ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

全国のソーラーシェアリングの実態調査を実施 - 普及は進むが理解は進まない現状が明らかに

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が制度化されて間もなく6年となりますが、これから普及が加速化していくと考えられる中で普及初期の実態を明らかにするべく、千葉大学倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所への委託調査という形で、ソーラーシェアリングの全国的な実態調査を実施しました。

その結果を、スマートジャパンの連載記事としてレポートしましたので、是非ご覧ください。

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普及初期の事例は玉石混淆

今回の調査に回答を得られた農業委員会での、一時転用許可件数は1,347件となっています。関東・中部・四国地方で事例が多い一方で、それ以外の地方では事例が少なく、1市町村で137件の許可事例があるなど特定地域への集中が見られます。

設備の設計や遮光率などは、回答を寄せた農業委員会担当者の理解度によってばらつきがあり、正確な実態を反映しているとは言いがたいデータとなりましたが、作物についてはある意味予想通りの結果となっています。

作物の生育不足による許可取り消しは見受けられませんでしたが、様々な事由による事業者自身での申請取り下げが複数見られたほか、不許可事例として農業に対する能力の不足が特定市町村に集中するなど、個別の事業者事由での問題が多いことが分かります。

ソーラーシェアリングの認知は進むが理解が進まない

各農業委員会担当者による自由記述回答では、ソーラーシェアリングに対するマイナス評価が相次ぎ、選択式でも「太陽光パネルの下で十分に営農できないと思う」「わざわざ農地の上で太陽光発電をしなくてもいいと思う」という回答が集中しました。

農林水産省も、営農型太陽光発電 取組支援ガイドブックなどで優良事例の公表を進めていますが、特定の農作物への事例集中や設備が営農に適していないなどの事例が地域で目立つことで、全体の80%の農業委員会でソーラーシェアリングを認知しているものの、印象はマイナスという実態が明らかになりました。

地域の農業振興に資する事例の周知を

概ね予想された結果ではありながら、やはり普及当初5年間の実態としてはソーラーシェアリングに対するマイナスイメージが先行している実態が分かったことで、今後の普及拡大に向けた取組の方針も見えてきました。

これまでも、ソーラーシェアリングポータルソーラーシェアリングWebアースジャーナルなどを通じて事例情報の発信に努めてきましたが、実際にソーラーシェアリングに取り組んで地域の農業振興を果たしている事例や、自然エネルギーを農業に取り入れた事例など、より具体的な情報を各地に伝える行動をより深めていこうと思います。