H.I.S.の再生可能エネルギー事業はどこへ向かうのか? - 輸入パーム油によるバイオマス発電の是非
旅行大手のH.I.S.が宮城県角田市で進める、輸入パーム油を用いたバイオマス発電事業に対して、今年2月に東北大学大学院の長谷川教授を代表とした研究者・NGO・NPO・市民団体らによる事業撤退の申し入れが行われたことは記憶にあるところですが、更に約15万筆の署名が集められH.I.S.へと提出されたと報じられています。
輸入バイオマス資源は再生可能エネルギーか
来年の運転開始を目指して建設が進む「H.I.S.角田バイオマスパーク」は、出力41,100kWのガスタービンコンバインドサイクル発電所で、バイオマス発電とは言いますが要は「燃料に輸入パーム油を使った小型火力発電所」です。
パーム油は大豆油・菜種油と並ぶ主要油脂製品であり、国内で消費される植物油の1/4程度を占めます。日本人の1人あたりの食品としてのパーム油消費量は年間5kgですが、今回のH.I.S.のプラントは年間70,000tを燃焼させるため、1,400万人の年間消費量に相当する量を燃料として燃やすことになります。
食品として利用される油脂を火力発電の燃料とすることの可否とともに、パーム油が採れるアブラヤシの農園拡大によって熱帯林が開発され、気候変動リスクを増大させていることなどが問題視されています。
「国外の熱帯林を開発して生産され、船で遠路輸送されてくるパーム油を用いた発電所の電気は、再生可能エネルギーなのか?」が、改めて問われるべきでしょう。
署名は日本国内よりも世界各国から
148,588筆が寄せられたという事業撤退を求める署名には、日本だけでなく世界65カ国から署名が寄せられたとのこと。
日本における輸入バイオマス資源を用いた発電事業には、世界の厳しい目が向けられている証左とも言えます。
河北新報の記事では、H.I.S.が「環境問題や地球平和を考えて動くのは最終的に共通」と述べたと報じていますが、「最終的に共通」と抽象的に答えるのではなく、上場企業グループとしてパーム油を巡る懸念に対しては丁寧に答えていくことが求められます。