ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

「太陽光発電のFIT制度終了」の報道が駆け巡り大騒ぎに

昨日から、「太陽光発電のFIT制度が終わる?」「いや、FIT制度が全部終わる!?」と思わせるような日本経済新聞やNHKの報道が相次ぎ、私も昨晩から多くの問い合わせをいただいております。

例えば日本経済新聞は下記のような感じです。

www.nikkei.com

当初から予定されていたFIT制度の見直し議論が本格化

我が国のFIT制度は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」という法律で規定されていますが、「特別措置法」というのは期間や目的を限定して特定の事象に対応するための法律です。

FIT制度の場合は、再生可能エネルギー発電を急速に導入するという目的があるわけですが、その期限として附則第二条3に下記の通り記載されています。

政府は、この法律の施行後平成三十三年三月三十一日までの間に、この法律の施行の状況等を勘案し、この法律の抜本的な見直しを行うものとする。

ということで、法律の施行当初から2021年3月31日までに抜本的な見直しを行うこととなっており、すなわち2022年からは見直された後の制度に切り替わることが予定されています。

従って、この制度の見直し議論自体は降って湧いたものではないのです。

制度見直しの主な論点

経済産業省・資源エネルギー庁が再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会に提出した資料には、下記の図のようにFIT制度の課題と称される事項が挙げられています。

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再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 資料より

ざっくりと整理してみると

  • 再生可能エネルギーの発電コストが諸外国より高い!
  • 国民負担を抑制しなければ!
  • 長期安定した発電事業を実現しよう!
  • 立地制約を解消しないと!
  • 「系統制約」が解消(できません)!
  • 適切な調整力が必要になっています!

と、上の図の青く塗られた部分が改正FIT法の施行後の課題として整理されています。

個別の委員会で各論の議論も始まっていますが、昨日から騒動になっている「太陽光発電をFITから外す」というのは、上記の「発電コストが高い」と「国民負担の抑制」の2つを解消したい経済産業省の思惑です。

そして、上記の課題となっている項目はほぼ太陽光発電の急速な普及によるものと(本来は喜ぶべきことのはずですが)ネガティブに評価されているため、これまでよりも毎年の導入量を抑制しつつ、主力電源としての自立と称してFIT制度から外していこうという動きが始まっています。

この部分を抜き出して日本経済新聞やNHKが報じたため、人によっては「現在稼働中の案件のFITまで丸ごとなくなる!」という誤解を生む原因になっています。

ポストFITの検討が始まる

FIT制度から太陽光発電が外された後に何が始まるのか?を考えていくと、一つは自家消費やPPAを軸とした需給一体型のモデルであり、もう一つは大型電源を中心に市場取引される電源になれというところでしょう。市場取引が進む中で、FIPなどの最低限度の補填措置が残る可能性はあります。

このように、需給一体型モデルが普及したり、市場取引されるようになるためには、高度に自由化された電力システムが必要になりますが、そちらの議論はまだまだ追いついていません。

やっと発送電分離が本格的にスタートする中で、市場環境の整備や系統連系リスクの最小化(本来すべきは再エネ電源の優先接続)を経済産業省が本当に進められるかどうかを、引き続き注視していく必要があります。

固定価格買取制度のパブリックコメントが始まっています

ひっそりと、固定価格買取制度のパブリックコメントが6月11日からスタートしました。

今回は、太陽光発電設備の環境影響評価(環境アセスメント)対象案件への5年以内の運転開始期限設定や、2016年度認定で2016年7月31日以前に接続契約を締結した案件への系統連系着工申込みルールの適用などです。

search.e-gov.go.jp