ちばえこ日和

日本初の博士(公共学)という学位を持つ大学発ベンチャー「千葉エコ・エネルギー株式会社」の代表が、自然エネルギーのことから地域活性化まで様々な話題をお届けします。

再エネ業界ニュース:太陽光・風力・バイオマス発電の出力抑制訓練実施 - 九州電力と四国電力管内で

九州本土で太陽発電設備を含めた再生可能エネルギー発電設備の出力抑制がいつ行われるかが関心事となる中で、電力広域的運営推進機関(OCCTO)による九州と四国での出力抑制訓練が9月15日に実施されます。

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出力抑制とは、電力の供給量が需要量を超過しそうな自体が予想された場合に、発電所の出力を抑制して需給バランスを調整するものです。

特に、太陽光発電設備からの電力供給量が増加する中で、日中帯の電力需給バランスが逼迫する自体が想定されていて、揚水発電所の稼動や火力発電所の出力抑制、地域間連系線等の活用を図っても需給バランスが調整できない場合に、バイオマス発電所太陽光発電所・風力発電所に対して供給停止の指示が出されます。

今回の訓練でも、実際のフローに則った手順の確認などが行われるようです。

日々、「今年の○月には●●で出力抑制が!」といった噂が飛び交うところではありますが、九州の島嶼部では既に太陽光発電設備や風力発電設備の出力抑制が繰り返されている中で、九州本土を始めとして本格的な出力抑制の実施に向けた準備が進んでいるというところだと思われます。

再エネ業界ニュース:9月末に迫るFITみなし認定の手続きの申請期限 - 改正FIT法の詳細を知らない事業者が3割

改正FIT法の施行により、設備認定の手続きが事業計画認定へと大幅に変更になったり、これまで設備認定を受けていた事業者も「みなし認定」として改めて事業計画の提出が必要になったりと、今年はFITを巡る大きな動きが続いています。

しかし、そのFIT法の改正内容は多岐に亘り、制度を利用して発電事業を行っている事業者の全てがその詳細を把握しているわけではありません。

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改正FIT法における事業計画認定では、経済産業省が定める発電設備の設計や保守管理(O&M)など様々な事項に適合していることを、事業者は誓約して申請を行います。

チェックリスト方式になっていることもあり、その詳細を確認せずに提出している事例が多いのではと推測されますが、段階的にその誓約内容に対するチェックも行われてくる可能性は否めません。

これまでは、最盛期80GW以上という太陽光発電の設備認定申請に対して、申請内容が適正であるかどうか、また所謂「未稼働案件」対策に焦点を絞って経済産業省資源エネルギー庁は対応を進めてきましたが、今後は新規申請が落ち着いてくること、今回の改正FIT法によるみなし認定手続きが完了することで、次は稼働中の発電所に対する確認を行ってくることになるでしょう。

特に太陽光発電所を巡るトラブルは増加の一途を辿り、台風などの自然災害による発電所の損壊や、電気的事故、景観・環境問題など様々な問題が報告され、またメディアで報じられています。

FIT初期の発電所に限らず、現在でも施工が不十分な設備が見受けられ、またFIT単価の引き下げによる価格競争が進む中で品質の低下も生じてきている可能性があります。

発電事業者にとって、自らが保有する発電設備を適切に管理し、FIT適応期間そしてその先まで含めた安定的な電力供給を行うという責任を果たしていくことが、より一層重要になってくるはずです。

講演・メディア:上田市で「ソーラーシェアリングサミット in 上田」開催 - 匝瑳の取り組みを報告してきました

去る9月2日に、長野県上田市にて「ソーラーシェアリングサミット in 上田」が開催され、講師として匝瑳メガソーラーシェアリングの取り組みやエコ・マイファームでの事業などについてお話しをしてきました。

