ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

ソーラーシェアリング:水田ソーラーシェアリングは順調に生育中 - 『あきたこまち』を栽培

5月に完成して『あきたこまち』の田植えを行った、秋田県南秋田郡井川町の水田ソーラーシェアリング「井川初号機」ですが、8月に入って穂も出揃い順調に稲が生育しています。

夏の晴れ間の写真を撮ってきましたが、緑色の絨毯の中に立つ水田ソーラーシェアリングは壮観な眺めでした。

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実際に発電所の下での耕作をお願いしている農家さんにも話を伺ってきましたが、設備のある部分とない部分で『あきたこまち』の生育状況に大きな違いはなく、出穂の時期もほぼ揃っていたということです。(秋田県内における『あきたこまち』の出穂は8月上旬)

今回の設備は、架台設計やモジュールレイアウトについて営農に対する最適化を図っており、今のところはその狙い通りの結果が出ているようです。

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この「秋田県初の水田ソーラーシェアリング」というインパクトは大きく、設備が完成した5月以降は現地視察の依頼が絶えません。

特に農業者の方の関心が強く、東北地方を中心に今年の稲刈りが終わった頃から一気に新しい計画作りが進んで行きそうです。

また、井川初号機の下では9月中旬~下旬頃に稲の収穫を予定しています。

再エネ業界ニュース:三重県が太陽光発電施設の適正導入に係るガイドラインを策定 - 出力50kW以上の全ての設備を対象

少し前の話になりますが、三重県が「太陽光発電施設の適正導入に係るガイドライン」を策定、公表しました。

三重県と言えば景観保全の観点から太陽光発電事業に対する規制を整備したことで知られますが、今回のガイドラインはその点も含めつつ、改正FIT法による国のガイドラインを下地として県独自の規定を定めたものになっています。

www.pref.mie.lg.jp

設置場所に関する規定

ガイドライン中には様々な定めがありますが、一例として「設置するのに適当でない区域」と「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」が示されています。
例えば、自然公園法の特別保護地区~第3種特別地域は「設置するのに適当でない区域」、普通地域は「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」などとされているほか、保安林や農用地区域、甲種・第1種農地は「設置するのに適当でない区域」、第2種や第3種農地は「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」としています。

県及び市町との協議

ガイドラインに該当する発電事業を計画する場合、事業者は県並びに市町に対して所定の事業計画書を作成した上で協議・提出を行うこととしています。

設計、施工、保守運用管理などは国のガイドラインに準拠していますが、関係法令などに準拠した手続きの協議や、地元住民とのコミュニケーションを図ることなどは県及び市町の役割として明記されており、必要な相談・助言・指導を行うこととなる形です。

 

太陽光発電事業において地域との摩擦を回避し、また自然環境・生態系・景観保全等をどのように図るかについては地方自治体単位で試行錯誤が続いているところですが、FIT法の下でこれまで都道府県や市町村は独自の条例を定めながら個別に対応を図ってきています。

今回の三重県の事例はガイドラインという形になり、直ちに事業者の計画を変更させ得るような強制性を持つものではありませんが、野放図と言えるほどに制約なく太陽光発電設備の設置が進んで来た中で今後の新規事業に一定の影響を与える可能性はあるでしょう。

一方で、既に運転を開始している多数の発電所に対してどう向き合っていくかは、改正FIT法で一定の網がかけられたとは言え、各地域共通の課題として残っていくことになりそうです。

ソーラーシェアリング:匝瑳飯塚の農繁期到来 - 発電設備の下で大豆は順調に生育中

3月末に完工した匝瑳メガソーラーシェアリングを始めとして、多くのソーラーシェアリングが立ち並ぶようになった匝瑳市飯塚地区では、夏の農繁期を迎えています。

今年は梅雨時の雨が少ないといった出来事もありましたが、先週末に様子を見に行ったところ、7月頭にかけて播種した大豆は順調に生育していました。

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昨年は鳥獣被害を受けた千葉エコ1号機を含め、ソーラーシェアリング設備下での本格的な営農2年目となる今年は、これまで同様に試行錯誤の日々です。メガソーラーシェアリングの完成でThree little birdsが耕す面積も一気に前年比10倍近くまで増え、その多くがこれまで耕作放棄地だった畑です。

