ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

サウジアラビアの石油施設攻撃に見る、日本のエネルギー安全保障の危うさ

サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた事件から1週間が経過し、その実態が徐々に明らかになってきました。無人攻撃機(ドローン)だけでなく巡航ミサイルも含まれていたなど、その攻撃の詳細が判明してきましたが、アメリカからの兵器購入による大規模な防空体制を保有するサウジアラビアが、このような攻撃を受けたという事実は衝撃的です。

www.nikkei.com

既存の防空システムで防げない攻撃

弾道ミサイルを前提にした防空システムは、日本でもパトリオットミサイル(PAC 3)や、イージス艦の装備するイージス弾道ミサイル防衛システム、そして昨今話題のイージス・アショアなどがあります。これらは、宇宙空間を含む高高度から飛来するミサイル迎撃を前提にしています。

一方で、今回使用されたと思われるドローンや巡航ミサイルは、低空を侵入してくるためレーダーにも捉えられにくく迎撃の難易度が高くなります。

無人攻撃機となるドローンは安価になりつつあり、数を揃えての飽和攻撃となればその防衛はさらに難しくなるでしょう。

この辺りの話は、以下の記事によくまとめられています。

jbpress.ismedia.jp

サウジアラビアの生産施設損傷の衝撃

今回の攻撃でサウジアラビアの石油生産量の半分が一時的に失われましたが、日本の原油輸入は40%近くをサウジアラビアに依存しているため、国内の輸入原油量の20%相当を喪失したことになります。

更に、サウジアラビア・アメリカとイランの対立によって中東情勢が更に悪化すれば、それ以外の国々からの原油輸入も滞る可能性があります。

この事件について国内の報道や関心は低調ですが、アメリカはサウジアラビアへの防空部隊派遣を決定しており、対立が深刻化すれば武力衝突も懸念される中で、私たちの生活の生命線を握る石油確保へ重大な影響を与える事態に発展することも考えられます。

現時点では「真犯人」が明確には判明しておらず、ドローンや巡航ミサイルによる攻撃主体の隠蔽が容易であることも、この事態で判明しました。弾道ミサイルであれば、我が国周辺のようにどこから発射されたかを数分~数十分で解析できますが、そうはいかない手段が構築されたことで、攻撃側の心理的ハードルも下がることになりかねません。

国際政治における日本の立ち振る舞いや、中東情勢の不安定化を受けたエネルギー安全保障の再検討など、私たち国民が改めて強い感心を持つべき時期が訪れました。