今回のサミットでは、ソーラーシェアリングの考案者である長島彬先生のほか、城南信用金庫の吉原顧問、匝瑳メガソーラーシェアリングを運営する匝瑳ソーラーシェアリング合同会社の関係者などがゲストとして招かれました。

下記の信濃毎日新聞の記事で、当日の様子が詳報されています。

www.shinmai.co.jp

会場となったのは、JR上田駅から更に車で20分ほど離れたところにある『塩田の里交流館(とっこ館)』で、研修・イベントスペースを2つ併せてセッティングされた会場には満員に近い80名以上の参加者が全国各地から集まりました。

吉原顧問による基調講演や、長島先生による「近い将来のソーラーシェアリング像」に関する講演など、関係者の興味・関心を惹くお話しが続く中で、私からは匝瑳メガソーラーシェアリングのスキームや現在の耕作状況、そして5月に設立した株式会社エコ・マイファームが行っているソーラーシェアリングの事業化支援について講演しました。

参加者は農業者からEPC、発電事業者、行政関係者、金融機関関係者、研究者、学生など幅広く、質疑でも事業に関する点から技術的なもの、実際に普及させていくにあたっての課題など活発な意見が交わされました。

先週は岐阜・大阪とソーラーシェアリングに絡んだ講演を経ての上田入りでしたが、どこへ行ってもソーラーシェアリングに対する関心の高さが伺えるようになってきていて、本格的な普及期に差し掛かりつつあることが肌で感じられます。

9月に入り水稲の収穫が落ち着いてくる中で、更に全国を巡る機会が増えていきそうです。

ソーラーシェアリング:建設が進む匝瑳3号機を初公開 - 新型アルミ架台のソーラーシェアリング設備

匝瑳市では稲刈りが最盛期を迎える中、ひっそりと千葉エコ・エネルギーとして3機目となるソーラーシェアリングの建設工事が進んでいます。

井川町の水田ソーラーシェアリングに続いて、アイセス社と共同開発したソーラーシェアリング用の単結晶24セルモジュールアルミ架台 with 浮沈防止BASEを採用しています。

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今回の計画地は3,500㎡の畑で、そこに1,200㎡のソーラーシェアリング設備を設置します。DC容量は66.88kWp(110W×604枚)で、遮光率は33%以下となる設計です。

下の写真で見ると、右手奥から左手手前に向けた傾斜地になっているので、今回は何と傾斜地対応設計も採用しています。

畑の栄養分が集まっている表土を一切均したりすることなく設置するため、架台上部構造には一定の傾斜を付け、スクリュー杭の微細な打ち込み深さの調整によって傾斜地対応を実現しています。

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架台は上部のトラス構造で支える形になっているので、従来の単管パイプ式とは違って低いところへの筋交いがなく、非常にスッキリとした見通しになっています。また、東西南北の全方向から農業用機械が進入可能です。

支柱の間隔だけでなく高さも十分に余裕を持たせているため、60~70馬力のトラクタでも作業が可能な空間を確保されていて、圧迫感もない作りにすることが出来ました。

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上の写真が、高台から撮影した発電所の全景です。

今後、水田や畑地におけるソーラーシェアリングのスタンダードとなるモデル作りを目指して、「匝瑳飯塚 Sola Share 3号機」は間もなく完工予定です。

ソーラーシェアリング:ソーラーシェアリングの下の大豆栽培 - 飯塚地区の大豆は更に大きく育っています!