管理面積の増加によって、それに応じた体制の確立や機材を揃えていくことも並行して行いながら、ソーラーシェアリングの下での農業という取り組みをしっかりと継続していくための下地作りが日々進んでいます。

下の写真の様に、スリムタイプモジュールの使用による影の分散によって、夏場の強い日差しがほどよく和らいでいるのが分かります。

 

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7月からは三重大学の梅崎教授との共同研究もスタートする中で、農繁期ということもあってか色々な話題を耳にされた見学者も増えてきており、ソーラーシェアリングに関心のある農家さんから卒業研究に取り上げたいという学生さんまで、幅広い方々に飯塚を訪れていただいています。

現在も新たなソーラーシェアリング設備の設置が進む中で、収穫の秋に向けた次の一手を模索中です。

固定価格買取制度:太陽光発電設備の定期報告システムが稼動 - 全ての太陽光発電設備の報告受付が再開

固定価格買取制度を利用した発電設備には、経済産業省に対する運転開始時並びに定期的な運転状況の報告が義務づけられていますが、昨年末から報告用のシステムが停止していました。

この定期報告システムについて、改正FIT法に対応した新システムの稼働資源エネルギー庁よりアナウンスされています。

https://www.fit-portal.go.jp/

システムの停止により、これまでは運転開始時の設置費用報告や、毎年の運転費用報告が出来ない状態が続いていましたが、これによって定期報告の提出が可能になります。

設備認定においてこの定期報告は義務づけられていますので、手続きを忘れないように注意しましょう。

なお、太陽光発電以外の発電設備については今後別途アナウンスがあるそうです。

ソーラーシェアリング:ソーラーシェアリング設備下での作物生育の研究をスタート - 三重大学梅崎教授との共同研究

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の普及が全国的に進む中で、「太陽光パネルはどの程度作物の生育に影響するのか」を学術的な見地からも検証していくために、今夏から三重大学の梅崎教授(作物学)と共同研究をスタートしました。

匝瑳市飯塚地区の自社設備や、匝瑳メガソーラーシェアリングの設備下を対象として、まずは1年間の実証研究を重ねていきます。

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今年は既に7月上旬に各圃場で大豆の播種を終えており、7月14日に発芽後の生育状況調査を現地で行いました。

昨年は千葉エコの1号機で新芽が鳥獣被害に遭うといった事件もありましたが、今年は下の写真の通り順調な生育が見られています。

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今回の研究ではオプトリーフによる葉の受光量調査を行い、設備のない圃場との対照によって作物が実際に受けた太陽光の量を定量的に評価して、生育状況との対比を図っていきます。

ソーラーシェアリングの許可件数が1,000件を超えてきていると言われる中で、小規模なフィールド実験は行われてきていますが、実際に複数の圃場を用いた今回のような規模の研究は初めてだと思われます。

夏場の大豆の後は、冬場に麦でも同様の研究を行い、更に来年度以降も継続して実施していく予定です。

講演・メディア:新潟にてソーラーシェアリングワークショップを開催 - 熱い議論から実践へ

昨日は、新潟市にておらってにいがた市民エネルギー協議会主催の「ソーラーシェアリングワークショップ」に講師としてお招きいただきました。
参加者が当初予定人数を大幅に超えたということて、急遽会場が変更になるなど開催前から地元のみなさんの関心の高さを感じるほどです。


普段参加しているイベントとは異なり、講師によるミニセミナー→参加者によるワークショップという進行で、ソーラーシェアリングに対する様々な疑問や課題などを挙げていただくというスタイルでした。

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まずは城南信用金庫の吉原顧問の講演に続いて、20分ほどですが私の方から匝瑳や秋田の事例について紹介させていただき、それを踏まえてのグループに分かれたワークショップへと展開していきます。
会場では熱い議論が交わされ、「自分がまず取り組む!」という方も現れて、今回をきっかけに新潟でソーラーシェアリングが本格的に普及していくことを感じされるワークショップとなりました。


次は今週土曜日に、福島へソーラーシェアリングキャラバンとして伺います。

再エネ業界ニュース:千葉商科大学が取り組む『自然エネルギー100%大学』 - 省エネから創エネまで

以前、千葉大学で学生主体の環境マネジメントシステム運営に関わっていた頃、その先進地の一つが千葉商科大学でした。

同大学が今打ち出しているのが、『自然エネルギー100%大学』です。

 

mainichi.jp

2000年代には地球環境問題への意識の高まりから、ISO14001や環境報告書の発行などに企業の関心も集まり、大学でも環境問題に関心を持つ人材の育成や環境配慮の取り組みが盛んに行われてきました。

