ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

農業:千葉県香取市にある和郷園を視察 - 『農業生産者の自律』

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を起点として農業への取り組みを深めていく中で、ご縁があって千葉県最大の農事組合法人である和郷園を訪問しました。

千葉県香取市に所在し、農作物の生産・加工・出荷に加えてバイオマス資源リサイクルなどにも取り組まれており、今回は視察という形で受け入れていただきました。

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最初に和郷園の木内代表と面会し、和郷園の始まりから今に至るまでの事業における理念や、現在のわが国の農業に対する考え方などを伺いました。

今回は、ソーラーシェアリング上総鶴舞の高澤さんとご一緒に伺いましたが、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の話よりも先の、地域における農業・千葉における農業を今後どのように進めるべきかについてのご意見もいただきました。

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会談後は、加工・出荷場の視察のほか、食品加工時の残渣を利用したバイオマスリサイクルセンターや、農園リゾートTHE FARMなど各施設を視察し、農業を中心とした一体的な取り組みの一部を知ることができました。(下記写真はバイオマス発電プラント)

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下記は農園リゾートTHE FARMのグランピングエリアの写真ですが、雑木林だった谷間の地形を上手く活かし、素晴らしいリゾートエリアとして開発がされています。

写真中央右手には棚田があるほか、その下部の調整地になっている場所ではカヌー教室も開かれるということです。

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この他にもTHE FARM CAFEや体験農園施設、温泉施設等が一体的に整備されており、『農業リゾート』としてのコンセプトを持ったエリアとして目覚ましいものがあるように感じました。

現在、全国で自然エネルギーを活用した農業振興策を展開していますが、その中で単なる六次産業化にとどまらない取り組みを図ろうとする中で、今回の視察は非常に学ぶところの多いものだったと思います。

ソーラーシェアリング:秋田県南秋田郡井川町で水田ソーラーシェアリングが完成 - 北東北初の事例

一昨年から秋田県にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の新たな展開を探るべく動いていましたが、去る5月8日ついに第1号の水田ソーラーシェアリング設備が完成しました!

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今回設置したのは秋田県南秋田郡井川町で、地場の太陽光パネルメーカーであるアイセスとの共同開発事業となります。

ソーラーシェアリング専用スリムタイプモジュールアルミ製架台を開発し、現地での水稲耕作に使用される農業用機械の規格にあわせた支柱間隔や梁の設計となっています。

秋田県内では水田でのソーラーシェアリングとして第1号の事例となり、先週19日には『あきたこまち』の田植えを報道陣にも公開する形で行いました。

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この田植えには秋田県内の全てのテレビ局のほか、新聞各社も取材に来たことで様々なメディアで取り上げられています。

私もNHK秋田放送局ほか各局のインタビューを受け、同日夕方には各所で放送されたようです。

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下記が、現在Web掲載されている記事の一部になります。

www.kahoku.co.jp

www.sakigake.jp

this.kiji.is

井川町の設備が完成したことで、これまで進めてきたソーラーシェアリング用の資材並びに事業スキームが一つのモデルとして固まったため、これから秋田のみならず全国的な事業展開を図ることができるようになりました。

また、水稲への遮光による影響や、積雪地における発電量の野立て設備との比較などを行い、農業並びに発電事業としての実証も重ねていく計画です。

講演情報:太陽光発電検査協会の技術部会にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の技術講演

先週は長野・名古屋・京都にて営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の講演をさせていただき、大忙しの1週間でした。

その中で、5月18日には京都にあるけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)にて開催された、太陽光発電検査協会の技術部会にお招きいただき、営農型太陽光発電の技術講演をさせていただきました。

講演の題目は『長期安定稼働を目指した営農型太陽光発電設備の導入』です。

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普段の講演では、営農型太陽光発電の制度や事例紹介を中心にお話することが多いのですが、今回は技術部会での講演ということで営農型太陽光発電の技術的な部分にもフォーカスしながらのお話です。

特に、匝瑳の事例や先日完成した井川町の水田ソーラーシェアリングを例に挙げ、スリムタイプモジュールという点は踏襲しながらも、改正FIT法対応・改正JIS対応を目指した経済性を備えたアルミ・鋼管架台による設計や基礎構造、新型モジュールの特長などの説明に力を入れました。

また、野立てとのO&Mの違いについても言及し、営農型太陽光発電の持つポテンシャルと社会的な意義から今後のポストFIT下においても、大きな普及が図れる点なども強調させていただきました、

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同協会とは3年以上の付き合いですが、太陽光発電のO&Mに関わる組織としては全国最大規模にまで成長しているということで、今後も協力してPVマーケットの成熟に向けた取組を進めて行ければと思います。

ソーラーシェアリング:文部科学省の『産学連携活動の取組事例』に掲載されました - 匝瑳ソーラーシェアリングプロジェクト

匝瑳市飯塚地区で進めているソーラーシェアリングプロジェクトが、文部科学省の『産学連携活動の取組事例』として掲載されました!