今月の頭に、匝瑳市飯塚地区のソーラーシェアリング設備下での大豆生育状況をポストしましたが、お盆明けに訪れたところ大豆は更なる成長を見せていました。

今年は、昨年のような鳥獣被害(野鳥による新芽の食害)は回避することができ、下の写真の様に発電設備の下一面に大豆が元気に育っています。

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8月頭からの天候不順はあったものの、発電設備のある場所とない場所を対照しても生育状況に差異は見られていません。

下の写真はちょうどその対照ができる場所になりますが、左側が設備の影が落ちる部分で、右側は影がない部分です。

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こちらの農業は地元農業法人であるThree little birds合同会社が担当していますが、昨年に比べて耕作面積が一気に増加し、前年比10倍以上の約45,000㎡ほどを今夏は耕しています。

飯塚地区内では新しいソーラーシェアリング設備の建設も進んでおり、千葉エコとしての3号機となる設備を含めて現在2機が工事中なので、今年の冬から来夏にかけて更に耕作面積が拡大(そして耕作放棄地は解消)していく見込みです。

ソーラーシェアリング:水田ソーラーシェアリングは順調に生育中 - 『あきたこまち』を栽培

5月に完成して『あきたこまち』の田植えを行った、秋田県南秋田郡井川町の水田ソーラーシェアリング「井川初号機」ですが、8月に入って穂も出揃い順調に稲が生育しています。

夏の晴れ間の写真を撮ってきましたが、緑色の絨毯の中に立つ水田ソーラーシェアリングは壮観な眺めでした。

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実際に発電所の下での耕作をお願いしている農家さんにも話を伺ってきましたが、設備のある部分とない部分で『あきたこまち』の生育状況に大きな違いはなく、出穂の時期もほぼ揃っていたということです。(秋田県内における『あきたこまち』の出穂は8月上旬)

今回の設備は、架台設計やモジュールレイアウトについて営農に対する最適化を図っており、今のところはその狙い通りの結果が出ているようです。

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この「秋田県初の水田ソーラーシェアリング」というインパクトは大きく、設備が完成した5月以降は現地視察の依頼が絶えません。

特に農業者の方の関心が強く、東北地方を中心に今年の稲刈りが終わった頃から一気に新しい計画作りが進んで行きそうです。

また、井川初号機の下では9月中旬~下旬頃に稲の収穫を予定しています。

再エネ業界ニュース:三重県が太陽光発電施設の適正導入に係るガイドラインを策定 - 出力50kW以上の全ての設備を対象

少し前の話になりますが、三重県が「太陽光発電施設の適正導入に係るガイドライン」を策定、公表しました。

三重県と言えば景観保全の観点から太陽光発電事業に対する規制を整備したことで知られますが、今回のガイドラインはその点も含めつつ、改正FIT法による国のガイドラインを下地として県独自の規定を定めたものになっています。

www.pref.mie.lg.jp

設置場所に関する規定

ガイドライン中には様々な定めがありますが、一例として「設置するのに適当でない区域」と「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」が示されています。
例えば、自然公園法の特別保護地区~第3種特別地域は「設置するのに適当でない区域」、普通地域は「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」などとされているほか、保安林や農用地区域、甲種・第1種農地は「設置するのに適当でない区域」、第2種や第3種農地は「設置するのに十分な検討や調整が必要な区域」としています。

県及び市町との協議

ガイドラインに該当する発電事業を計画する場合、事業者は県並びに市町に対して所定の事業計画書を作成した上で協議・提出を行うこととしています。

設計、施工、保守運用管理などは国のガイドラインに準拠していますが、関係法令などに準拠した手続きの協議や、地元住民とのコミュニケーションを図ることなどは県及び市町の役割として明記されており、必要な相談・助言・指導を行うこととなる形です。

 

太陽光発電事業において地域との摩擦を回避し、また自然環境・生態系・景観保全等をどのように図るかについては地方自治体単位で試行錯誤が続いているところですが、FIT法の下でこれまで都道府県や市町村は独自の条例を定めながら個別に対応を図ってきています。

今回の三重県の事例はガイドラインという形になり、直ちに事業者の計画を変更させ得るような強制性を持つものではありませんが、野放図と言えるほどに制約なく太陽光発電設備の設置が進んで来た中で今後の新規事業に一定の影響を与える可能性はあるでしょう。

