ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

再エネ業界ニュース:太陽光パネルの出荷量は回復している? - 太陽電池の出荷統計の変化

太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)バブルは弾けた!という話も増えてきた今日この頃ですが、6月頃には2015年度の太陽光パネル総出荷量が前年比19%減と、市場の縮小傾向が報じられていました。

国内メーカー各社も、住宅用の強化や海外進出など新たな活路を!と国内産業用からの方針転換をどう図るかが話題だったと記憶していますが、そこは今も変わらない状況でしょう。

www.itmedia.co.jp

増加に転じた出荷量

一方で、今月に入って2016年度第2四半期までの太陽光パネル出荷量の数値が出てくると、発電事業用の大幅な伸びが見えてきました。

対前年同期比で110%という増加量を見せています。

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未稼働案件はどこまで運転開始に辿り着くか?

資源エネルギー庁が公表しているFITの設備認定情報では、今年7月末時点で非住宅用太陽光発電だけで5,000万kWの未稼働認定分があります。

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【出所】資源エネルギー庁 再エネ設備認定状況

来年3月末の新認定制度への移行を控え、3,000万kW程度の設備認定が取り消されることになるのではと噂されていますが、それでも2,000万kWが未稼働分として残るほか、滞留案件が一掃されることによって系統状況が改善し新規案件の開拓が再び始まることも期待されます。

国内でコンスタントに導入できる太陽光発電設備の容量は、年間700~800万kWと言われていますので、今後3~4年程度は現在のペースに近い新規導入が進むと予想されます。

ソーラーシェアリングのような新たな発電事業が普及しているほか、モジュール1枚あたりの発電量向上も目覚ましいものがあります。

メーカーの新規参入と淘汰を繰り返しながら、まだしばらくは太陽光パネル市場の活況が続くのではないでしょうか。

太陽光発電事業:太陽光発電設備に対する使用前自己確認制度の導入 - 500kW以上の発電設備が対象に

11月30日付で、経済産業省から『「電気事業法施行規則」、「使用前自主検査及び使用前自己確認の方法の解釈」及び「発電用火力設備の技術基準の解釈」の一部改正について』とする通知が出されました。

これは、「電気保安規制のスマート化」の中の一つの取組として進められてきたもので、各電気工作物についてリスクの見直しを行った結果、新たに使用前自己確認制度などが導入されることになりました。

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500kW以上の太陽光発電設備に使用前自己確認制度が導入

今回の措置により、太陽電池発電設備に対する使用前自己確認制度』が導入されることになり、これまで2,000kW以上の太陽光発電設備に対して適用されていた『使用前自主検査』に準じる確認手続きが、500kW以上の発電設備に設けられることになっています。

この規則等は平成28年11月30日に公布され、即日施行とされているため、同日以降に使用が開始される500kW以上2,000kW未満の太陽光発電設備は、新たに使用前自己確認制度に基づいた対応が求められることになります。

年度末にかけて太陽光発電所の竣工が続く中で、現場では多少の混乱が起きるかも知れません。

ソーラーシェアリング:千葉エコの設備で大豆が(少しだけ)採れました - 千葉の在来種「コイトザイライ」

今年は、9月・10月の短日照や度重なる台風などに悩まされる一年でしたが、千葉エコのソーラーシェアリング匝瑳飯塚 Sola Share 1号機では鳥獣被害により大豆の新芽が大規模な食害に見舞われました。

そんな自然災害や食害を乗り越えて、無事に実った大豆がこれです!