千葉大学発のベンチャーである千葉エコ・エネルギーと、千葉大学との産学連携プロジェクトという位置づけになります。

 

平成27年度 大学等における産学連携等実施状況について:文部科学省

 

上記ページに掲載されている『平成27年度における産学官連携活動の主な取組事例(1/5)』のp.24に紹介されており、『永続地帯指標による地域資源評価とコミュニティ研究の成果を生かした自然エネルギーによる地域農業再生モデルの実践』として取り上げられています。

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元々、エネルギー政策の研究を長年進めてきた私自身の興味関心から出発し、エネルギーと食料という社会基盤となる2つの資源をどのように安定確保していくかが一つのテーマとなっていましたが、ソーラーシェアリングという形でそれが実現しつつあります。

この視点ではソーラーシェアリングに限らず、地域の農業者と連携した小水力発電バイオマス利用も進めてきており、今年以降はそちらの成果も出せるのではと思います。

また、自然エネルギーと農業という視点からは千葉大学以外からも共同研究の打診を受けており、アカデミックな活動もより一層広げていきたいと考えていますので、今後の展開にご期待ください!

再エネ業界ニュース:岩手県軽米町で進む80MWのメガソーラー建設 - 農山漁村再生可能エネルギー法の活用事例

岩手県軽米町で、農山漁村再生可能エネルギー法を活用した大規模な再生可能エネルギー発電開発が進められていますが、その中でも最大となるレノバのメガソーラー建設が今年3月から着工しています。

techon.nikkeibp.co.jp

軽米町全体では200MWを超える発電所の建設が進んでおり、メガソーラーと鶏糞バイオマス発電所が計画されています。

総事業費はおそらく600~700億円に達すると見込まれ、町予算の10年分程度に相当する大規模事業であることから、上記の記事中でも町長が地元経済への波及効果を期待しています。

本事業は農山漁村再生可能エネルギー法を活用していることから、地域の農林漁業等に対する再生可能エネルギー事業からの収益還元が求められますが、これだけの事業規模に対してどれだけの経済的な恩恵が地域にもたらされ、その振興に寄与するかというのは社会的にも大きな関心事です。

地域に根差した自然エネルギー事業が、地方の抱える様々な問題を解消することが出来るのかどうか、この取組には引き続き注目していきます。

再エネ業界ニュース:ソーラーワールド社が破産手続きへ - ドイツの老舗太陽光パネルメーカー破綻の衝撃

ドイツの老舗太陽光パネルメーカーであるソーラーワールド(Solar World)社破産手続きに入ったと各所で報じられています。

ドイツといえば、太陽光パネルメーカーとして世界トップを誇ったQセルズが、破綻して韓国のハンファに買収されていますが、再び著名メーカーの破綻という自体が生じました。

www.nikkei.com

www.foxnews.com

ソーラーワールドもいずれかの企業に買収される方向になるのではと推測されますが、かつて欧州トップメーカーであったノルウェーのRECソーラーも中国資本に買収されており、太陽光パネルメーカーがアジアへとシフトしていく動きが見られます。

ドイツ国内生産にこだわったソーラーワールドの破綻は、業界に大きな衝撃を与えると共に、太陽光発電市場が新たなフェーズに入ったことを示すものなのでは、と考えています。

ソーラーシェアリング:アースデイ東京2017を振り返る - ソーラーシェアリング・ブース出展しましたレポート

GW前の4/22~23にかけて代々木公園で開催された『アースデイ東京2017』で、城南信用金庫の協賛をいただきソーラーシェアリングの特別展示ブースを設けました。

1日目は曇天でしたが2日目は快晴に恵まれ、代々木公園の渋谷区役所側入り口からすぐという好立地もあって多くの方に立ち寄っていただけたので、当日の様子を簡単にレポートします。

 ①スマートターンによるソーラーシェアリングの実機展示(1.05kW)

発電した電気は後方にあるステージの電源として2日間活用しました。

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 ②ブース全景

渋谷区役所側から入ると、この様な形でソーラーシェアリング設備+テントという陣容でお出迎え。

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 城南信用金庫の吉原相談役と

今回の企画展示を全面バックアップしていただいた、城南信用金庫の吉原相談役とツーショット。この後に、メインステージ&トークテントでソーラーシェアリングについてお話ししました。

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④メインステージでのトーク

イベント会場内のメインステージで、吉原相談役、匝瑳メガのモジュールサプライヤーであるWWB社の龍社長と共に、ソーラーシェアリングの紹介トーク

ここから『100億円のソーラーシェアリングプロジェクト』がスタートします。

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トークテントでのトークセッション

場所を移して、会場内トークテントにてソーラーシェアリングの普及と社会的インパクトに関するトークセッションです。

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非常に多くの方に関心を持っていただき、後半にはテントの周囲に多くの立ち見が出るほどの大盛況でした!

