状況に大きな変化が起きそうです。
固定価格買取制度:接続の同意を示す書類のリスト公表 - 平成29年度末の設備認定取消に備えて
FIT法改正が決まる中で、資源エネルギー庁及び各電力会社(旧一般電気事業者)か「接続の同意」を示す書類の一覧を公表しました。
従来、いわゆる「接続契約書」にはどういった書類が該当するのかについて、各電力会社で書類の名称が異なるなどしたため、混乱が生じていました。
今回、FIT法改正に伴い下記のような設備認定失効基準が定められたことに伴い、「一般送配電事業者等の接続の同意」とは何かを明確にするため、こういった情報が公表されています。(なっとく!再生可能エネルギーから抜粋)
- 原則、同法の施行時点(平成29年4月1日)で
- 平成28年7月1日~平成29年3月31日に認定を取得した場合は認定日の翌日から9ヶ月以内に
- 同法の施行時点で電源接続案件募集プロセスに参加している場合は当該プロセスの終了日の翌日から6ヶ月以内に一般送配電事業者等の接続の同意を得られていない場合、現行の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく認定が失効することになります。
これらは、調達価格等の決定に際して重要な書類となるため、各電力会社が示す書類について今一度の確認が必要です。
再エネ業界ニュース:サニックス 3度目の希望退職の結果を公表 連結社員数は半減へ
九州を中心に太陽光発電事業を急拡大し、九電ショック以降は大規模なリストラのニュースが続くサニックスですが、5月に実施した3度目の希望退職の結果が公表されました。
当ブログでも都度取り上げてきましたが、サニックスが注目されるのは東証一部上場企業であり2001年には特定規模電気事業者(PPS)の登録をしている中で、FITの波に乗った太陽光発電事業の拡大、一転して九電ショック後は大きなリストラを伴う事業縮小と、その振れ幅が大きいことにあるでしょう。
2014年3月期には3,625人を数えた連結社員数は、今回を含む3度に亘る希望退職で1,800人程度まで半減すると見込まれています。
5月に発表した2016年3月期の連結決算では、当期純利益が46億円の赤字(前年同期は49億円の赤字)となっています。
太陽光発電事業部門の売上高は対前年比55%にとどまり、2016年の第4四半期は営業利益がプラス圏に回復したものの、厳しい経営状態が続いています。
同社は自社ブランドでのモジュール製造や、施工した発電所の長期保証及びOMも請け負っており、続く人員削減でアフターサポートにどのような影響が出るのかも懸念材料です。
決算説明会資料では2017年3月期には経常利益の黒字化、2018年3月期には当期純利益の黒字化を目指すとしており、今後の経営立て直しがどのように進むのかが注目されます。
固定価格買取制度:再エネ系統連系に関する電力会社の電気事業法上の禁止行為 - 電力・ガス取引監視等委員会が平成27年度の電気事業監査の概要を公表
電気事業やガス事業の自由化に伴って、各社の業務チェックを担う電力・ガス取引監視等委員会が、平成27年度の電気事業監査の概要を公表しました。
一般電気事業者及び卸電気事業者への監査の結果、合計10件の行政指導が行われ、そのうち4件が再生可能エネルギー発電設備等の接続契約や、新電力に関する事項となっています。
この4件の行政指導は、以下のような内容になっています。(指導先は非開示)
(出所)電力・ガス取引監視等委員会 公表資料より
内訳は、接続検討の回答期間に関する事項が1件、工事負担金に関する事項が3件という結果になっています。
工事負担金については、FIT開始当初から算定内容の不透明性が事業者にとって不利なものとなってきましたが、昨年11月に工事負担金のガイドラインが見直され、基幹系統部分は電力会社による「一般負担」となり、それ以外の部分が発電事業者による「特定負担」となりました。
今回の指導がガイドライン以前の事案を扱ったものかどうかは明らかではありませんが、工事負担金の算定や精算について電力会社の対応が是正されているかどうか、ガイドラインの見直しによる再算定が適切に行われているかどうかは、引き続きチェックが必要です。