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この青大豆は、千葉県の在来種「コイトザイライ」になります。

鳩による新芽の食害をくぐり抜け、ソーラーシェアリングの片隅で一部の株が無事に育ちました。

来年こそは、食害にも負けずに一面の大豆畑を育て上げたいと思います。

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同じくソーラーシェアリング設備下で実った稲穂と共に

ソーラーシェアリング:農林水産省の営農継続型発電特設ページ - ソーラーシェアリングの制度情報まとめ

農林水産省のWebサイトリニューアルに合わせて、ソーラーシェアリングを含む営農継続型発電設備の特設ページが開設されました。

農林水産省のサイト内で「営農型発電設備」と「営農継続型発電設備」の表記揺れが見られます)

 

営農型発電設備の設置:農林水産省

 

これまでは、ソーラーシェアリングが認められることとなった通知「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(24農振第2657号)に関するページはありましたが、今回のリニューアルでQ&Aや統計情報なども併せて公表されるようになっています。

特に、ソーラーシェアリングの許可件数をまとめた統計情報では年度毎の数値が公表されています。

  • 平成25年度:97件
  • 平成26年度:304件(累計401件)
  • 平成27年度:374件(累計775件)

こういった統計情報について、今後は都道府県別や出力別・規模別の件数など、より細かい情報の公開がされるように働きかけていきたいと思います。

再エネ業界ニュース:増加するフロート式メガソーラーとその弊害 - 大阪狭山市の騒動

再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)導入後、市街地から人里離れた山奥まで全国のありとあらゆる場所に太陽光発電所が建設されてきましたが、特に西日本を中心に増えているのが水上に設置するフロート式の太陽光発電設備です。

地上設置型とは異なり、水上であれば場所の利用という点で他の用途と競合しないことから、ここ2年ほどでダム湖やため池・調整地にメガソーラー規模での導入が少しずつ進んできました。

そんなフロート式メガソーラーですが、ここ1週間ほどメディアで取り上げられているのが大阪狭山市の狭山池に設置された発電所です。

www.mbs.jp

大阪狭山市が進める水素エネルギー事業

報道を遡ってみると、この発電所大阪狭山市が100%を出資する「メルシー for SAYAMA株式会社」が進める、ため池の水を電気分解して水素を製造しエネルギー事業を展開するというプロジェクトと関連していることが分かります。

www.sankei.com

このメルシー for SAYAMA株式会社」によるプレスリリースが、下記です。

再生可能エネルギー等から製造した水素を「グリーン水素」として、「世界初のグリーン水素シティ」を実現することを目的とするとしています。

prtimes.jp

フロート式メガソーラーの弊害?

ため池で太陽光発電を行い、そのエネルギーで水を電気分解し、水素を製造して地域のエネルギー供給を図るというこのプロジェクトですが、上の報道ではフロート式メガソーラーからの「熱」と「反射光」が問題視されています。

太陽パネルによる反射光は、住宅地に隣接するメガソーラーで訴訟問題に発展している例もあるように、強力な光の反射によって眩しさや建物の室温上昇などを招くことが懸念されています。

特に、フロート式メガソーラーの場合は水上に設置されるという特性から、太陽光パネルが周辺の土地よりも低い場所に位置することになり、近隣にある建物へ反射光が差し込みやすくなると考えられます。

太陽光パネルには、住宅用などで近隣への太陽光反射を考慮した防眩仕様の製品があり、そういったものを使用すれば反射光の影響を抑えることが可能ですが、今回のフロート式メガソーラーではそういった製品が採用されていない可能性があります。

反射光の問題は特に夏場になると顕在化するため、今後この問題がどのように推移していくのか注目していきたいと思います。

ソーラーシェアリング:匝瑳飯塚 Sola Share 1号機のドローン空撮を行いました

11月に入って徐々に農閑期に向かう中、一度はやってみたかったドローンでのソーラーシェアリングの空撮を、匝瑳市の自社発電所で実施しました。

上空からの発電所全景

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高高度で真上から

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飯塚開畑地区を背景に

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近年になって一気に注目を集めるドローンですが、この空撮写真を見た時には感動しました。