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『100億円のソーラーシェアリングプロジェクト』

今回のアースデイ東京へのブース出展では、匝瑳メガソーラーシェアリングの完工という大きなトピックのPRの他に、これを契機とした『100億円のソーラーシェアリングプロジェクト』のキックオフを宣言するというのも大きな目的の一つでした。

果たして何が100億円なのか?はまだ秘密ですが、これから更にソーラーシェアリングを普及させていくための取り組みとして一気に新しい仕掛けを進めていきますので、また詳細は逐次お知らせしていきます。

系統運用:GW中に出力抑制(出力制御)は実施されるか? - 九州電力や四国電力管内での実施懸念

晴天の続くゴールデンウィークとなれば、多くの人々が行楽に出かけ各地が賑わうという明るいイメージですが、太陽光発電事業者にとっては『出力抑制(出力制御)』の単語が脳裏から離れないシーズンでもあります。

4月から5月にかけては日照時間が長くなり、晴れ間も続くことで1年の中でも最も太陽光発電の設備利用率が高くなる一方で、過ごしやすい気候で空調などのエネルギー需要は減り、連休ともなればオフィス需要の減少などで需要低下が更に大きくなります。

昨年末に以下の記事で触れましたが、 四国電力平成29年のGWを例にとって太陽光発電の電力供給量が電力需要量の85%に達するという資料を公開していました。

cee.hatenablog.jp

国内では、一昨年の5月5日に九州電力種子島で国内初となる出力抑制を行っています。その後も離島部で出力抑制が続いており、今年もGW前半の4月29日には6,310kW、4月30日には8,904kWの設備に対して出力抑制指令が出されています。

上で四国電力の例を挙げましたが、現在最も懸念されているのは太陽光発電の急速な導入が続く九州本土での抑制実施です。

調整電源が乏しく地域間連系もされていな離島では、あっさりと太陽光や風力発電設備の出力抑制に至りますが、揚水発電所や地域間連系線による調整が可能な九州本土で優先給電順位が5番目となる太陽光・風力にまで出力抑制が果たして容易に至るのかどうか。

実施されれば広域機関(OCCTO)による検証を含めて大きな議論が巻き起こることは間違いなく、電力会社も慎重にならざるを得ないという指摘もある中で、「いつかは起きる」ことも間違いない出力抑制の実施がいつになるのか固唾を呑んで見守る日々が続きます。

地方創生:秋田県の人口が100万人割れ 87年ぶりに90万人台に - 進む社会減

ここ数年、国内の全都道府県中で最も人口減少率が大きかった秋田県の人口が、4月1日時点でついに100万人を割り99万9636人になったと県が発表しました。

www.sakigake.jp

魁新報の報道によると

3月の1カ月間で死亡者数が出生者数を上回る自然減が925人、社会減が3749人だった

という結果となっており、出生数を死亡数が上回る自然減よりも、人の移動による社会減の方が大きい状況です。

私自身も秋田へ足を運ぶようになってから4年が経ちますが、秋田市の中心街であっても少しずつ寂れていく様子が肌感覚として感じられるようになり、また周囲でも秋田出身の若者が首都圏に出てきてそのまま戻ることなく居着いていく姿を目にしています。

news.nifty.com

今年、秋田で自然エネルギーJVを設立して営農型発電を軸とした自然エネルギー拡大と農業振興を目指した取り組みを進めようとしていますが、地元人材の不足には頭を悩ませているところです。

「仕事」だけがあっても人を留めることが出来ず、そこには人間関係を中心とした「コミュニティ」の存在も必要となります。人口の流出によってその「コミュニティ」が崩壊していく中で、どのような繋がりを作ることで人を留めることが出来るのか、あるいは新たに外からの人を呼び込むことが出来るのか、考えるべきことは尽きません。

秋田県は、日本の社会問題で10年先を行くと言われていますが、この人口減少問題に対しての解決策を見出すことができるかどうかが、同じ問題を抱えうる全国の地域の先例となっていくように思います。

速報:改正FIT法への移行に伴う認定失効件数は最大で2,766万kW - 資源エネルギー庁の暫定試算

資源エネルギー庁が、4月の改正FIT法への移行に伴う設備認定失効の見込み値を取りまとめて公表しました。

最大で45.6万件・2,766万kWが失効する見込みとのことです。

www.meti.go.jp

電力会社管内毎の数値も公表されていますが、最も多いのは九州電力管内の10.2万件・723万kW、次いで東京電力管内の12.5万件・669万kWなどとなっています。

今回の公表値は暫定値のため、今後数値が精査されていくことになるほか、全ての設備認定が接続申込みをしているとは限らないため、系統容量への影響はまだ未知数です。

ただ間違いなく言えるのは、未稼働案件の一掃という政策目標は一定の成果を挙げただろうということです。