一方で、既に運転を開始している多数の発電所に対してどう向き合っていくかは、改正FIT法で一定の網がかけられたとは言え、各地域共通の課題として残っていくことになりそうです。

ソーラーシェアリング:匝瑳飯塚の農繁期到来 - 発電設備の下で大豆は順調に生育中

3月末に完工した匝瑳メガソーラーシェアリングを始めとして、多くのソーラーシェアリングが立ち並ぶようになった匝瑳市飯塚地区では、夏の農繁期を迎えています。

今年は梅雨時の雨が少ないといった出来事もありましたが、先週末に様子を見に行ったところ、7月頭にかけて播種した大豆は順調に生育していました。

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昨年は鳥獣被害を受けた千葉エコ1号機を含め、ソーラーシェアリング設備下での本格的な営農2年目となる今年は、これまで同様に試行錯誤の日々です。メガソーラーシェアリングの完成でThree little birdsが耕す面積も一気に前年比10倍近くまで増え、その多くがこれまで耕作放棄地だった畑です。

管理面積の増加によって、それに応じた体制の確立や機材を揃えていくことも並行して行いながら、ソーラーシェアリングの下での農業という取り組みをしっかりと継続していくための下地作りが日々進んでいます。

下の写真の様に、スリムタイプモジュールの使用による影の分散によって、夏場の強い日差しがほどよく和らいでいるのが分かります。

 

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7月からは三重大学の梅崎教授との共同研究もスタートする中で、農繁期ということもあってか色々な話題を耳にされた見学者も増えてきており、ソーラーシェアリングに関心のある農家さんから卒業研究に取り上げたいという学生さんまで、幅広い方々に飯塚を訪れていただいています。

現在も新たなソーラーシェアリング設備の設置が進む中で、収穫の秋に向けた次の一手を模索中です。

固定価格買取制度:太陽光発電設備の定期報告システムが稼動 - 全ての太陽光発電設備の報告受付が再開

固定価格買取制度を利用した発電設備には、経済産業省に対する運転開始時並びに定期的な運転状況の報告が義務づけられていますが、昨年末から報告用のシステムが停止していました。

この定期報告システムについて、改正FIT法に対応した新システムの稼働資源エネルギー庁よりアナウンスされています。

https://www.fit-portal.go.jp/

システムの停止により、これまでは運転開始時の設置費用報告や、毎年の運転費用報告が出来ない状態が続いていましたが、これによって定期報告の提出が可能になります。

設備認定においてこの定期報告は義務づけられていますので、手続きを忘れないように注意しましょう。

なお、太陽光発電以外の発電設備については今後別途アナウンスがあるそうです。

ソーラーシェアリング:ソーラーシェアリング設備下での作物生育の研究をスタート - 三重大学梅崎教授との共同研究

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の普及が全国的に進む中で、「太陽光パネルはどの程度作物の生育に影響するのか」を学術的な見地からも検証していくために、今夏から三重大学の梅崎教授(作物学)と共同研究をスタートしました。

匝瑳市飯塚地区の自社設備や、匝瑳メガソーラーシェアリングの設備下を対象として、まずは1年間の実証研究を重ねていきます。

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今年は既に7月上旬に各圃場で大豆の播種を終えており、7月14日に発芽後の生育状況調査を現地で行いました。

昨年は千葉エコの1号機で新芽が鳥獣被害に遭うといった事件もありましたが、今年は下の写真の通り順調な生育が見られています。

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今回の研究ではオプトリーフによる葉の受光量調査を行い、設備のない圃場との対照によって作物が実際に受けた太陽光の量を定量的に評価して、生育状況との対比を図っていきます。

ソーラーシェアリングの許可件数が1,000件を超えてきていると言われる中で、小規模なフィールド実験は行われてきていますが、実際に複数の圃場を用いた今回のような規模の研究は初めてだと思われます。

夏場の大豆の後は、冬場に麦でも同様の研究を行い、更に来年度以降も継続して実施していく予定です。