また、こうやって見るとソーラーシェアリング設備が田園風景の中で違和感なく溶け込めるものだというのも、新しい発見です。

次は農繁期に撮影してみたいと思います。

再エネ業界ニュース:カネカが結晶シリコン太陽電池モジュールで世界最高変換効率を達成 - ヘテロ接合バックコンタクト型で24.37%

NEDOが10月27日付で、株式会社カネカが結晶シリコン太陽電池モジュールで世界最高の変換効率となる24.37%を達成したと発表しました。

www.nedo.go.jp

セル単位の大幅な変換効率向上

この研究は、NEDO「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトとして実施されていたもので、セル単位の変換効率は26.33%を実現しているとのことです。

現在の市販モジュールの変換効率が15~18%程度であることから、今回の24.37%というのは大幅な性能向上です。

かつて、三洋電機が開発したHIT(ヘテロ接合型)太陽電池モジュールは19%(セル単位では21%以上)を超える変換効率を誇りましたが、それを上回る製品の実用化に目処がついたと考えられます。

今回の技術開発により、NEDO太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)の目標である2020年に発電コスト14円/kWhを達成するために必要とされる変換効率22%を上回ったことで、その目標達成に向けた大きな前進を果たしたと言えるでしょう。

太陽光発電事業:太陽光発電競争力強化研究会のレポート② - わが国の太陽光発電のコスト構造

前回に引き続き、太陽光発電競争力強化研究会のレポートから、わが国の太陽光発電の抱える課題についてまとめていきます。

前回の記事は下記からどうぞ。

cee.hatenablog.jp

 

コスト構造の課題

固定価格買取制度(FIT)による導入促進の目的というのは、高コストであるからこそ他の電源よりも買取価格を優遇することで設備設置を促し、普及を図ることでコストを引き下げていくことにあります。

2016年段階では、わが国の太陽光発電は導入費用も運転管理費も概ねドイツ・フランス・英国の2倍程度の水準となっています。

これを如何にして引き下げていくのかについての議論では、まず現状は下記の表のように「あらゆるコストが全部高い」という状態です。

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(出所)経済産業省 太陽光発電競争力強化研究会レポート

この表では、国ごとの特殊事情が絡む土地造成や系統接続費用を除いているので、発電所の本体工事に関する費用部分の比較となっています。

レポートの中では、

  • モジュールの内外価格差は縮小傾向
  • PCSは海外勢の参入圧力が弱い
  • EPC事業者経由の調達による追加マージンの発生
  • BOSや設置工事は設計・施工の効率化が進んでいない
  • 専門のEPCが少なく、建築業等をベースにした多層の下請構造
  • そもそも高いFIT価格による価格競争圧力が弱い
  • 耐震・耐風基準の高さ

などを高コストの理由として挙げています。

特に設計・施工部分の専門化が進んでいない事による無駄の多さは、BOS価格及び設置工事費の高止まり要因となっており、この構造が発電所の点検・保守(O&M)にも及ぶことで運転管理費も高い水準にあります。

この課題に対しては、買取価格の引き下げや入札制度の導入によって競争を促進するほか、NEDO太陽光発電開発戦略(PV Challenges)に基づく付加価値の向上と低コスト化を目指した技術開発支援を進めるとしており、発電コストを

  • 2020年に14円/kWh
  • 2030年に7円/kWh

まで、段階的に引き下げていくとしています。

また、国内メーカーの競争力をどう高めていくかも議論されていますが、国内に大量流入している中国メーカーとの競争の中で、コスト削減を目指すか付加価値の向上を図るかという視点は、他の工業製品と同様の課題です。

 

次は、長期安定発電の実現に向けた現状と課題をまとめていきます。

太陽光発電事業:太陽光発電競争力強化研究会のレポート① - わが国の太陽光発電の抱える課題

わが国の太陽光発電産業は、2000年代半ばには世界トップ水準の国内導入量及びモジュール出荷量を誇っていました。

現在は、FITの影響で年間導入量こそ中国に次ぐ第2位となり、累積導入量も国別では上位に返り咲こうとしていますが、主要な国内モジュールメーカーの出荷量は世界大手に大きく水をあけられています。

そんな状況下にあって、わが国の太陽光発電産業の競争力強化を図るにはどうしたらいいのか?を研究したレポートが、経済産業省から10月に公表されています。

www.meti.go.jp

 