ただ、エネルギー分野に限ってみれば省エネをいかに推進するかが中心であり、自然エネルギーを積極的に取り入れていくという動きは低調だったように思います。

それが2012年のFIT導入以降、エネルギー事業の一般化や設備導入コストの低下により、私立大学を中心に自然エネルギー発電設備などを取り入れる動きが増えてきました。

自然エネルギー100%に取り組む企業が増える中で、各地域の大規模事業所でもある大学が同様の取り組みを進めることは非常に意義のあることであり、今後同様の取り組みが各地で広がっていくことに期待しています。

再エネ業界ニュース:太陽光関連業者の倒産件数が前年同期比2.2倍に - 帝国データバンク調べ

帝国データバンクが公表している「太陽光関連業者の倒産動向調査」にて、2017年上半期は50件の倒産があり、前年同期の23件と比べて2.2倍の大幅増になったと報告されています。

同調査報告では、通年で100件に達する可能性も示唆されています。

www.tdb.co.jp

2014年から増加傾向にあった太陽光関連業者の倒産ですが、2014年の21件に対して2016年は67件と3倍以上に増えている中で、規模の大きい事業者の倒産も増えてきているとしています。

FITによってバブル的に急拡大した太陽光発電マーケットが落ち着いていく中では、こういった事業者の脱落というのは想定される範囲の出来事です。

ただ、太陽光パネルのメーカーや施工業者が多く含まれる中で、各社が部材供給あるいは施工した発電所を今後どのように維持・管理していくかは社会的な問題にもなり得ますし、事例によっては施工途中で倒産し工事が停滞する事例なども出ていると耳にしています。

事業者の淘汰が進む中で、長期安定稼働が求められる発電事業への影響をどうやって最小化していくかは、業界としての大きな課題になるでしょう。

雑感:人が想像できることは人の手で実現できる - 想像に限界は訪れるか?

IT革命が過ぎ去って、IoT/ICTという言葉を日常的に目にするようになり、ついにシンギュラリティ(技術的特異点人工知能はいつ人類を超越するか?」が語られるようになってきました。

私は生まれてこの方30年あまりの間、テクノロジーの目まぐるしい進歩に埋もれてきましたが、5年区切りくらいでどんどん次のステージへと進歩していく様子を見るにつけ、かつて人類が想像し得た未来技術がほぼ実現し得るところまでたどり着きつつあるのでは?という実感があります。

もちろん、宇宙空間への進出であるとか、地球上の資源制約を取り払うような革新的な物質利用など、まだまだ先の見えないものはあります。世界的なエネルギーや食料の問題について、我々はまだ解決策を見出せていません。

世界中のあらゆる人とコミュニケーションを瞬時に取れるようになり、私たちの生活に関わるあらゆる情報がデータベース化されていき、そこから更に新たな革新が目まぐるしく生じていることで、今は更に「その先」の世界を想像することが難しくなっているように感じます。

ある意味で思考の閉塞感を感じるところではありますが、それを打破するに至った時、人類はまた新たな地平に立つことになるのではと思索しています。

再エネ業界ニュース:日本政策投資銀行とGEが太陽光発電事業ファンドを組成 - 日本最大規模の太陽光投資ファンド

改正FIT法によって太陽光発電マーケットの縮小がいわれる中で、日本政策投資銀行がGEエナジー・ファイナンシャル・サービスと国内最大規模の太陽光投資ファンドを組成したと発表しました。

 目標金額は750億円、最大で900億円に達するということです。

www.dbj.jp

ファンド規模を750億円とした場合、約250MW程度の太陽光発電所を取得することになると想定されますが、国内にはまだ多くの未稼働となっている太陽光発電案件があるほか、リセール市場の活発化も見込まれることからこの規模の設備取得は十分に可能でしょう。

今後、太陽光発電市場が落ち着いていく中で発電事業者の集約が進んでいくことが想定されることから、こういった大規模なファンドによる投資は更に増えてくるものと考えられます。