 太陽光発電の競争力強化に向けた課題とは

このレポートの中で、わが国の太陽光発電の競争力強化に向けた課題として、下記の3

項目が挙げられています。

  1. コスト競争力の強化
  2. 長期安定発電事業への転換
  3. 太陽光発電の自立的な導入に向けた新しいマーケットの拡大

現在、わが国の太陽光発電の発電コストはドイツ・フランスの2倍、英国の1.5倍といった水準になっており、このコスト構造を変えていくことが喫緊の課題です。

長期安定発電事業への転換という点では、適切な点検・保守(O&M)の実施やアセットマネジメントの浸透、製品や施工の品質向上などが課題ですし、ポストFITを見据えた新しいマーケットでは蓄電池の併設やVPP、ZEHやZEBといった自家消費電源化などが考えられます。

まず当面は、FITの目的であるコスト構造の改善を図りつつ、改正FIT法でも盛り込まれつつあるO&Mの義務化による電源としての安定化を果たすことが重要でしょう。

 

記事をまとめて見たところ長文になってきたので、コスト構造の分析は②として掲載します。

固定価格買取制度:改正FIT法における事業用太陽光発電の入札制度 - 平成29年10月開始目処

10月24日に開催された第24回調達価格等算定委員会で、改正FIT法で予定されている事業用太陽光発電の入札制度に関する議論が行われました。また、同委員会には一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)から、調達価格等への意見が提出されています。

まずは入札制度のフローや実施時期、対象などについて、一通り整理していきます。

入札制度のフロー

入札制度のフローは下記のように示されてますが、現段階では対象となる発電設備の区分や入札資格は未定です。なお、当初の対象は出力2,000kW以上の特別高圧連系の設備とするように、JPEAから要望が出されています。

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(出所)経済産業省 調達価格等算定委員会(第24回)配付資料

入札の参加希望者は発電事業計画の審査を受け、資格が認められると供給可能な1kWhあたりの価格と発電出力を札入れします。最も安価な札を入れた事業者から、順次入札全体の募集要領に達するまでの事業者を落札者とし、その後にFITの設備認定を申請して認定を受けるという流れになります。

落札者は、電力会社との連系協議を行うなどして事業化の準備を進め、定められたFIT認定申請期限までに設備認定申請を行う必要があります。

入札の実施スケジュール

平成29年度からの入札実施は決定していますが、今後の実施スケジュールは下記のように案が示されました。第1回の入札は、平成29年9月~10月となっています。

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(出所)経済産業省 調達価格等算定委員会(第24回)配付資料

初年度は入札に関するシステムの構築及び試験運用が必要と言うことで1回のみの実施とし、平成30年度からは年2回というペースが想定されています。

第1回の入札実施後の調達価格等算定委員会で、実施結果を踏まえた見直しを行う可能性についても示唆されています。

入札対象規模、入札量、上限価格

入札対象規模や入札量、上限価格はこれから議論されるところですが、事業者の予見可能性に留意することとして平成30年度の第3回分までは今年度の調達価格等算定委員会で提示する案となっています。(来年度の見直し可能性は留保)

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(出所)経済産業省 調達価格等算定委員会(第24回)配付資料

上の資料では、太陽光発電設備のシステム費用に関する運転開始年別の推移が規模別にまとめられていますが、50kW~2,000kW未満の範囲では着実なシステム費用の低下が見られる一方で、2,000kW以上の設備については若干の横ばい~上昇傾向が見られます。

これは、大規模な発電設備ほど土木造成や系統連系コストが嵩むことが原因と推測され、その引き下げを促すために入札性を導入するという考え方が成り立ちます。

 

これから12月にかけて議論が進み、入札制度の全容が固まっていくことになりますが、ヨーロッパの事例では小規模から大規模な設備まで競争力のある大手企業が独占状態という事態も生じているので、中期的な制度設計の中で地域エネルギー事業に配慮した仕組み作りが求められます。